大規模な戦争4
まあ、実の息子と娘が命を狙われたのだ。冷静ではいられないだろう、特に今回は王族であるエルロンドも狙われたから尚更だ。
だが、刺客を和平の使者と偽り。他国の王子を害する国などろくなものではない。
何か企んでいるのは間違いないが、それを分かっていても人としての悪辣ぶりに黙っているわけにもいかないだろう。
「私も息子の命を狙われて冷静ではない。だが、戦場においては冷静さを失った者が負ける。奴等の狙いはそれかもしれないな……」
「はい。私も今は冷静ではないと自覚しています。これも我が身の未熟ゆえ……」
ランベルクとグランツはお互いの顔を見ながら苦笑いを浮かべている。
そこに天幕の外から馬のいななく音が聞こえて来て、慌てた様子の斥候が入ってくる。
「ランベルク様! グランツ様! 御報告が御座います!」
「なんだ!」
「敵兵に動きあり! 敵は我が先鋒に突如として突撃を開始! しかし、すぐに転進。西に動きを取って全速力で進んでおります!」
「分かった! 追って命を下す! 外で待機せよ!」
「はっ!」
兵士は甲冑を鳴らしながらすぐに天幕の外へと出て行った。
「……西か」
「おかしいですね。西には平野が続くのみで小高い丘も、伏兵を置ける谷もありません。兵数の有利も敵に背後を見せては無意味。数が少ない我々の方が行軍のスピードは速く、背後を強襲されて兵を削がれるだけでは?」
姿を消してランベルクとグランツの話を聞いていた俺達は考え込んでいた。
俺はその会話を聞いて思い出す。
元の世界なら戦争には地雷を埋める。広い平野に地雷を仕掛けて敵を吹き飛ばす。しかし、そんなことする必要あるのか? 魔法のあるこの世界で爆薬なんかが役に立つのか? それに探知魔法で埋めた地雷を見つけられるだけだろ……なら、何故広い場所に誘い出そうとするのか、それだと魔法を使える兵士に生身の人間が勝てる理由はなんだ?
俺は思考を巡らせるが、現実世界からの転生者である俺には到底想像できない。
だが、実際に現場に行けば分かるかもしれない。
天幕を出て俺達は立ってエルロンドを見た。
「よし。僕達で様子を見に行こう!」
「そうだな! リオン! 俺も行くぞ!」
エルロンドはそう言って拳を振り上げた。
「もちろん。あたしも行く! リオンが止めても行くから!」
俺の瞳を真っ直ぐに見つめるアリサの真剣な瞳に断れそうにない。




