大規模な戦争5
「リオンが行くなら私も行く!」
「はぁ〜、分かった。でも、僕から離れるなよレイラ」
「はーい!」
笑顔で手を上げるレイラは分かっているか分からない。
俺達は軍隊の先頭まで向かう。
エルロンドの魔法で姿は見えていないはずだが、歩いている兵士達の側を走って駆け抜けていくのはドキドキする。
俺達は部隊の先頭の方まで行くと、敵が逃げる背中が見えた。
やはり、相手の方が数が多いのでこちらの兵士が追いかけて後方から魔法や槍で逃げる敵の背中を攻撃している。
無慈悲に断末魔の叫び声を上げて倒れていく敵兵を目の当たりにして、これが戦争なのだと魂が恐怖に染まり震える感覚がある。
日本という平和な国家に生まれた俺には命が舞い落ちる木の葉のように散ってまだ温かい死体を踏み付けて進んで行く兵士や軍馬に底知れない恐怖を覚えた。
これが本当の戦争なのか……
俺は心の中でそう呟く。
本物の戦争に参加するのは初めてだ。だが、それは俺だけではない子供でしかないエルロンドやアリサも戦争を目の当たりにするのは初めてだ。
しかし、不思議とレイラは平気そうだった。
敵が逃げているのを俺達も兵士達と追いかけていると、上空から身をすくませるような咆哮が聞こえてきた。
ギャアアアアアアアアアアアッ!!
その空気を切り裂くような咆哮に俺の体は硬直する。
それはダンジョンの最深部であった黒竜の時に似ていた。
上空を見上げるとそこには無数のドラゴンがいた。
「ど、ドラゴンだと……!」
「なんで……ここに……」
周囲の兵士達からも動揺の声が上がる。
その直後、空を覆い尽くすほどの無数のドラゴン達の口元が光った。
その次の瞬間、火球が雨のように降り注ぎ、俺の視界に広がる景色が赤く染まった。
熱風と衝撃が地面を揺らし大量の血しぶきと肉の焼け焦げる臭いが周囲に漂う。
火球の着弾地点にいた兵士達は声を上げる時間すらなく即死した者も多く。辛うじて生き残っている者も、皮膚が焼かれ、爆風で四肢のどれかが吹き飛び激痛で地面に倒れ込んだまま悶え苦しんでいる。
「……なんだよ。これ……」
俺は周囲の惨状を目の当たりにして絶望したように呟いた。
「こんなの……勝てるわけないよ……」
アリサが顔を青ざめさせながらその場に座り込んで絶望した表情で小さく言った。
それを見たエルロンドもアリサや俺にどう声を掛けたらいいのか分からない様子で、その場に立ち尽くしている。




