26.とある魔物視点 魔王よりも怖い者がやってきたので逃げ出しました
俺様はステゴザウルス、この最果てのダンジョンにいる魔物だ。
我が最果てのダンジョンのラスボスは古代竜だが、俺様はその前にいるいわばミニボスだった。
最果てのダンジョンは太古からあるダンジョンで、俺が知る限りは未だかつて破られたことはなかったはずだ。
昔は多くの冒険者で賑わっていた。
何でも最奥の間にはどんな病気でも治療することができる薬を、ジャルカとか言う大魔導師が太古に置いていったそうだ。その薬を巡って冒険者達は血眼になってこのダンジョンに潜り込んできた。
だが、このダンジョンには多くの凶暴な魔物がいて、中々俺様の所まで来れる冒険者は少なかった。
それでも、中には数人、俺様の前まで来れた強者もいた。
まあ、俺様の前に出てきた時はボロボロだったが、可哀想に俺様に一撃で倒されて俺様の餌になってしまったが……何でも治す薬を得るために何百人もの冒険者の命が失われたことか。
俺様から見たら笑止だった。
たった一人の命を救うための薬に何百人もの命が失われるなどこれほど愚かなことはないだろう。
だからだろうか?
最近はこのダンジョンに来る冒険者が少なくなっていた。
俺達が暇を持て余しだしたときだ。
そのおどろおどろしい感じを纏った男が現れた。
見た目はボロボロの衣装を纏っていたが、その者は他の冒険者とは違った。
なんとも人知れぬ、おどろおどろしい気配を纏っていた。
俺様が思わず隠れてしまうほどの。
単細胞のオーガが襲いかかっていたが、その男に瞬殺されていた。
男は何もしたようには見えなかったが、襲いかかったオーガが逆に真っ二つに切断されていた。
何をしたのだ、こいつは?
俺は目を見開いた。
これは素直に通した方が良いだろう。
俺様はその恐ろしい男から身を隠して通していた。
最奥の間では古代竜がやってきた男を見て目を見開いていた。
それはそうだろう。今まで最奥の間にまでやってきた冒険者は俺が知る限り初めてだった。
おそらく最奥の主の古代竜は、生まれて初めて人間と対決したのだ。
信じられないことに古代竜は愚かにもその男と力勝負に出た。
古代竜が男に殴りかかっていた。
男は一瞬で消えていた。
転移でもしたのだろうか?
ドシーン!
勢い余った古代竜は地面に激突していた。
古代竜は怒り狂った。
「ギャオーーーー」
雄叫びを上げた。
そして、ぎろりと光る目で男を捜す。
男を見つける。
古代竜が殴る。
男が消える。
ドシーン
「ギャオーーーー!」
その繰り返しだ。
ドシーン!
「ギャオーーーー!」
ドシーン!
「ギャオーーーー!」
古代竜はいい加減に疲れてきたようだ。
隠れて見ている俺も疲れてきた。
その時だ。男が古代竜の頭に指を突き刺したのだ。
一瞬のことだった。
「ギャッ!」
古代竜は倒れた。
俺様はぞっとした。
本当に目を瞬く間だった。
「あっはっはっはっ! 単細胞は楽だな。俺様魔王様に逆らおうなど100年早いわ」
その男は大声で笑い出したのだ。
俺はぞっとした。この男が魔物達の王の魔王だとは知らなかった。
見た感じもオーラも魔物の王というほど強力なものは感じなかった。
魔王ほどの者になると力を隠すのだろうか?
俺様は少し感心した。
その日からだった。古代竜が完全に魔王の支配下になってその魔王に靡くことになったのは。
そして、その日から魔王はこのダンジヨンを支配するようになった。
まあ、俺様の生活には何も変わらなかったが……
最奥の間に古代竜と魔王がいるようになっただけだ。
それで無くても人間はここまで来れないのに、更にハードルが上ったのだ。
俺様は人間の冒険者にも少し同情した。
そう、彼奴が来るまでは……
その日は朝から俺様は不吉な胸騒ぎがしていた。
やたらダンジョン内の魔物が騒がしいのだ。
一体、何があるというのだ?
俺様にはよく判らなかった。
しかし、だ。
その瞬間、俺の背筋を悪寒が走ったのだ。
俺様は魔王なんて比べものにもならない強大な魔力を持つ者がこのダンジョンの中に入ってきたのを知った。
「「「「ギャーーーー!」」」」
ダンジョンの中は阿鼻叫喚の世界に変わった。
幸いなことにこののダンジヨンには裏口があった。
正面からその化け物が入り込んだのだ。
それから逃れるには裏口から逃げるしか無い。
俺達は老いも若いも関係なしに一斉に裏口に殺到した。
焦った俺様に踏み潰された魔物達は片手では収まらないだろう。
俺様達は我先に裏口から地上へと逃げ出した。
この化け物に比べたら魔王なんてとても可愛いものだった。
俺は生まれて初めて恐怖を感じたのだ。
目の前に騎士団が現れたようだが、俺達はお構いなしに、騎士団を弾き飛ばして、雪の中を必死に逃げた。
判っているのはあのままダンジョンに残っていれば死あるのみだという事だけだった。
しかし、地上にもそれと同じくらいの化け物がいた。
俺様は走る先にその巨大な魔力の化け物を感じていた。
このままでは確実にぶつかる。
まさに前門のオオカミ後門の虎と言ったところだ。
しかし、何もそのまま前に突っ走る必要は無いだろう。
俺は慌てて、回れ右して90度迂回したのだ。
そのまま必死に二つの巨大な魔力の塊から逃げた。脇目も振らず。
魔物達の大半がどうなったかは知らない。
しかし、前方の化け物も後方の化け物と比べて決して引けを取らなかった。
そのままその化け物に殺到していたが、どれだけ生き残れただろうか?
俺様は闇雲にそのダンジョンからただひたすら遠くに逃げ出した。
周りは雪だらけの世界だったが、あのダンジョンにいて死を待つよりはましだった。
どれくらい走ったろうか?
さすがの俺様も疲れて立ち止まった。
俺はほっと一息ついた。
あんな化け物がこの世にいるなんて想像だにしていなかった。
明日から食べ物を探すのも大変かもしれないが、あのまま殺されるよりは余程ましだろう。
俺はその日から野良魔物になったのだった。
アリス達を感じて逃げ出した魔物達でした。
でも外にはシャラザールが……とある魔物の大変な一日でした








