5-22 学祭
「文化祭無事行えて良かったねー」
僕も怖くて近づけていないが、アンナからずっと避けられている。あれから僕はアンナと一言も話せていない。
「そうだねー……その格好は?」
「ああ、ウチのクラスコスプレ喫茶だからさ。昨年の衣装借りたんだ」
残ってて良かった。クルッと回ってメイド服のスカートが風にふんわりとたなびくのを見せる。
「似合うでしょ?」
「……この上なく。ちょっと嫉妬しちゃうかも」
昨年同じクラスだったんだけどなー。まあそんなもんか。
「ハルイは劇で王子様役だっけ?」
「王様役だよ。ちょっとしか出番ないっていうから引き受けたらこれだったんだよ!?」
「似合ってるからいいじゃん」
「せめて女王じゃないかなぁ!?」
軍服っぽい服を着たハルイは身長が高いのもあって凄く似合っているししっくり来る。足長いなー。普通にかっこいい。劇の時は多分この上に豪奢なマントとか着るんじゃないかな。
ハルイが王役なのは身分との兼ね合いとかそういうことだろうか。王族ってのは大変だなぁ。
「ハルイ、なかなか男前だねー。ほら周りの女の子達がチラチラハルイのこと見てるよ」
「う、嬉しくない……」
あの人かっこよくない?とか言ってるのが聞こえる。僕もそういうこと言われたいぜ……。
「ハルイを独占するな」
灰色が強い銀髪とポケットに入れたぬいぐるみが特徴的な少年、リールがムッとした顔で僕を見ながらハルイの腕を取って自分の物だと主張してくる。ハルイは今上げ底を履いているので、元々ちょっとリールの方が背は低いのだがさらに差が開いてて、少年が兄を自分の物だ!と主張している感じでなんだか微笑ましい。
「何?リールも生徒会来る?いいよ。猫の手も借りたいくらいなんだ。中等部生でも大丈夫大丈夫」
「……なんで?」
「僕とハルイの関係ってせいぜい生徒会仲間くらいでしかないよ」
「そんなことないよ!?……ないよね?」
「うんうん」
ハルイは僕を友達だと思っているのだろうか。だとしたら嬉しい。
「ハルイー!」
後ろからなかなかのスピードで走ってきたダニエルがハルイを後ろから叩いて、ハルイの前に来る。あまり見ない特別感のある金色の目がキラキラと輝く。ここは普通に友達って感じの距離感。いつも通りとも言う。身長がほぼ一緒になったのでこれはこれで良さがあるようなないような。
「凄く似合ってるな!超イカしてる。……ん?もしかしてお前スティーヴか?」
「そうだよー」
「そうか……昨年も評判だったが生憎見れてなかったんだ。確かにこれは評判通りだ」
「ん」
そういやダニエル昨年の文化祭あたりあんまり姿を見なかったな。多分大きな事件でも追っていたのだろう。
「おれもいるんだが?」
「だな!はは、小さくて気づかなかった」
「〜っ。すぐ抜かしてやる……!」
ダニエルが楽しそうに笑っている。リールも本気で怒ってるわけじゃなさそうだし軽いからかいってところだろうか。ここの関係は悪くなさそう。
「……」
「あの先生。無言で僕見ないでくれます?」
「ええ?み、見てないけど?ああいや、健康とか大丈夫かなーって」
「ハルイが今話しかけにくい雰囲気だから僕に話しかけて足がかりにしようとしてましたね」
「そ、そそんなことないよ?やだなぁ」
背中を叩くと体幹弱々の先生はあっさり姿勢を崩し、ハルイの方に踏み出さざるを得なくなる。あわあわしながらハルイに話しかけている。
このまま待ってたらレイヴンも来そうだな。巻き込まれたくないしそろそろ退散しよう。
「あれステラ。ユノと一緒じゃないんだ」
綺麗な長い髪をたなびかせた女子生徒、ステラが目をかっぴらいてこちらを見ていた。不審者。
「そんな場合じゃないですよ!見てください。この光景を。美男子達……いやハルイさんは女性ですけど、この際細かいことはいいです、彼らが仲睦まじく交流する姿を!」
「あっはい」
「ユノみたいにくだらないとか言わないでくださいよ」
「言わないよ……」
マリスに後でチクッとこう。
ユノはついてけないってことで別行動してるのか。ちょっとまずいか……?このままユノがクリストファーと合流して仲直りしたらバッドエンドほぼ確なわけで。
「よおスティーヴ。生徒会の仕事はいいのか?」
「リエル。……今軽く見回りしてるとこだったんだけど、ほら」
攻略対象達に囲まれているハルイを指さす。
リエルの格好はあえて無視させてもらう。
「最近のお前ハルイにベタベタだよな」
「……そんなに?」
なんか遅れて来たレイヴンがハルイのところで騒いでるけど今はそれどころではないのでリエルから視線を外さない。
「ああ。さすがに噂になってるぞ。アンナちゃんと別れてハルイを狙ってるってさ」
「ええ……」
僕はしょぼくれながらリエルと何人かと一緒に文化祭を回った。




