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拘束奴隷と自由な傭兵  作者: 内山スク


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9/22

闘争の渦

 路銀ろぎんを稼ぎ、ヒートリアから出発した。

 南に生息しているラミアメイルを倒すために、俺とリーフは旅は続く。

 南に向かっている道中どうちゅう村に入った。

 周りは金色に輝く麦畑むぎばたけが広がっている。

 のどかな風を感じながら歩いてると突然麦畑から、ガサガサという音がした。


「うぉ!?」


 麦畑からデカい鳥のような生物が飛び出してきた。鳥の身体なのだが二足歩行で歩いており、翼は退化して飛べなそうなほど短い。くちばしには麦を加えていた。


「スピードクイナだ!」


 スピードクイナ。二足歩行の鳥のモンスター、主に畑を荒らし穀物を食い漁る。

 肉はうまいが速すぎて捕まえるのが面倒なのが、ネックだ。

 スピードクイナは俺達を見るなり、ものすごいスピードで駆けていった。

 あまりのスピードに風だけを置き去りにしていった。


「こんな人里までモンスターが降りてくるなんて」


 スピードクイナが消えた方向を見ていると、再び麦畑からガサガサという音が響いた。

 もう一匹スピードクイナがいたのかもしれない。剣に手をかけ、いつでも抜けるように構える。

 そして麦畑から奴は出てきた。スピードクイナの頭を模して作ったハリボテを被ったおっさん。

 しかもご丁寧に口で麦を加えていた。


「何やってんだ!」


「へぶっ!?」


 俺は剣の柄の先を思いっきり、おっさんの脳天に叩きつけた。

 おっさんは衝撃で地面にバウンドし、倒れた。

 だがしばらくするとおっさんは身体を震わせて、起き上がってきた。


「何すんだ! ガキ!」


 突然おっさんがキレ始めた。殴ったからキレているのだろうが、とりあえずこのおっさんの思考はやばいことはわかった。


「それはこっちのセリフだ。モンスターに紛れて畑荒らしかおっさん。捕まえて衛兵に引き渡すぞ」


「違う! 私はモンスターの研究者なのだ」


「モンスターの研究者?」


「そうだ。私はモンスターの生態について研究している。これだってモンスターの気持ちになろうと行っているのだ」


「変態じゃねぇか」


「変態ではない! 探究者だ!」


 なんだかんだ言っても、やっぱり変態にしか見えない。

 するとスピードクイナが、去っていった方向から地鳴りのような音が聞こえてきた。

 目線を地鳴りの方向に向けると、数頭のスピードクイナがこちらに向かってきていた。

 どうやら群れを連れて帰ってきたようだ。


「やばい! 奴ら仲間を連れて戻ってきやがった」


 剣を腰から抜き、構えたがその必要はなかった。

 距離が五十メートル以内に入った瞬間、リーフが凄まじいスピードと共に、スピードクイナの群れを一掃した。

 その光景は突然スピードクイナが倒れたように見えた。

 この前のオーク達との戦いよりも、リーフのスピードが速くなっているように感じた。

 まるで重りか、つけられていた枷が外れて、普段の力を使えるようになったように。

 倒れたスピードクイナの死体に研究者のおっさんは近づくと、死体を観察し始めた。


「ふむ、ここまで外傷の少ない。サンプルが手に入るとは思わなかった」


「おっさんなんで、モンスターの研究なんてするんだよ」


「お前さんはモンスターのことをどう思っている?」


「行動が読めない生物」


「そう、一般的にはな。だがモンスターには行動の理由がある」


「行動の理由?」


「モンスターは人間に依存して生きているということだ。例えばこのスピードクイナは人間が育てた麦を主食にしている。なぜなら栄養価が自然な物より高いからだ」


 研究者のおっさんの言葉を聴いて思い出した。確かにオークも人間を食べたりしなかった。ガンドラントも、剣などの金属類を摂取していた。


「我々人間もモンスターも自然に組み込まれた生態系の一部に過ぎないのさ。そしてどちらが生物として生き残るか・・・上かは今は定まっていない」


 その言葉を聴いて、途方もないことをしているような気がしてきた。

 今までモンスターは狩ってきたが、自分もその生態系の闘争に巻き込まれているようだと。

 王国にいた時と同じように、戦う相手が人間からモンスターに変わっただけではないかと。


「まぁ、お前さん達に出会えてサンプルも手に入った。スピードクイナを解体するから肉を少し持っていけ」


「え!? いいのか」


「私も誤解させたしな。この量は食い切れん」


 頭を殴ってしまったのに申し訳ないが、スピードクイナの肉をいただくことにした。

 研究者のおっさんは、スピードクイナを解体した後、新しい研究対象を探すと行って立ち去っていった。

 結局のところ、自由に生きたいと思ってもこの世界に生きる限り、闘争に巻き込まれ続ける。

 本当の自由なんてものはないのかもしれない。

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