5-12 妨害
体育祭だ。僕はテントの中で涼んでいた。
点数表を集計するだけの簡単なお仕事。
「スティーヴ」
クリストファー。
「クリストファーじゃないですか。お久しぶりです」
「相変わらず呼び捨てなんだな。久しぶり」
薄い灰色の目が笑うように細められる。
そういや前のループでも話しかけてきたっけ。そん時は適当にしゃべって解散したけど。
「まさかお前が生徒会に入るなんてな」
「それ色んな人に言われます。そんなに意外ですか?」
「意外意外。学校の行事とか一切興味ないだろ?スティーヴは」
「まあ……そうですけど」
「そこは嘘でも否定するとこだろーが」
クリストファーも成長したなぁ。昔は一方的に哲学のよく分からん話をしてくるだけだったってのに。
「そう言えばスティーヴ。そろそろ分かったか?」
「?」
「性によって人間が形作られていくという話だ!」
「あー……なんか女は男性器を切りとられただけの男とか言ってたやつすか?」
「そう!」
確かに前なんか言ってたな。前世教職の講義でやったフロイトっぽいなとか思ったような。んで僕はピンと来ないでーすとか言ったんだっけ。
前言撤回。あんまし変わってない。
「馬鹿馬鹿しい話ではあるが一考の余地はあると思わないか?」
「そう、っすね」
嫌いじゃない。嫌いじゃないがそんな単純な話でもないだろうとも思う。思うがここで話すのもなぁ!
「俺はこの学園を卒業したら大学に行こうと思ってるんだ」
「いいじゃないですか」
「そう言ってくれるか?」
「はい。まだまだこの手の学問は発展途中ですよ。食っていける可能性もゼロじゃない。クリストファーは実家も太いですしね」
「はは。俺の家は爵位こそあるが普通の家庭だよ。大学には今もやってる記者をしながら通うつもりだ」
「へー!いいじゃないですか」
社会学寄りの哲学と記者はいかにも相性が良さそうだ。
「クリストファー!こんな所でサボって……ってスティーヴ・ヘイズ!?」
「よろです」
来た。
一学年上の学力ツートップの片割れことユノ。
ちなみにクリストファーとユノは幼なじみらしい。
「僕ってもしかして有名人だったりします?」
「……。まあ」
なんかぼかされてんな。
まあな……たまに怖がられてんなって思うこと結構あったし良くない方で有名なんだろう。色々強引な手段を使ったのが良くなかったか。
この2人仲直りさせるより仲違いさせる方が難しそうな距離感なんだよな。どうしよっかな。
「クリストファーは今僕が借りてるんで他当たってください。競技はもう終わったでしょう」
「……っ。クラスの応援とか色々あるの!」
とりあえず引き離すかと思ってクリストファーの服の裾を持ちながら言ったら思ったよりユノが動揺している。クリストファーは服引っ張ったくらいじゃ怒らないと知ってるので多分大丈夫。
「同じクラスじゃないだろ、俺たち」
「そうだけど!そうだけどさ……」
なんか誤解してない?
「そういう子が好みだったんだ!」
とか言って走っていなくなってしまった。
「なにあれ」
「さあ……?」
僕今体操服だから女子生徒に見えたってことかもしれないな。ちょっと悪い事をした気がする。『……あの女僕のこと知ってる様子じゃなかったか?』確かに名前呼ばれたわ。
「集計手伝おうか?」
「……よろしくお願いします」
クリストファーが首を捻りながら手伝いの申し出。頷くしかないか。
ユノのフォローどうしよっかな……。




