19.子供達のいなくなったの知った宮廷は大騒ぎになりました
「な、何ですって! 子供部屋に誰もいないってどういう事なの?」
クリスは食事のために着替えて降りてきた食堂でミアからの報告を受けて悲鳴を上げていた。
子供達には仲良くするように話したけれど、全員が一斉にいなくなるなんてどういう事なの?
クリスには理解できなかった。
「も、申し訳ありません、クリス様。私が傍に降りながら姫様達がいなくなるのに気づけませんでした」
ミアが言うには夜の22時に確かにアリス達女性陣3人がいるのを確認したとのことだったが、今確認したところ部屋の中はフランクの部屋も含めて誰もいなかったとのことだった。
こんな事は今まで無かったのに!
いや、待てよ、アリス達は前に一度黙って中庭の窓から抜け出してジャルカの所に遊びに行ったことがあった。
あの時はアリス達に二度と黙って出て行ってはいけませんと注意したはずなのに!
またやるなんて!
それもノルディン帝国の皇子達とジパグ王国の王女を連れ出すなんて、下手したら国際問題だ。
クリスは頭が痛くなった。
「訓練室にいる可能性はないのか?」
動転しているクリスに代わってオーウェンが尋ねると、
「現在、近衛騎士を中心に宮廷内を捜索させておりますが、まだ発見したという報告はありません」
近衞騎士団長兼ボフミエ魔導国騎士団長のジャスティンが報告してくれた。
「誰かが王宮に潜入してさらわれたという事は無いの?」
クリスは一応尋ねてみた。
「宮廷の中に我々に隠れて潜入するのは中々困難だと思います。それに5人もさらわれてミアやビアンカ達が察知できなかったというのも中々考えられません」
はっきりとジャスティンが否定した。
「それはそうだな。まあ、不審人物も含めてアリス達に誰か接触した者がいなかったかも含めて捜査してくれ」
「ジャスティン、お願いするわ」
オーウェンに続いてクリスもジャスティンに頼んでいた。
二人は慌てて出て行くジャスティンを見送った。
「どうしましょう、オウ。アリスがブラッド様達を連れてどこかに行くなんて。何かあったら取り返しがつかなくなるわ」
その時まではクリスはまた、アリスの事だから軽い気持ちで王宮内の別の所に居ると思っていた。あれだけどこかに行く時はミアと護衛のビアンカを連れて行かないといけないと行っていたのに! フランクもフランクよ! 注意しないといけない立場なのに、一緒に行くなんて!
体調の良くないクリスはとても不機嫌になった。
でも、しばらく経ってもアリス達を発見したという報告は入ってこなかった。
流石のクリスも少し心配になってきた。
「クリス、イリーナ達が部屋からいなくなったんだって」
そこにその母親で魔導師団長兼マーマレード王国皇太子のジャンヌが駆け込んできた。
その後ろにはその父親で、この国の外務卿を兼ねているアレクサンドル皇帝も続いていた。
「お姉様、アレク様、申し訳ありません。大切なお子様達をお預かりしたのに」
クリスが謝る。
「いや、クリス様。どちらかというと我が息子達の方が何かしでかした可能性があります」
「そうだぞ、クリス。うちのブラッドはすぐにダンジョンに潜りたがるからな。どこかのダンジョンにでも出かけたのでは無いか?」
アレクとジャンヌは平然としてそう言いだしてくれた。
「でも、我が家のアリスも突拍子のないことをよくやり出しますから、絶対にブラッド様やイリーナ様を巻き込んだのに違いありませんわ」
クリスは怒っていた。
アリスの事だから少し出て行くつもりがまた何かに注意を取られて長引いているに違いない。
何故護衛を連れて行っていないのか理解できなかった。
その前に自分に報告されて行かせてもらえないと判断したんだろうか?
「で、どこに行ったか判っているのか?」
「それがまだ判らなくて」
ジャンヌの言葉にクリスが答えた。
「ミアやビアンカは判らないのか? あの子達が気にしていたところとかあるはずだと思うぞ」
ジャンヌの質問に二人は考えていたが、
「そう言えばアリス様たちは最近大図書館で最果てのダンジョンについてお調べでした」
ミアが報告してくれた。
「最果てのダンジョン?」
ミアの言葉にクリスが尋ねていた。
「最果てのダンジョンって言うのはノルディン帝国の北部にある未だに未踏のダンジョンで最難関と呼ばれているダンジョンだな」
アレクが頭を抱えていた。
「確かそうだと思われます」
ミアの答えに
「あの子達がそんなに所まで向かったというの?」
クリスはさすがに青くなった。
「しかし、最果てのダンジョンはここから数千キロも離れているぞ。そんなところにどうやってあの子達だけで行くんだ?」
オーウェンが信じられないと首を振った。
「でも、オウ、あの子は専用のスカイバードを持っているわ」
クリスが蒼白になって口に出した。そうだ。アリスならやりかねない。
「それは十分に考えられるな。スカイバードがあれば最果てのダンジョンまでいけるぞ」
ジャンヌが言いだしてくれた。
「しかし、ジャンヌ。いくらアリスでも数千キロをアリス一人でスカイバードを飛ばすのは無理なのではないか?」
オーウェンが首を振っていた。
「でも、アリスだからな。アリスの魔力ならいけるかもしれない」
「そんな事がありうるか」
オーウェンは否定的だったが、ジャンヌの言葉にあり得る事だとクリスは頷いていた。
アリスは下手に魔力がある分、5歳児とは思えない行動力をプラスすると絶対にやりかねなかった。
何故最果てのダンジョンなのかよく判らないが……
「まあ、空港の騎士団に確認してみれば良いんじゃ無いか」
ジャンヌはそう言うと部下に確認の指示をするために部屋を出て行った。
「アレク様。最果てのダンジョンは今は暖かくなっていますか?」
「いや、クリス様。最果てのダンジョンは夏でも周りは雪の世界です」
その言葉にクリスは青くなった。
あの子達はそんなことも考えなかったに違いない。
「どうしましょう。あの子達薄着のままで行ったじゃ無いの?」
クリスが言い出すと
「あのう、クリス様。皆様防寒具をお持ちでしたし、それが荷物の中からはなくなっておりました」
ミアの報告を聞いてクリスは思い出していた。
そう言えば全員防寒具持って来ていた。それを見て氷を出して遊ぶのだと思っていたけれど、あれは最果てのダンジョンに行くために持ってきていたのか?
完全に前もって予定してようだ。
「ミア、後はアリスの部屋からは何がなくなっていたの?」
「クリス様。アリス様の非常用ザックがなくなっていました」
「あの非常食と替えの下着や武器がたくさん入っていた大きなザックを持っていったの?」
クリスは頭を抱えたくなった。
アリスは元々フランクとブラッドの三人で最果てのダンジョンに行くつもりだったのだ。そこにイリーナとモンモンが加わるのをクリスが認めてしまった。
今は五人で向かっているはずだ。
でも、アリスはともかく他の四人は大丈夫だろうか?
「これは完全な確信犯ですな」
アレクも呆れていた。
「申し訳ありません。アレク様。この場は私が現地に転移して連れ戻してきます」
クリスはそう言いだしたが、
「クリスね今は無理だろう」
「クリス様。今はお体に触ります」
全員に止められた。
「しかし、アリスが言い出したに決まっています。親の私が責任を取らないと」
「まあまあ、クリス様。ブラッドが言い出したことかもしれませんし、あいつらならそんじょそこらの魔物なら問題ないでしょう。それに最果てのダンジョンには私も興味があります」
アレクは自分が迎えに行くと言い出してくれた。
「しかし、皇帝陛下のお手を煩わせるには」
「最果てのダンジョンは場所も我が帝国内にあります。ここは私にお任せ下さい」
「も、申し訳ありません。アレク様」
「何、最近は戦もなくなって退屈していたところです。子供達を捕まえると同時に、最果てのダンジョンなどあっと言う間に制覇して参りましょう」
アレクは完全に物見遊山気分だった。
その地にとんでもない者が待っているなど考えてもいなかった。
一方のクリスは怒り狂っていた。彼女はアリスに甘過ぎたと大いに反省していた。
絶対に帰ってきたら教育方針をもっと厳しくしようと考えていた。
アリスにとっては中々厳しい現実になる予感しかなかった……
そんな事になっているとも知らないアリスは悠々と寝ていました。
アリスが寝ている間にどうなったか?
次回はアリス視点に戻ります。
お楽しみに。








