アストレア王国の王城に潜入。8
「どうした? 殴らなくていいのか?」
嘲笑って不敵な笑みを浮かべるベルフールはそう言った。だが、殴れるはずがない。
何故なら俺の拳の前には国王の顔があった。
「……くっ!」
「お父様!!」
俺が手を止めて苦虫を噛み締めたような顔でいると、後方からリリエスが叫ぶ。
「……お前はそこで寝ていろ! 神よ! 大いなる力を貸し与え賜え! 我が前の敵に鉄槌を! ファイアボール!!」
「……ぐっ!!」
ファイアボールを受けた俺はそのまま後方に勢い良く飛ばされた。
「どうだ小娘! ファイアボールの味はっ!!」
吹き飛ばされた俺を見たベルフールは得意げに大声で笑う。
その後、国王の髪を掴んで俺達の前に突き出す。
「こいつはもう俺の傀儡なのさ! 随分と前からなっ!!」
「お父様!!」
「はっはっはっ!! お前の大事なお父様はもう姫様! お前を認識できるだけの思考すらない!! ただのお人形なんだよ!!」
「うそ……そんな……おとうさまぁ……」
涙を流しながら髪を掴まれて好き放題されても、虚な瞳の国王を見ているリリエス。
俺はそんなリリエスを見ても全く悪びれないベルフールに、溜まっていた怒りが爆発する。
「貴様ァ!!」
叫んだ直後、俺はベルフールの目の前に一瞬で移動していた。
「なっ!? 速い!!」
ベルフールは反応する時間もなく吹き飛ばされた。
それを見たリリエスはすぐに地面に倒れた国王の元へと駆け寄る。
「お父様!」
リリエスは倒れている国王が無事なのを確認してほっと胸を撫で下ろす。
「ぐっ……お前、人の動きではない……このバケモノがっ!!」
「僕は人間だ……バケモノは人の心を持たないお前の事を言うんだぁぁああああああああ!!」
俺はベルフールに殴り掛かろうとした直後、不敵な笑みを浮かべているのに気が付いて拳を止めた。
「……なにを笑っている?」
「お前達の負けだ……この国はもう終わりだよ……ははっ、俺は囮だ……本命はすでに街を破壊している」
「なにを……街を破壊するだと?」
そう言ったベルフールに俺が聞き返した直後、王城の窓ガラスが揺れて爆発音が響き渡る。
俺達は慌てて窓の外を確認すると、巨大なドラゴンが街で暴れているのが見えた。
「あれはなんだ!! 答えろ!!」
俺はベルフールの首根っこを掴むと、ベルフールは勝ち誇ったように薄ら笑いを浮かべている。
「あれは赤竜だ……お前もおとぎ話で聞いたことがあるだろう? 黒竜と英雄の話を……あれに出てくる黒竜ほどじゃないが、赤竜は黒竜に次ぐ厄災……ふふふっ、貴様らもこの国と共に滅びろ……」
そう言い残すとベルフールは気を失った。
「くそっ! アリサ! 君はリリエスと共にここに居てくれ!」
「やだ! あたしもリオンと戦う!」
「ダメだ! 姫様と国王を誰が守るんだ! 君は彼女達を守って危なくなったら風魔法で遠く安全な場所に運んでくれ! 僕は宿に剣を取りに戻る!」
俺は窓ガラスを足で蹴破ると、そのまま王城から飛び降りた。
「待って! リオン!!」
そう叫ぶアリサに振り向きもせずに俺は泊まっていた宿屋に走った。




