5-21 vs
「ここがレイヴンの家だね」
大きな屋敷だが壁にヒビが入っていたりして、古い建物であることが分かる。
レイヴンの家と言ってもここにレイヴンがいるわけではない。あくまで実家だ。レイヴン自体は寮住まいだったはず。
「なんで俺まで……」
「悪いねピジョップ。僕達だけで入ったら侵入者だからさ」
ハルイにどうやってレイヴンの家行くのか聞いたら全くの無計画だったので、伝手を利用させてもらった。
「文化祭の準備で忙しいってのに」
「そう言うと思って僕はピジョップの仕事もやっといたでしょ?」
「……ですね」
なんだかんだこうして協力してくれるあたり僕はそこまで嫌われてないのかもしれない。
「ここが俺の家です」
ピジョップが自ら扉を開けた。
……中はより酷いな。
「執事やメイドなんかを雇う余裕すらありませんから。平民の家政婦ならそこまでお金もかからないだろうに父は見栄を張ってそれすらしない。はあ……」
「まあ情報抜かれたりしないようにとか色々あるんじゃないかな。大変だねぇ」
「そういうとこですよ」
「どういうとこだよ」
ピジョップがやれやれと首を横に振った。
「副会長が家の事だいたいやってくれてたってレイヴン言ってたよ。さすが」
「……いえ」
ハルイの言葉に少し照れて顔を背けた。なるほどそういうことね。
「ハルイは何したいの?僕はどこまでもついて行くよ!」
「私は選択を間違えたのかもしれない……」
しょぼしょぼ顔のハルイを連れて当主のいる部屋に向かった。
「たのもー!」
勢いよく扉を開ける。
「ちょっ……」
「スティーヴ・ヘイズ。……なんの用でしょうか?」
その辺でよく見る色の茶髪を整えた壮年の紳士、という見た目の男が僕を見て嫌そうに眉を顰めた。
「まあまあそう邪険にするなって。僕と君の仲だろ?」
「……はあ」
ため息を吐いた表情はピジョップによく似ていた。親子だなぁ。
「仲なんて存在しませんけど」
「えー?」
ピジョップに目を向ける。
当主さまが僕を睨む。
「脅すつもりですか?」
「ふふっ。もちろんいいえ。僕はハルイの護衛だし、ね」
「な、何この空気」
「スティーヴさんに頼るからですよ。とりあえず要件言ってみたらいいんじゃないですか?」
「う、うん」
ピジョップが目を半分伏せながら呆れたように言う。ハルイがそれを踏まえ覚悟を決めたように口を開く。
「レイヴンの様子が最近おかしくって。その、なにか知ってますか?」
「私がですか?なぜ?しばらく顔すら合わせていないというのに」
「……エリスって悪魔だったんですか?」
「……っ」
分かりやすくとぼけるのは無視してハルイが直球で聞く。効果は高い。クロウラー男爵に100ダメージ!
「……こうなったら!ピジョップ、離れるんだ」
「はぁ!?」
男爵が指を天井に向けてから下に向ける動作をすると、天井から衝撃とともに棺が降ってきた。
僕は急いでハルイとピジョップを脇に抱えて退避した。まずい、室内だからエネルギー補給が『こういう時のためにバッテリー手に入れて来たんだよな』そういうことは早く言え!
落ちて来た棺は足が下になるよう縦の状態で止まった。誰も触っていないにもかかわらず棺がゆっくりと開いていく。だんだんと中身が見えてくる。
「……おいおい。自分の目で確かめてみろって?」
肩口までの白い髪、まるで死体のように青白い肌、どうして人間なのだと思っていたのだろう、そのくらい人外めいた容姿だ。閉じていた目が見開かれていく。
「ははは!いくらお前と言えども彼女には敵うまい!!」
「あーあ。もしかして僕のせいでヤケになった?ごめんね」
なんでも知ってるフリってのもたまには役に立つもんだな。全然僕達真相にたどり着いてるわけでもなかったし、いくらでもごまかせたのに。
「どうするんだこれ!?」
「まあ見てなって。僕、火力だけなら多分世界一だから」
僕は手のひらをエリスに向けた。充填。
「精神への攻撃。対象:裏切りの女神エリス。s-32」
光の束がエリスに向かって伸びる。当然その速さに追いつけるわけもなく……エリスの上半身は消し飛んだ。
どうやら先代魔王の残した情報はエリスを消し去るのに十分なものだったようだ。




