6-2 忘れ物
「お前は誰だ」
魔王が言った。
「僕は……名前とかは特にないが、お前を倒しに来た。理由は分かってるよな」
人の国に宣戦布告するような魔王は僕が潰す。
「……。悪魔に記録を残す習慣はないのでね」
「そうかそうか。じゃ、さっさと死ね」
とりあえず、波動砲を打つ。
煙が晴れると、無傷の魔王が立っていた。シールドのようなものを展開している。
ふむ。あのシールドも解析してもいいが、色々試す方が早いか。
もう1度右手を構えなおす。
「お前もしかして転生者か?」
「は?……それがどうかしたのか?」
転生……とは?
聞き覚えがある気がする。どうにか記憶から引っ張り出す。転生と言うのは仏教における輪廻転生を表す言葉だったか。本来は抜け出すべき悪い事象であるからして、僕は輪廻から抜け出せるほど修行を積んでいないんだからそうなってもおかしくはない。……かなり昔にあった宗教の概念だと思うのだが、なぜ今それを。
「私も転生者なんだよ!」
「もう1回言うが、それがどうかしたのか?」
ちっ精霊砲もバリアで塞がれた。
「……お前は今ゲームと違う行動をしているって気づいているか?」
粒子砲はバリアに効くようだ。少しヒビが入った。
……待つんだ。今この魔王はなんと言ったのか。
前を見ると頭が無くなった魔王が。
……有効と見るや僕が連射したからだな。
時間を巻き戻す。
腕もグルグル回るギミック付きだ。
正直いらないと思う。
「な、今頭を……」
「もう1回頭を吹っ飛ばされたくないのであれば、答えるんだ。今君はなんと言った?」
「な、な……」
「この愚者め」
もう1回吹っ飛ばす。
そうしてまた時間を巻き戻す。
「ゲームと違う行動ってなんだい?」
「聞こえてるじゃないか……」
「は?」
もう1回吹っ飛ばした。
「……。お前本当に転生者なんだよね?攻撃に躊躇が無さすぎない?」
「僕は昔からこんな感じだよ」
時間を戻すことができると、躊躇いというものは無くなりがちだ。失敗してもやり直せるという安心感が強い。
それよりゲーム。ゲームだ。カードゲームならば今も存在するが、魔王が口にしたそれは古に存在したコンピューターゲームというやつではなかろうか。
「ゲーム……僕はよく知らないんだけど、君はかなりやりこんでると見ていいのかな?」
命の危機にゲームの差異を気にするくらいだ、相当なガチ勢、というやつなんだろう。それと転生?という言葉になんの関連があるのか分からないが、旧文明のことを知ってそうな悪魔と会うのは初めてだ。もう少し話を聞きたい。
「お前このゲームやったことないの!?もったいない」
「ないね」
なんの話をしているんだ?
「まあいいや。そのゲームのこと教えてよ」
「内容か?」
「うん。ハードとか分かるなら教えて欲しいけど」
「ハード?スマホのゲームだ」
スマホ。聞いたことない単語だ。
「内容は……ミステリーか?いやRPGだな。お前は隠しボス兼サポートキャラだった。たまにカード出る程度だったけどなんか需要あった?とかで」
プレイアブル?よく知らない単語だ。
RPGは聞いたことあるぞ。ロールプレイングゲームだよね。具体的にどういうのかは知らない。
「ラスボスは魔王だな、あと一番最初のゲームでは悪役令嬢の中ボスがいるらしい」
「へえ」
悪役令嬢?結構面白そうな響き。
「……それで、一応全員攻略できるストーリーあるから、悪役隠しキャラトリオって言われたりする。一応戦えたりもするらしい」
「隠しキャラ三体って多いね」
「令嬢は人間だぞ」
三体にひっかかったのか。魔王はとても細かいようだ。
「それで、僕はウチの国に攻め入らないよう警告に来たんだけど」
「それにしては明らかに過剰攻撃すぎませんか?」
魔王が宇宙猫みたいな顔になっている。
「力があるものの特権を知っているかい?交渉に失敗するリスクを恐れず、全てを力押しできるところだ」
「最悪だな……」
それが先代魔王との初めての会話だった。




