6-4 生き方
「アンナー!」
「どうしたの?」
「街でアンナの評判が最悪だよ!?」
「えー?そんなこと知ってるよ」
「……」
それもそうか。
アンナは前に自分の立ち位置をしっかり把握できることが私の最大の強みって言ってたもんな。
アンナは3年生になるにあたって、実家の商会の資金を借りつつ事業を新しく展開していた。まずは街から。彼女の両親も挑戦には賛成で、失敗したらいつでも戻ってこい、と言っていた。僕はあまりそれに関わっていなかったのだが、ちょっと暇になったので街で盗ちょ情報収集していた僕は、アンナの想像以上の評判の悪さに愕然とした。
別に評判が良いとは思っていなかったが……アンナは僕ですら擁護できないくらいサイkいやなんでもない。
それにしたって悪役……ではないが、オズシリーズにおけるフェミニストみたいな扱いというか……いや、アンナは別にフェミニストみたいに崇高で実現不可能とも言える壮大な目的は持っていないし、男女差別があればそれを全力で利用しに行く貪欲な子だけれども。
『オズシリーズって何?』ファンタジー小説。オズの魔法使いが有名。出版当時のフェミニストの評判は新興宗教のようなものだったらしい。よく知らないけど。……うん。分かりにくい例でごめん。
脱線した。
とにかくアンナは現実を取り扱っていない人気小説でネタにされるくらい、つまり作家のプライドをある程度放棄せざるを得ないくらい、そしてそれが許されるくらい嫌われているということだ。
最悪である。
「アンナ、本当に大丈夫?」
「大丈夫?なんで?」
「アンナが気にしてないならいいけど……」
アンナはいつも通り切手帳から目を離さない。
僕が勧めた趣味とは言え、ここまでハマるとは思っていなかった。
「ねえ、スティーヴ。優れた商人に1番必要なものが何だか分かる?」
アンナが切手帳から目を外さずに言う。
「……信用とか?」
月並みな言葉だ。
「ふふ……印象操作……と言いたいところだけどもちろん違うよ。素早く行動することが商人に1番必要なもの。素早く仕事をする人を雇ってそのまま私が素早く仕事をすれば仕事は回る!商人に必要な信頼なんて言うのはね、速度さえあれば勝ち取れるの」
「さすがアンナ」
バーガーチェーンみたいなこと言いやがる。
というかアンナのやろうとしてることってだいたいそれだなそういえば。
サンドウィッチを安く手軽に、だもんな。
それなら印象が多少悪くてもなんとかなるか。
飲食からスタートって意外と理にかなっているのかもしれない。
「アンナはさ、そんなに稼いでどうするつもりなんだ」
「珍しく踏み込んだことを聞くね。……お金は裏切らないとか、今の時代に名前を残すにはこれが最適とか……それらしいことは言えるけれど。もちろん全て違う。私にとって金稼ぎはもうライフワークみたいなものだもの。これを捨てたらもうそれは私ではない、ただの抜け殻にすぎない。誰に何を言われようと、私が私でなくなった状態で屈辱を味わいながら生きるよりは遥かにマシ」
「難儀な生き方だね」
アンナはこんな言葉、言われ慣れているだろうけど。
「そうだね……でも仕方のないことだよ。もう変わらない、変えられない。それが通用しないと言うなら世界を変えないと。そう教えてくれたのは貴方だったはずだけれど」
「……そうだな」




