27.どこを探しても馬おじちゃんの娘が求める魔物はいませんでした。
「本当にアリスは信じられない!」
スーパーヒカリゴケの群生地を私に破壊しつくされモンモンはとても不機嫌だった。
それは確かに私が悪かったかもしれないけど……
でもいつまで怒っているのよ!
「そんなこと言っても貴方の命を救うためにやったことでしょ!」
私はそう反論すると、
「でも、他にやりようがあるじゃない! 何も全滅させる必要は無いでしょ!」
「一部は残したわよ」
「本当に一部じゃない!」
モンモンは容赦が無かった。
ふんっ、もし今度さらわれても無視するんだから。
少し切れた私は心の中でそう思ったのよ。
口に出して言ったら百倍になって帰ってくるから黙っていたけど……
皆のアイドルのアリスちゃんは本来は偉いはずなのに、我が儘お姫様達の護衛に成り下がっているような気がするんだけど……気のせいだよね……
ブツブツ煩いモンモンを無視して私達はその下の階層に向かった。
その下の階層はイリーナが期待しているモンスターウルフが大挙しているはずだった。
今度こそ燃やし尽くしてやるわ!
私がやる気満々になったときだ。
「アリス、今回の討伐はモンスターウルフの魔石を手に入れることだからね。だから火魔術厳禁よ! 判ったわね、アリス」
イリーナに言われてしまったんだけど……そんな!
今回の冒険の目的はお母様に捧げる何でも治る薬を手に入れる為よ。他の用なんてどうでも良いじゃ無い! 無理矢理ついてきたのは貴方たちでしょう!
私は余程そう言いたかった。
でも、モンモンにしてもイリーナにしても、王族はどいつもこいつも自分勝手なのよ。
お兄様をチラリと見たらお兄様が手を振ってここは抑えろと合図してくれた。
ノルディンと事を起こすのはまずいのかもしれない。
でも、今の筆頭魔導師はお母様だし、馬のおじちゃんも暴風おばちゃんもお母様の下にいるのに!
私が次の筆頭魔導師なら、こいつらも私の下よね!
でも、こいつらは生意気だから気弱な私の言う事なんて聞いてくれないかもしれないし……
まあ、仕方が無い。
私は少し我慢することにしたのよ。
でも、私達が楽しみにしていたモンスターウルフは影も形もいなかった。
「あれっ? 階層を間違えたかしら?」
イリーナが剣を片手に不審がってくれたけれど……
「と言うか、あなた剣なんか抜いて使えるの?」
思わず聞いていた。
赤い死神の娘だから、剣術は習っているんだろうか?
「ふんっ、冒険なんだから気分よ気分」
どうやらその剣は模造剣らしい。
「じゃあどうやって倒すのよ」
「ふん。お兄様がお倒してくれるわ」
「えっ!」
人頼りかよ!
ブラッドも苦笑しているけれど、こんな我が儘なお荷物二人も連れてきている私の身になってほしいわ!
でも気弱なアリスちゃんは大きなため息をついただけだった。
それにしても変だ? この辺りには大挙しているはずなのに!
モンスターウルフどころかもっと下のモンスターもどこを見てもいない。
そうか、どこかに隠れて私達を襲う機会を狙っているんだろうか?
しかし、物陰にも、林にもモンスターウルフはいなかった。
行けども行けども出会わなかったんだけど……
「変ね。アリスが余計な事をするから皆逃げ出したのかしら?」
イリーナが変なことを言ってくれたけど、
「失礼ね。私はまだ何もしていないじゃない!」
「いるだけで罪だとか」
なんかイリーナはとてもむかつくことを言ってくれるんだけど……
存在しているだけで罪ってどういう事よ!
それは貴方でしょう。私は世界で一番可愛いんだから、存在しているだけで皆をなごませる天使なのよ!
後でモンモンにそう言ったら
「ふうん!」
と一言で無視されてしまった。
何よ! 後でシャラおばちゃんに可愛がってもらうんだから!
「アリス。シャラザール様と接触するなら、俺達のいないところでしてくれ」
私の心を何故か読んだお兄様が言い出してくれた。
「本当だぞ。あんな山賊相手に何もシャラザール様を出さなくても、俺達だけでなんとかなったのに! 挙げ句の果てにはあそこで朝まで大訓練で冒険できなくなるところだったじゃないか」
横でブラッドまで文句を言われた。
結局いくら探してもモンスターウルフは出てこなかったので、私達は諦めて広場で休憩していた。
「もうだめ」
モンモンとイリーナは倒れ込んでいたし……
「どうする、この辺りで野営するか?」
ブラッドか聞いてきた。
「そうだな。二人とも限界みたいだし、ここで野営するので良いだろう」
「ええええ! こんなところで野営するの? まだ全然歩いていないのに!」
「まあ、アリス、あの2人をお前が背負って行くのなら別だが、ここは無理するところじゃないだろう」
私がお兄様達に文句を言ったけれど、モンモンとイリーナを見たらそれ以上は言えなかった。
「でも、ここだと二泊三日になってしまうわよ」
本来の予定はあと少し進む予定だったのだ。
「仕方が無いだろう」
「でも、お父様達が追ってこない?」
「何言っているんだよ。アリスがシャラザール様をあの地に呼んだんだろう! 今日は夜通しの訓練に決まっているじゃないか!」
「本当だぞ。あの訓練は本当に大変なんだからな」
お兄様とブラッドの言葉はとても実感がこもっていた。
「何でそんなの知っているの?」
「付き合わされたからに決まっているだろう!」
「そんな、ずるい!」
私は許せなかった。
「ずるいってな、あれは出たものしかわからない苦しみがあるんだぞ」
「死にそうな怪我してもシャラザール様はすぐに治してくれるけど……夜通しやるのがな」
「本当に俺らには耐えられないよ」
二人は顔を青くして言ってくれるけど、絶対に羨ましい!
「おい、アリス、頼むからシャラザール様にやりたいとか言うなよ!」
「本当だ。そうなったら、絶対俺達は付き合わされるからな!」
二人はそう言ってくれたけど、絶対に私もやってもらうんだから!
私は決心したのよ!
お兄様とブラッドは知らぬが仏……








