森の守り神5
キングマンモスの洗脳を解いた事で敵は動揺していた。
「ブサイン様! 魔獣達が急に命令を聞かなくなりました! これでは戦線に影響が出ます!」
「な?にぃ?!! 魔獣どもがいなければ、魔法を使う邪教徒どもに勝てぬではないかぁ?!!」
「どう致しましょう?」
「バカが! 撤退だ! 撤退するぞ! あんな化け物どもとまともに戦えるか!!」
ブサインは取り乱しながら泣き叫ぶと我先にと馬を走らせてその場から逃げ出した。
指揮官の撤退により、軍もすぐに撤退を開始する。こうして、敵軍の侵攻は我々グランベルン軍の勝利で終わった。
しかし、今回の戦争でこちらも相当の被害が出た。国に戻った俺達は家に戻ったが、父であるランベルクとアリサの父親であるグランツはそれから数日間、戦後の後処理で自宅に帰ってくることも出来ずに王城に籠ったままだ。
俺は普段通りにエイネスの魔法の授業を受けていた。
そこには俺達を襲撃してきた女の子も何故か参加している。
俺達がいない間にエイネスによって何かされたようで、終始怯えながらも従順になっていた。しかし、なにをされたのかは分からず、聞いても教えてくれない。
だが、それも気になるがそれ以上に普段よりアリサが元気がないような気がする。どこか上の空で窓から外を見ていたり、時折大きなため息をついていたりと、魔法の勉強どころではないように見えた。
おそらく、父親が帰って来れないからだろう。俺の妹であるリエラもいつもより元気がないからだ。
「今日の授業の前に、新しいお友達が授業に加わります! ほら、コトネちゃん。ご挨拶して」
「……はい。コトネです。よろしくおねがいします」
コトネはそう言って頭を下げた。しかし、どこかその声には抑揚がなく感情を押し殺しているようにも見えた。
エイネスはそれとは真逆でニコニコでコトネのことを見つめていた。どことなく肌艶が良くなっている気がする。
俺はコトネの側に行くとこっそりと耳元で聞いた。
「……コトネ。先生と何かあった?」
「なにもなかった……」
その言葉とは裏腹にコトネは瞳から一瞬で光を失った。
虚な瞳のまま真っ直ぐ遠くを見つめている。
「いや、絶対なにかあったでしょ!」
「なにもなかった……あなたも分かるわ、あの女の怖さが……逃げる度にセクハラされ、また部屋に戻される…………逃げても捕まる。絶対に逃げられない。あの女はいつでもあたしの背後を取れる。あたしの命を取れる……もう、おわりなのよ……おわったの……なにもかも」
コトネは何かを思い出すようにガクガクと体を小刻みに震わせながらその顔から血の気が引いて絶望したようにブツブツと念仏のように呟いている。




