アストレア王国の王城に潜入。7
扉を開いた先には国王が椅子に腰掛けており、その隣には真っ白な教祖の衣装に身を包んだ男が立っていた。金で作られたネックレスなどの装飾品を身に付けていた。
「おとうさ……国王陛下。夜遅くに失礼します。国王陛下、私の言葉を少し聞いた頂けませんか?」
リリエスはそう言って王様の前に行こうとする。しかし、それを遮るようにベルフールが前に出て来た。
「どなたかと思えば、ヒトモドキの姫様でしたか……魔物を国王陛下に近づけると思ってか? 全く穢らわしい……生きているだけで神に対する冒涜だというのに、破廉恥な姿を……しかも、そんな得体の知れない者達を引き込んでクーデターを画策するなど恥はないのですか?」
「……お父様」
実の娘に全く興味を示さないように眉ひとつ動かさない国王陛下を見て、悲しそうな顔で今にも泣き出しそうな瞳がキラキラと輝いていた。
それを見た俺は隣に並ぶと、肩をぽんぽんっと優しく叩く。
「……アイ」
リリエスは俺の方を向いて顔を見上げる。
「大丈夫だ……お前! 彼女のことを悪く言うな!」
俺は怒りで体が震えていた。
リリエスのように魔法を使えない俺も、魔法を使える彼女と同じ思いをしていた。
周りは人と違う俺を異質なものを見るような目で遠ざけ嘲笑っていた。
魔法が使えない。魔力量が少ない。それだけで、人ではないような扱いを受ける。
リリエスも同じように魔力があり魔法が使えるというだけで、魔物と……異端者として人とは見られていなかったのだろう。姫ということもあり、投獄や処刑は免れたが、それでも部屋に幽閉されていたのだ。
そんなリリエスの境遇が俺にも重なったことが、彼女を馬鹿にするベルフールの言葉に憤った原因だろう。
俺を見るベルフールがニヤッと口元に笑みを浮かべる。
「そうか、分かったぞ……お前も異端者だな! っという事は、グランベルン王国の刺客だな! こちらが刺客を送り込んだから仕返しにお前達を送り込んできたか!」
ベルフールはそう言って俺達を指差す。
確かにベルフールの読みは鋭い。しかし、俺には魔力が殆どなく魔法も身体強化魔法だけしか使えない。マジックドレインを使えば相手から魔力を奪って魔法を発動できるが、これは相手の魔力に依存する為に使用できる魔法に幅がありすぎてあまりにも博打過ぎる。
だが、それが今回は功を奏している。魔法を使えないと思ってくれれば好都合だ。
「それはお前の体で感じるんだな!」
俺はベルフールに向かって拳を構える。
アリサはリリエスの肩を抱きながら側に付いて、俺の後ろに隠れた。
もしもの時はアリサの風魔法でリリエスだけは脱出させることができる。
「なんだ? その構えは、まさかお前……魔法が使えないのか?」
「だったらどうなんだ?」
拳を構える俺を嘲笑いながらベルフールは手に持った杖を掲げる。
「ふふっ……魔法が使えないなら好都合だ!」
ベルフールは杖を持ってそう叫ぶと、杖の先に付いた結晶が光り輝く。
「神よ! 大いなる力を貸し与え賜え……」
「……させるか!!」
俺は詠唱を始めたベルフールに向かって走ると拳を突き出す。
しかし、俺の拳はベルフールに届くよりも早く止まってしまう。




