14.やっと荷馬車までたどり着きました
全員が城壁の上に揃うのに少し時間がかかった。
イリーナが壁をよじ登るのが危なっかしかったので、ロープに引っかけて私とお兄様で引っ張り上げたのよ。
城壁の上でモンモンとイリーナがぐったりとしていた。
ぐったりしたいのはこっちなんだけど……あなたたち何もしていないじゃない!
私は思わず叫びそうになったけれど、ここは我慢よ。
こんな目立つところで叫んではいけない。
お兄様がロープを固定して下に下ろしてくれた。
「あと少しだから、行くわよ」
「えっ、アリスは怖いから嫌だ」
「グズグズ言わない」
私はモンモンを片手に抱えた。
「ちょ、ちょっとアリス、何するのよ」
「口閉じていないと舌噛むわよ」
「キャッ!」
私はそう言うと、モンモン抱えたまま一気にロープ掴んで下に降りたのだ。
最後はスピードを落としてゆっくりと着陸したのに、モンモンは完全に固まっていたんだけど……
私の横にお兄様とイリーナとブラッドが次々に降りてくる。
下るのはイリーナは問題ないみたいだ。
お兄様が使ったロープを振って落として回収しだす。
「じゃあ、行くわよ」
私はモンモンを降ろして、ここからは歩かせようとした。
ブラッドに背負ってもらっていた荷物をもらって背負う。
「えっ、馬車に乗るんじゃないの?」
イリーナが尋ねてくるが、
「こんなところに置いておけるわけないでしょ。馬車あるところまで歩くわよ」
私が言うと、
「ええええ!」
「そんな!」
二人がブーブー言い出した。
イリーナはともかく今まで私の背にいたモンモンは文句を言うなと私は言いたかった。
「まあ、三キロくらいだからすぐだ」
「あなたたちね。ダンジョンの中は十キロ以上歩くのよ! 今からそんなこと言っていてどうするのよ!」
お兄様の言葉に私がかぶせた。
「それはそうだけど」
「不眠不休で疲れた」
どこで覚えたのか難しい熟語をモンモンが宣ってくれるんだけど……疲れたのは不眠不休で慣れないあなたたちをここまで連れてきた私達よ!
私は余程そう叫びたかった。
「仕方がない。俺とブラッドで背負って行くよ」
お兄様が言い出してくれた。
「ちょっとお兄様、あまり甘やかすのは良くないわよ」
私が文句を言ったが、
「でもアリス、このままだと本当に日が昇るぞ」
まあ、確かにお兄様の言う通りなんだけど……
「ありがとうございます。フランク様」
お兄様の背にはあっさりとイリーナがしがみついていた。
「ブラッド様。すみません」
乗り遅れたモンモンはブラッドにしがみついていた。
「まあ、問題ないよ」
モンモンにそう言うブラッドの言葉が私の時に比べて何故か優しいんだけど……
「何だかな」
私は少しむっとした。
「じゃあ、時間ないから飛ばすわよ」
私はむかついたのでそのまま駆け出した。
「おい、アリス!」
「ちょっと待てよ!」
慌ててお兄様とブラッドが駆けてくる。
「キャッ」
「ブラッド様、落ちます」
その二人にイリーナとモンモンがしがみついて、機嫌の悪い私は更に機嫌が悪くなった。
「イリーナ嬢、あまりしがみつかれると走りにくいんだが」
「でも、速くて落ちそうで……」
イリーナめ。私の時と違ってぶりっ子するな!
「モンモンさん、落とさないから大丈夫だよ」
「でも、キャッ」
「大丈夫だから」
しがみつかれてお兄様もブラッドも満更でもなさそうだ。
フンっ、どうせがさつな私は一人ボッチよ!
拗ねた私は更にスピードを上げたのだった。
馬車をいつも借りるゴル爺はこの夜中は当然寝ていた。
まあ、いつものことだ。
ドンドン!
隣の民家まで百メートルくらい離れているゴル爺の家の扉を遠慮なしに叩く。
「誰じゃ、こんな夜中に!」
寝ぼけ眼に不機嫌そうなゴル爺が顔を出した。
「ゴル爺、ごめん。私よ」
「これは姫様。どうされたのですか? こんな夜更けにそのような大荷物を背負われて。家出でもされたんですか?」
ゴル爺に見透かされたようで私はぎょっとしたが、
「違うわよ。ナッツァ湖で朝釣りをしようと思って、お兄様達ももうすぐ来るわ」
私が言い訳すると、
「左様でございますか? まあ、フランク様がいらっしゃるなら問題はございますまい」
ゴル爺は頷いてくれた。
何故か私よりもお兄様の方がゴル爺には圧倒的に信用度があるみたいなんだけど、悪いことをするのはいつもお兄様と一緒なのに……解せない!
まあ、今日は騒ぎ立てられないから良いんだけど。
ゴル爺は今は引退しているけれど元ボフミエ魔導国の騎士で近衛にもいたそうがあるそうなの。
お父様とお母様には世話になったと私達にとても良くしてくれる。だから私達は密かにダンジョンに潜るときとかはゴル爺によく荷馬車を借りたりしているのよ。
少し遅れて、お兄様とブラッドがヒイヒイ言いながら走ってきた。
「ちょっとアリス速すぎ」
「少しは俺達の事も考えろよ」
「ふんっ、何言っているのよ。私の方が重い荷物背負っているんだから、ついてきてよね」
私は2人に言い返した。
「ゴル爺ごめん。こんな夜中に」
「良いですよ。フランク様。荷馬車でナッツァ湖に行かれるとか」
「そうなんだ。ついでにしばらくキャンプするから、荷馬車を少し借りるけど問題ないかな」
「大丈夫ですよ。爺は歩いてどこでも行けますからな」
「有り難う」
お兄様が借り賃だと金貨を五枚ほど渡した。
「こんな沢山頂けません」
「なあに、もと騎士仲間とでも飲んでくれ。お前らが頑張って戦ってくれたから、俺達がここにいるんどから」
お兄様の言葉に
「フランク様にそう言ってもらえるなんて、爺は感激しました」
ゴル爺が泣き出したんだけど……
うーん、これでお母様達に内緒で抜け出したとかゴル爺が知ったらと思うと、私は少し良心が痛んだ。
私達はゴル爺を騙して申し訳ない気持ちもあり、早急にここを後にしたのだった。
ここまで読んで頂いて有り難うございます
次はボフミエ魔道国の誇る最新兵器の登場です
お楽しみに!








