6-9 探偵
僕は少しでも情報分かればいいなってことでフリッツ探偵事務所に出入りしていた。
「フリッツはなんというかこうぼんやりしてるのが良くないと思うんだよ。もうちょいキリッとした表情しよう」
「よく分かってますね!」
「……」
リッツは相変わらず辛辣だな……。
とかなんとか言ってたらダニエルが来た。
「あれスティーヴ。なんでここに」
「僕ここのお得意さんだからね。ダニエルはどうしてここに?」
「オレ?オレは探偵としてのステップアップのためにフリッツ先生んとこで勉強しようかなって。もちろんアポは取ってる」
「……そうだっけ」
「そうでしたよ」
スケジュール表を見たリッツが呆れたように言った。ちなみにフリッツという名前は偽名でリッツから適当につけたらしい。そんな安い床屋で切ったような黒っぽい茶髪のぼんやりした男は思い出すためか読んでいた本を顔の上に乗せ、うーんと唸った。
「なんで俺に?こう言っちゃなんだけど俺って全然有名じゃないしパッとしないし適当だし」
自己肯定感ひっく。
「新聞の記事見たんだよ。先生は事務所に座ってるだけで事件を同時に12個も解決させた名探偵だってな」
「……そんな記事あったっけ」
「ありましたよ。ほらよく訪ねてくる新聞社の」
「ヘンリー社、12/4」
「ああ、リッツの写真しか載ってなかったやつか」
一応僕も毎日新聞は見てるのでこうして答えることもできる。
「って言ってもなぁ、たまたまかぶったから混乱していただけで、一つ一つは大したことないし。警察は優秀だよ」
フリッツは椅子を回しながらそう言った。顔の上の本が落ちる気配はない。
「オレ安楽椅子探偵に憧れてるんだ。フィールドワークも好きだけど、動かず解決!これもやっぱかっこいい」
「安楽椅子?……よく分からんが、とりあえず業務でも見るか?探偵志望ってことだよな?」
「依頼はもうある」
ダニエルが依頼が書かれているのだろうファイルをカバンから取り出して見せる。
「これは失礼した。同業者か。……んん?あれー?忙しい学生なのに依頼が舞い込んでくるってことは俺よりすごいんじゃ」
「そうですね。先生は依頼をゲットまでが一番大変ですからね」
「この大探偵時代についてけねぇよ」
大探偵時代って何?まあ確かに探偵多くね?とは僕も思うけどその話?
本ごとバンッと机に突っ伏した。
ですぐに顔を上げる。
「じゃあ俺になんの用なんだ!?」
「いや、先生に人気の秘訣とか聞きに来るわけないじゃないですか。こんな黙ってくるだけで女寄ってきそうな人に」
「いや……これも知り合いから受け取ったものだ。知り合いってのも男だぞ」
「男も寄ってくるんですねえ」
「……」
ダニエルは微妙な顔をした。というか嫌そう。そりゃそうか。僕はこの口の悪さに慣れてきたが、初めて聞くとぎょっとする。
「オレが持ってきた依頼は、冤罪事件に関するものだ。……まだ冤罪と確定したわけではないがオレはほぼ確実だと見ている。その依頼に協力してほしい、と言うのがオレからの依頼だったんだが……」
「ああ、ああ!思い出した。思い出したぞ。そうだったな。冤罪事件。冤罪。テンション上がる。いや、もちろん解くのがだよ?」
「そうか。これがその内容だ。簡潔に説明すると……ってスティーヴもいるのか」
「僕内容知ってるよ。ついこの前モゴ街であった殺人事件の犯人として近くに住んでいた暴力事件を昔起こしたことのある男が捕まったって話だよね?」
「……その通りだ。なんで知ってるんだ」
「なんでだろーねー」
ダニエルが目を見開いて僕を見る。度重なるループの結果だよ。
……やっぱ金色の目って迫力あるな。肉食獣みたいな印象がある。
「よくある話だな。状況は」
「ファイルに纏めた」
僕は捜査資料を見るわけにもいかないので、ソファで寝た。
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「結局んとこ証拠がいるし、そんで民衆からの支持もいる。友人の娘ってのはなかなか受け入れられないもんだよ」
起きたらなんか解決していた。まあ置き去りにされてた服のサイズとか、アリバイとか色々突っ込み所あったしなぁ。
「こういう時に人気がほしくなってくるなー。やっぱ人気ってのは力だし発言力だ。誇りに思いたまえ。というかあと頼むわ」
「あ、ああ」
なんかダニエルがちょっと萎縮してる?まあフリッツ探偵は名探偵と呼ぶにふさわしい謎解き力だしな……なぜか人気あんまないだけで。
未来に幸あれ?みたいな。
僕はそんなことを思いながらリッツにお世話されつつ紅茶を飲んだ。




