森の守り神7
俺はそれに微笑んで返すと、エルロンドはレイラとコトネを連れて行った。
アリサと俺は屋敷の中庭に出ると、夕日が街を赤く照らしていた。
「うわぁ~きれい」
夕焼けの照らし出す街の景色を見たアリサは思わず声を漏らす。
その顔には久しぶりに彼女本来の笑顔が見られるようになった。
それを見た俺は内心でホッとするとアリサに聞いた。
「最近、元気がないように見えるけど何かあったのか?」
「別に……ただ、お父さんが心配なだけ……リオンのお父さんもなかなか帰って来れないみたいだし……」
「ああ、僕はいつもの事だからどうともないけど、妹が寂しがってる……」
「そう……リエラちゃんが……やっぱり、心配よね……」
寂しそうな瞳で夕焼けの空を見上げるアリサに、俺はかける言葉を見つけられずにただ俯いていた。
しばらくの間、地平線に沈む夕日を眺めながら沈黙が続いた後、俺は意を決してアリサに言った。
「なぁ、アリサ。もしよかったら僕と一緒に敵国に潜入してみないか?」
アリサは突然の提案に驚いた様子で首を傾げると聞き返してきた。
俺はそんなアリサに小さく頷くと続ける。
「ああ、今回攻めて来たアストレア王国は魔法を持たない戦士の国だ。魔法を使う僕達を自然の摂理に逆らう魔物と呼んで蔑んでいる。また、すぐに仕掛けて来るに違いない」
「ええ、分かってる。きっとまた争いになると思う……」
俺の話を聞いたアリサは悲しそうな目をしてうつむく。
そのルビーのような瞳には涙が滲んでいて宝石のように輝いていた。
俺はそんなアリサの手を優しく握ると続ける。
「だから、今回は僕達が潜入して色々な情報を掴もうと思っている。もちろん、君の協力が必要だ。アリサはどう思う?」
「……でも、お父様達にバレたらどうするの? きっとお仕置きされるだけではすまないわ……」
アリサは迷いのある瞳で俺の目を見つめてくる。
「ああ、そうだね……でも、このまま子供だからって何もしなければ、また多くの兵士や国民が死ぬかもしれない。僕は僕達にしか出来ない事をしたいんだ。アリサも協力してくれないか?」
「……分かった」
覚悟を決めたのか、アリサは決意に満ちた瞳で俺を見つめると深く頷いた。
その夜、俺は屋敷を抜け出してアリサの部屋に向かう。
アリサは既に準備万端で待ち構えていた。そして、俺が部屋に入ってくるなりすぐに抱きついてくる。
「……リオン」
女の子の柔らかな身体の感触と花のような甘い良い匂いにドキドキしてしまう。
「さっそく、出発しよう!」
「ええ、屋敷の人間に見られないようにしましょう」
俺とアリサは互いに頷くと、風のように走る俺と、風魔法で自身を加速させて高速で移動するアリサ。
俺達が街を抜け出すのは案外簡単だった。
国を出て広い草原まで来ると、俺とアリサは互いにホッと胸を撫で下ろして顔を見合わせて微笑む。
「ふふふっ、誰にもばれなかったね! リオン」
「ああ、さすがアリサ。魔法が上手くなってるな! 門番の前を高速で走り抜けた時はバレるんじゃないかとドキドキしたが、全く気づかれなかった」
「うふふっ、当然でしょ! あたしは風魔法を舐めないで!」
俺とアリサは再び互いの顔をみて笑い合う。
その後、アリサは俺に向かって手を差し出した。
「手を出してリオン! あたしが風で運んであげる!」
「ああ、頼む!」
アリサは俺の伸ばした手をぎゅっと
握る。
「もっと、近くに来て……体を私にくっつけて……」
アリサは俺の腕に自分の腕を絡ませて体を密着させるとぴったりと寄り添ってきた。
すると、俺の腕に柔らかな膨らみかけのアリサの胸の感触が伝わりアリサの全身からいい匂いが漂ってきてドキドキしてしまう。
アリサは恥ずかしいのか顔を赤くして微かにうつむいた。
そして、小さな声で俺の顔を見て言った。
「……リオン。早く行きましょう」
「ああ、お願いするよ」
「風よ。我が体を運べ! 精霊の加護を我が体に纏い、我が身を風と共に包み込み天空へと誘え……ウィンド・ミストラル!!」
アリサが詠唱すると、俺とアリサの体が浮き上がり夜空へと浮かび上がった。
星が散りばめられた夜空を体を密着させながら俺とアリサはふわふわと浮いている。
星空の輝きはとても美しく、地上から見るよりも星の数が多く綺麗に感じられた。
星空から横に視線を向けると、俺と密着して浮遊しているアリサが頬を赤く染めて笑顔で微笑んでいた。
俺もそんなアリサに釣られて笑顔になると、俺達は顔を見合わせて微笑み合う。
そのまま、夜空を俺とアリサは手を繋ぎながら進んで行った。




