15.スカイバードの護衛騎士達を神の名を使って誤魔化しました
お兄様が馭者席に座るとその横にちゃっかりイリーネが座り、後ろの荷台には私と、モンモンとブラッドが座った。
私との間の点が私達の間を分断していた。
ふん、良いわよ、私はボッチで……
私は拗ねていた。
ガタゴトガタゴト
馬車が揺れながら走る。
その度にイリーネとモンモンが動く。
「なんか、この馬車ちょっと乗り心地が悪いですね!」
ガタゴト体ごと揺れる馬車にイリーネが文句を言い出した。
ふん、どのみち皇女様だから、こんな荷馬車なんかに乗ったことが無いんだろう。
「うーん、ごめん、イリーナさん、平民達の乗る馬車はこんなものだよ」
「そうなんですか? 初めて知りました」
お兄様の言葉にイリーネはしおらしく答えているけれど、私一人だったらなんでこんな馬車に乗らないといけないのよと怒鳴り散らしていたと思う。
猫かぶりも良い所よ。
私は呆れていた。
「フランク様はよく知っておられますね、きゃっ!」
話しているときに大きく揺れて、イリーネはお兄様に抱きついていた。
そのまま、離れないのは絶対に確信犯よ。
「大丈夫か?」
ブラッドもモンモンを片手で抱いて、飛んでいくのを防いでいた。
私はボッチだ……
私のことは誰も心配してくれない……
どうせ私はがさつで誰も心配なんてしてくれませんよ!
私はとてもやさぐれていた。
「アリス、本当にスカイバードは飛ばせるんだな」
そんなところにお兄様が聞いてきた。
むかついていたから無視しても良かったけれど、そういう訳にも行かない。
スカイバード、科学技術のマーマレード王国と魔術のボフミエ魔導国が協力して作った鳥形飛行機、基本は5人魔導師が魔力を込めて20人乗りの機体を空に打ちだして、その後はスカイバードに乗った一人の魔導師が魔力操作で何千キロも離れた所まで飛ばすという乗り物だ。
この開発によって大陸内外の交通は格段に便利になった。
もっともまだ金貨20枚以上払わないと乗れないから大金持ちか貴族しか乗れなかったんだけど……
それまでは転移の出来る魔術師しか時間短縮できなかったんだけどこれがあればひとっ飛びだ。
発射地点に大きな射出機を作らなければいけないので大変だけど今は全世界に二十カ所以上この施設が作られていて王族や貴族、大商人達の移動に役立っていた。
今回はそれに乗って一気に最果てのダンジョンまで飛ぶ予定なのよ。
「大丈夫よ。シャラおばちゃんと一緒に10回くらい飛ばしているから」
私は自信を持って頷いた。
普通はステーションに控える魔導師5人が射出機を使ってスカイバードを飛ばすのだが、今回は私一人で飛ばす予定だった。
莫大な魔力のある私だからこそ出来る代物だ。
まあ、お邪魔虫が2人もいるが基本は私の我が儘に皆に付き合ってもらうんだから、当然私が移動の魔力を提供するのは当然だと思っていた。
「えっ、スカイバードで行くんですか?」
イリーナは驚いていたけど、違ったら何で行くつもりなのよ!
ちんたら馬車で旅していたらあっという間にお父様達に追いつかれて連れ戻されるだけじゃない。
「まあ、今回はさっさと早く行って、帰ってこないといけないからね」
当然のようにお兄様が言ってくれた。
今回の肝はお父様達が追いつく前に一気に現場に行って何でも効く薬を手に入れることなのよ。
スピードが肝心だった。
そのためにシャラおばちゃんがくれた誕生日祝いの私専用機を使うことにしたのよ。
私の機体を明日使うから準備しておいてくれるように昨日のうちからステーションには連絡してあるはずだった。
馬車を走らせること2時間。
やっとその射出機が見えてきた。
真っ黒な空に向かって聳え立つそれは、威風堂々としていた。
レールの長さは千メートル、角度は30度で射出される。
ボフミエ魔導国の空港は忙しいときは10分に1回の間隔でスカイバードが飛び出すことになっていた。そのために昼間はここに100名の魔導師達が待機しているのよ。
夜の今は警備の者しかいないけれど、その警備の者をどう誤魔化すかよ。
「アリス、そろそろ出番だ」
お兄様の声に私はイリーナと席を代わった。
「ええええ!」
なんかイリーナは不満そうだけど、ここから本番よ。
ふんっ、ざまあみろよ!
イリーナのお兄様に対する気持ちなんて無視なんだから。
「止まれ、何奴だこんな時間に!」
スカイバードのステーションを守っている騎士が荷馬車を見て誰何してきた。
ここはボフミエ魔導国の中枢部の一つで一個騎士大隊が駐留していた。
夜でも50名ほどが警備に当たっているのよ。
「俺だよ」
お兄様が騎士に顔を見せた。
「俺だよってこんなガキ……ってなんだよ」
文句を言い出した騎士に隣の騎士がつついていた。
「おい、お前、何を言っている。フランク様とアリス様だぞ」
「フランク様とアリス様? って筆頭魔導師様のお子様の」
「失礼しました」
「も、申し訳ありません」
2人は慌てて頭を下げてくれた。
「夜遅くまで大変だね」
お兄様が労った。
「あのお言葉ですが殿下方こそこんな夜更けにどうされたのですか?」
「シャラおばちゃんに呼ばれたのよ」
私が横から言い出した。
「シャラおばちゃん?」
騎士がきょとんして尋ねてきた。
「あなた、シャラおばちゃんを知らないの?」
私が馬鹿にしたように言うと、
「そのような者は知りませんが、アリス様のご親戚ですか?」
「親戚と言えば遠い親戚なのかな」
確かそう聞いていた。
「アリス様の遠いご親戚?」
「シャラ様って、ひょっとしてシャラザール様ですか?」
一人の騎士がぎょっとした顔をして私の顔を見た。
「シャラザール様ってあのシャラザール様か!」
2人が固まってしまったんだけど……
「そうよ。直ちにスカイバードの訓練をしてやろうって言われたのよ。先に私の機で待っているからすぐに来いって言われたの」
「さ、さようでございますか。フランク様方も大変ですね」
騎士の一人が愛想笑いしてくれたが、その顔が引きつっていた。
シャラおばちゃんは良く騎士達相手に夜通しの訓練をつけさせたことがあるそうだから、この騎士達も付き合わされた口なんだろう。
「貴方たちも付き合う?」
私はニコリと笑ってみた。
「と、飛んでもございません」
「我々はここを守るように隊長から言われていますから」
2人は必死で首を振ってくれた。
「じゃあ、遅くなると怒られるから」
「判りました」
騎士達は慌てて私達の馬車を通してくれた。
さすがシャラおばちゃんの威力は絶大だ。
フリーパスだった。
「そうだ。シャラザール様から口止めされているんだった」
お兄様が動かした馬車を止めて騎士の方を見た。
「何でもシャラザール様は母上や父上の前で俺達がスカイバードを飛ばして驚かせたいっておっしゃられているんだ。だから今日の発着訓練は内緒にするようにとのことだったからよろしく頼むよ。隊の者にも徹底してほしい」
「りょ、了解しました」
騎士達はコクコク頷いてくれた。
どれだけむ秘密にしてくれるか判らないけれど、少なくてもこれで明日の朝まではお父様に知られることは無いと思うのよ。
シャラおばちゃんは騎士の皆には恐れられているからね。
私達は急いで自分のスカイバードに向かった。
自分たちの逃亡にシャラザールの名前まで使うアリス達。
まさに神も恐れぬ所業です。
次はスカイバード発射です。
アリス専用に作られたそれに他の者達は耐えられるか?
お楽しみに!








