21.山賊が呼ぶのは親でなくて良いと言いだしたので、シャラおばちゃんを呼び出しました
私達は山賊達に対してどうやって対処するか皆で相談した。
「やっぱり、囚われのお嬢様役はどう見ても美しい私よ!」
イリーナが自信満々に申し出てくれたんだけど……
「ええええ! 私もお嬢様してみたい」
私も一応言ってみたが、
「アリスはどう見ても幼い使用人って感じじゃない」
イリーナが好き勝手に言ってくれた。
ちょっと、私が使用人って何よ!
次期筆頭魔導師様に対して頭が高いのわ!
まあ、でも、私が言い出したら収拾がつかなくなるから私はあっさりとお嬢様の役をイリーナに譲って上げた。私は本当に大人なのよ!
「お前ら、いい加減にしないか!」
山賊の親玉みたいな男が大声で叫んでいた。
「貴様が山賊の親玉か?」
お兄様がイリーナの執事と言った体で山賊の親玉に声をかけた。
「やっと判ったのかい? 素直に言うことを聞けば命は助けてやらないことはないが、逆らうと皆殺しにするぞ!」
「何ですって! やれるならやってみてごらんなさいよ」
いきなりイリーナが言い出したんだけど、ちょっとシナリオと違う事を言わないで!
「イリーナ、怯えてよ」
私はイリーナをつついた。
「えっ、何ですって……」
私がイリーナの口を閉じさせている間に、お兄様が前に出た。
「お嬢様はとても気が立っておられる。その方達の希望は何だ? 金なら多少はあるぞ」
「はああああ! 貴様等の持っているはした金なんかどうでも良いわ。俺達は貴様等の親に用があるんだよ」
山賊の親玉は威張ってそう言ってくれた。
私達の親って、我が家はお母様は見た目は優しいけれど、怒らせたらあの魔王ですら丸焦げにさせた雷撃女王なのよ。お父様は陰険王子って呼ばれているし悪巧みなら誰も負けないそうよ。そんなのに出てこられたら全員あっと言う間に丸焦げにされるか、身ぐるみ剥がされるかどちらかなのに!
もう片方は赤い死神に暴風王女で、どのみち命はなくなるし……モンモン所くらいじゃないの? まだまともなのは……どのみち死ぬしかないのならばここで私があっさり燃やして上げた方がいいと思うんだけど……また馬鹿にされるからやらないけれど……
「何だと、旦那様にか?」
お兄様が渋る。これは予定通りよ。
でも、何か辛気くさいわ……
「ここは夜は冷えて凍るんだ。こんな乗り物の中じゃ凍え死ぬぜ」
「何言っているのよ。この機体は冷暖房完備よ」
また余計な事をイリーナが言い出してくれるんだけど……いい加減にシナリオ通りに話してよ!
私はまたイリーナをつつくことになった。
「ふんっ、例え冷暖房完備でも、食料がなくなろう。俺達の洞窟にはたくさん食料があるんだぞ」
「えっ、本当なの?」
私がいきなり身を乗り出した。
ここに来る人数が三人から五人に増えたから、私の持ってきた非常用の食料が少し乏しかったのよ。
男達の食料が奪えれば言うことは無いわ。
私のイレギュラーな発言にお兄様は頭を押さえたが、
「おじさん。すぐに洞窟に連れて行って! 私、お腹ペコペコなの」
私が山賊の親分に頼むと、
「おい、アリス、勝手な事を」
お兄様が注意してくれたが、
「だって、アリス、お腹減ったし、もう耐えられない!」
私が我が儘お嬢様役になっていたんだけど……もうこうなったら良いわ。
役割こなすの面倒だし……こんな山賊、いざとなれば燃やせば良いんだし……
「そうだろう、お嬢ちゃん。おじさんの洞窟に来たら食べ物をたらふく食わせてやるぜ」
山賊の親分は得意になって話し出した。
「本当に? 嘘じゃなくて? ありがとう、おじさん。おじさんが天使に見えるわ」
そう、食料は命綱なのよ。このダンジョン制覇にどれだけかかるか判らないし……手に入れられる食料は仕入れないと。
結局、私のお腹の減ったの一言でお兄様の作った面倒なシナリオは全て無視して、そのまま山賊の親分に洞窟に連れて行ってもらうことにしたのよ。
私はスカイバードのロックを外して外に出た。
「おじさん、ありがとう」
私は山賊の親父に抱き付いてやった。
男はどれも単純だから扱いやすいのよ。
イリーナとモンモンもあっさりと大きな体の山賊に抱っこしてもらっていた。
それを憮然と見ていたお兄様とブラッドは歩きだ。
でも、早速ブラッドは転けていたし、本当にどうしようもないわ。
余程氷の大国ノルディン帝国の皇太子なんだから氷の上くらい楽々に歩きなさいよと言いたかった。
私はおじさんに色々教えてもらっていた。
山賊のメンバーは40人くらいで、食料は魔物を狩ったり、冒険者からくすねたりして結構豊富だそうだ。
最難関の最果てのダンジョンといえども、第一層はあまり魔物も出てこないらしい。
連れてきてもらったアジトはダンジョンの中とは思えないほど広くて明るかった。
それに机や装備品もちゃんとしていて、山賊のおじさんが出してくれた食事は魔物の肉とは思えないほど美味しかった。
「おじさん、これ美味しい。何の肉なの?」
「お嬢ちゃん、これはホーンラビットの肉だよ」
ウサギ型の魔物の肉って美味しいんだ。
私はまた一つ賢くなった。
そして、食べるだけ食べてお腹が一杯になった時だ。
「さて、お嬢ちゃんそろそろお家の人と話したいんだけど、保護者の方はどこにいるのかな」
山賊のおじさんが猫撫で声で尋ねてきた。
「ええええ! 私の保護者と会いたいの? 出来たら家出してきたから会わせたくないんだけど」
私が渋ると
「そう言わないで頼むよ。お嬢ちゃんが紹介してくれないとこの子達が悲惨な目に逢うことになるんだよ」
おじさんがイリーナ達を指さして言ってくれたんだけど、イリーナは少しくらい痛い目にあった方がいいと思うんだけど、そんなことしたら百倍位後で言われそうだから、仕方がない。
そろそろお遊びも終わりの時間よ。
「おじさん。お父さんとかお母さんは嫌だけど、おばちゃんでも良い?」
私は尋ねていた。
「おい、アリスの言うおばちゃんってガーネット様か? ウィル様でなくて」
後でブラッドが尋ねていたけど、違うわよ。
「そのおばちゃんはお金持ちなのかい?」
「お金持ちかどうかは判らないけれど、皆がおばちゃん見たらペコペコしているよ」
「おい、アリス、流石にまずいだろう」
私のやろうとしていることを察したお兄様が焦りだしたんだけど、いい加減に飽きてきたのよね。全員をふん縛るのも大変だし……
「お前は黙っていな!」
男はお兄様にすごむと、
「お嬢ちゃん。そのおばちゃんはどこにいるんだい?」
「ここに呼んで上げるわ」
「ちょっとアリス、止めろ!」
私の言葉にお兄様達が蒼白になってくれたけれど、おばちゃんは優しいのに!
「出でよ、シャラおばちゃん」
私はシャラおばちゃんにもらったお守りのボタンを押したのよ。
次の瞬間だ。私の前に凄まじいオーラを纏ったシャラおばちゃんが現れた!
ついにシャラおばちゃん史上最強のおばちゃんの来臨です。
たかだか山賊退治風情に呼んで良かったのか?
山賊達の運命やいかに!
次回お楽しみに!








