アストレア王国へ。5
突然のことに状況が理解できていないようで、アリサは混乱しているように借りてきた猫のように小さく大人しくなってしまっていた。
俺は地面を蹴ると、そのまま全速力で走り始めた。
お姫様抱っこのまま、アリサを抱き上げた俺は高速で移動を開始した。
「ちょっ……ちょっと! 速い! 速すぎるよ!!」
「アリサ。喋ると舌を噛むかもしれない……危ないから、慣れるまでは上だけを見てて」
「……うん。分かった」
アリサは大人しく従うと俺の顔を見てうっとりとした様子で頬を赤らめていた。
土煙を上げながら高速で移動をしていると、アリサもしばらくして慣れてきたのか、辺りを見て指を差しながらキラキラと瞳を輝かせている。
「見て見て! リオン! あの鳥なにかな! ピンク色で綺麗だね!」
「……アリサ。あんまり動くと落ちちゃうぞ」
アリサは腕の臭いを嗅ぐと遠くの森を指差して恥ずかしそうに言った。
「あのね……リオン。ちょっと森の方に寄り道していい? 川に行きたくて」
「川? ああ、水も補給したいしちょっと寄ろうか!」
俺はアリサの意見に賛成して近くの森の中にある川に立ち寄った。
川に着くと、とても澄んだ綺麗な水が流れている。
魚が泳いでいるのが水面からはっきり見える。これなら飲み水としても使えそうだ。
アリサは水魔法には適性がなく水の確保は重大な問題でもあるから、こうした水場があるのは助かる。
俺はバッグから水筒を取り出すとそれを飲んで、走ってカラカラになった喉を潤すと、水筒に川の水を汲んだ。
「リオン! ちょっとあたし……泳いでくるね!」
アリサはそういうと、俺の隣で急に服を抜き出して生まれたままの姿になると、そのまま川の中に飛び込んだ。
「あははっ! 冷たくて気持ちいい!! リオンもおいでよー!! すっごく気持ちいいよ!!」
「バカ急に裸になるなよ!」
「なんで? 別に一緒にお風呂だって入ったんだから今更でしょ?」
アリサの裸を見て目を逸らす俺に、アリサは不思議そうな顔をしていた。
まあ、前にお風呂に入っているのに気付かずにアリサとお風呂で鉢合わせしたことがある。その時にもアリサの裸を見てしまっている。
だが、それは事故のようなもので一緒に入ったとまでは言えない。
「リオンも体を洗わないと汚いよ。またいつ水浴びできるか分からないんだし」
「僕は宿屋で体を拭くくらいでいいよ」
「なんだ……つまんなーい」
アリサは不満そうに口を尖らせると不貞腐れたように川の中に潜った。
水面から飛び出したアリサの姿はまるで女神のようで、濡れた赤く長い髪が光を浴びてキラキラと輝き、水の中に入ると赤い髪が広がってゆらゆらと揺れて、炎が水中で燃え上がっているようだ。
俺はアリサが水浴びをしている間、水辺の近くの岩の上で休んでいると、陽射しは暖かく気持ち良い風が吹いて木々がざわめいている。




