闘争の渦
路銀を稼ぎ、ヒートリアから出発した。
南に生息しているラミアメイルを倒すために、俺とリーフは旅は続く。
南に向かっている道中村に入った。
周りは金色に輝く麦畑が広がっている。
のどかな風を感じながら歩いてると突然麦畑から、ガサガサという音がした。
「うぉ!?」
麦畑からデカい鳥のような生物が飛び出してきた。鳥の身体なのだが二足歩行で歩いており、翼は退化して飛べなそうなほど短い。嘴には麦を加えていた。
「スピードクイナだ!」
スピードクイナ。二足歩行の鳥のモンスター、主に畑を荒らし穀物を食い漁る。
肉はうまいが速すぎて捕まえるのが面倒なのが、ネックだ。
スピードクイナは俺達を見るなり、ものすごいスピードで駆けていった。
あまりのスピードに風だけを置き去りにしていった。
「こんな人里までモンスターが降りてくるなんて」
スピードクイナが消えた方向を見ていると、再び麦畑からガサガサという音が響いた。
もう一匹スピードクイナがいたのかもしれない。剣に手をかけ、いつでも抜けるように構える。
そして麦畑から奴は出てきた。スピードクイナの頭を模して作ったハリボテを被ったおっさん。
しかもご丁寧に口で麦を加えていた。
「何やってんだ!」
「へぶっ!?」
俺は剣の柄の先を思いっきり、おっさんの脳天に叩きつけた。
おっさんは衝撃で地面にバウンドし、倒れた。
だがしばらくするとおっさんは身体を震わせて、起き上がってきた。
「何すんだ! ガキ!」
突然おっさんがキレ始めた。殴ったからキレているのだろうが、とりあえずこのおっさんの思考はやばいことはわかった。
「それはこっちのセリフだ。モンスターに紛れて畑荒らしかおっさん。捕まえて衛兵に引き渡すぞ」
「違う! 私はモンスターの研究者なのだ」
「モンスターの研究者?」
「そうだ。私はモンスターの生態について研究している。これだってモンスターの気持ちになろうと行っているのだ」
「変態じゃねぇか」
「変態ではない! 探究者だ!」
なんだかんだ言っても、やっぱり変態にしか見えない。
するとスピードクイナが、去っていった方向から地鳴りのような音が聞こえてきた。
目線を地鳴りの方向に向けると、数頭のスピードクイナがこちらに向かってきていた。
どうやら群れを連れて帰ってきたようだ。
「やばい! 奴ら仲間を連れて戻ってきやがった」
剣を腰から抜き、構えたがその必要はなかった。
距離が五十メートル以内に入った瞬間、リーフが凄まじいスピードと共に、スピードクイナの群れを一掃した。
その光景は突然スピードクイナが倒れたように見えた。
この前のオーク達との戦いよりも、リーフのスピードが速くなっているように感じた。
まるで重りか、つけられていた枷が外れて、普段の力を使えるようになったように。
倒れたスピードクイナの死体に研究者のおっさんは近づくと、死体を観察し始めた。
「ふむ、ここまで外傷の少ない。サンプルが手に入るとは思わなかった」
「おっさんなんで、モンスターの研究なんてするんだよ」
「お前さんはモンスターのことをどう思っている?」
「行動が読めない生物」
「そう、一般的にはな。だがモンスターには行動の理由がある」
「行動の理由?」
「モンスターは人間に依存して生きているということだ。例えばこのスピードクイナは人間が育てた麦を主食にしている。なぜなら栄養価が自然な物より高いからだ」
研究者のおっさんの言葉を聴いて思い出した。確かにオークも人間を食べたりしなかった。ガンドラントも、剣などの金属類を摂取していた。
「我々人間もモンスターも自然に組み込まれた生態系の一部に過ぎないのさ。そしてどちらが生物として生き残るか・・・上かは今は定まっていない」
その言葉を聴いて、途方もないことをしているような気がしてきた。
今までモンスターは狩ってきたが、自分もその生態系の闘争に巻き込まれているようだと。
王国にいた時と同じように、戦う相手が人間からモンスターに変わっただけではないかと。
「まぁ、お前さん達に出会えてサンプルも手に入った。スピードクイナを解体するから肉を少し持っていけ」
「え!? いいのか」
「私も誤解させたしな。この量は食い切れん」
頭を殴ってしまったのに申し訳ないが、スピードクイナの肉をいただくことにした。
研究者のおっさんは、スピードクイナを解体した後、新しい研究対象を探すと行って立ち去っていった。
結局のところ、自由に生きたいと思ってもこの世界に生きる限り、闘争に巻き込まれ続ける。
本当の自由なんてものはないのかもしれない。




