6-11 タップダンス
「終わらないんですけどー!」
「ごめんね!」
先生への襲撃はまあ多かった。親戚いすぎだろ先生。そう言うと。
「いやーなんか先代当主が女好きだったらしくてさ。結婚はしてなかったはずなんだけど婚外子がいるわいるわで。強いやつが当主だしたくなるのも分かるっていうか。遺産相続もまあ揉めたみたい」
と珍しく真面目な顔でそう言った。
「傍迷惑な人だな……」
「ってのは今適当についた嘘だよ」
「はあ!?」
「理由はボクも知らなーい。興味もないや」
「おま、お前」
「あはははは!スティーヴの愕然とした顔初めて見たかもだ」
先生が色つきメガネを持ち上げて涙を拭いながらゲラゲラ笑っている。
「ボクからしてみりゃ居心地悪い家でしかないしね。さっさと潰れれば?って感じ。ははは!」
「ちなみにこの件にハルイが巻き込まれたら?」
「え……?」
うっわ一瞬で目のハイライト消えた。
「ってのは仮定の話ですよ。一族間の争いに王族巻き込むとか本末転倒でしょ」
こういうのは落ち着いて対処一択。
「そう、だね。そうだよね。そうだよ。ハルイがボクなんかのせいでどうにかなるわけがない」
「……」
やばいか?これ。
王城で働いてたこともあるらしい先生だが自己肯定感は死ぬほど低い。文字通り致命傷になり得るほど。多分そこ重点的に攻められたらあっさり殺されると思う。おそらくティーンエイジャーの頃に王城勤めで何かあったんだとは思うのだけど実際のところは不明。
「でも世の中嫌なことばっかりだ。スティーヴの予想だって当たってるかも。やっぱり大切なものは誰の手にも届かない場所に隠さなきゃ……」
「ハルイはそんな守られるタマじゃないですって。多分先生より強いし」
「……。でもハルイは人を殺せないよ」
「あ、はい」
先生は人殺せるんすね……。
なんとなく闇の一端を見た気がした。
このままだとバッドエンド直行のような気がしたのでどうにか修正したいところだ。僕の失言が理由みたいなもんだし。
「監禁は犯罪ですよ」
「そうだね?」
効いてない!?
「なんで犯罪か分かります?」
「分かってるよ。でもその方がいい時もある。ボクが作った料理を食べて、ボクが用意した運動プログラムを行ってボクが管理した睡眠を」
「先生料理できるんですね」
「できるよそりゃ。良い暮らしは良い食事からだ」
こういうとこは良いんだけどなぁ……。
「ハルイは先生が思ってるよりずっと賢くて強いですからお世話とか必要ないと思いますけどね僕は」
「スティーヴはスティーヴでハルイのこと評価しすぎな気もするけど……」
「……」
心当たりがありすぎるので反論はしない。
「やるならハルイにきちんと許可取ってくださいよ」
監禁したいって言葉に頷く精神状態ならどのみちバッドエンドルートだろう。
「スティーヴって結構ドライだよね。リエルと仲良くできてるところもそうだけど。彼と長く接してる人間ってだいたい嫌悪感をあらわにするか信仰心を持つか、もしくは好意を持つかじゃない?」
「悪魔ですからねぇ。そういう生態なんでしょうね。僕に関してはドライというか」
どうでもいいというか。
これも僕の生態ということなのだろうか。
とにかく先生は元みたいな軽い雰囲気に戻ったので、すぐに監禁、なんてことにはならなそうだった。良かった。




