5-16 人形
「シエルの同級生でしょう?あの子から聞いてるわ。2人怖い子がテストで自分と1位を争ってるって」
「えっ」
ミスパーフェクトことシエルから僕ってそんな認識なの?
……エリックはそりゃ怖いだろうが僕も怖いの?
思わぬ言葉にすっかりしなしなの僕は僕に話を任せて引っ込んでしまった。
「片方は気性が荒くて話すとすぐ怒るしもう片方はニコニコしてるけど良くない噂が多くて怖いってシエルが言ってたの。あなたは後者の方ね」
「あ、もしかして警戒されてます?大丈夫ですよ。僕が2位以下なのは僕の問題なので。シエルをどうこうとか考えてないです」
「噂を否定はしないのね……」
「僕は聞いたことありませんね」
良くない噂って何?僕がしたことなんてハルイの敵に牽制しに行ったくらいのもんだけど。
「お兄ちゃん、どうかしたの?」
薄い水色の髪を肩口で切り揃えた少女が、僕たちの会話の声を聞いてか階段を下ってこちらを見る。
「お兄ちゃんって呼ばないでって言ったよね」
「?お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょ?そんなに気になるならひらがな呼びにしようか?」
「全くこの子は」
どんな関係なんだろと思ったら兄弟なんだ。あんまり似てないな。
背の高いお兄さん?の方は体格がいいのに対し、シエルは身長こそ高めなものの、腕は細い。食べているのか不安になるほどだ。
「スティーヴ。何か用?」
「いや、宝石店でアクセサリーを買いに来ただけだよ」
「ふうんそう。世界は狭いようだ」
表情が一切変わらない。立ち止まってから少しも動かないし、確かに先生の言う通り機械みたいな子だな。
「シエルはこの家から学校に通ってるんだね。ちょっと遠いのに大変だ」
「……」
「いえ。違うの。この子の実家は他にあって今はその、預かってるだけよ」
複雑なご家庭?
「お兄ちゃんの言ってることは正しい。私はそこそこ大きい家の子どもだ。学費だって払ってもらえるくらいには」
ふむ。特待生になる必要はないって話だろうか。利用できるものはしとくといいんじゃないかな。人数制限があるもんでもないし。
「まあいいや。せっかくだし毎回満点取る秘訣教えてよ」
「?勉強すればいいだけでは?」
「……」
参考にならねえ!
「家には直帰。帰ったら勉強。これだけでしょ」
「とりあえずネックレス買うよ僕は……」
いつも満点取ってるシエルには、僕みたいなちょんぼ多いやつの気持ちは分からないんだろうな……。
時間に余裕があるってほどでもないしさっさと用事をすませてしまおう。
「とりあえずここに来たのは何かの結果だと思うから、私も力を貸してあげる」
シエルが無表情のままパンパンと手を叩くと、上の階から誰かが降りてきた。
まず思ったのは背が高いということだった。透き通るような亜麻色の髪に、無機質な灰色の瞳。どこを見ているのか分からない。
「これは私が回収してきたホムンクルスをさらに最適化して改造したものだ」
「……えーと?」
「廃棄場にあった物を弄ったって合法でしょ?」
「そ、そうかなぁ?」
ホムンクルス……人造人間だっけ?この世界そんなのもいるのか。
「まあいいや……戦力は多ければ多いほどいいし。よろしくね?」
ホムンクルスが瞬きをしないままゆっくりと頷いた。




