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拘束奴隷と自由な傭兵  作者: 内山スク


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10/22

魅入られるほど酔いしれて

 南に向かって三週間が過ぎた。


「やっとついた」


 ようやく俺達はラミアメイルが、生息する洞窟の近くに到着した。


「あそこに村があるぞ。ちょっと休むかリーフ」


「了解いたしました」


 リーフは頷くと村に向けて、歩き始めた。

 俺の後ろを歩くのではなく、自分から進んで前へ歩き始めた。

 それを見て、リーフの成長を感じつつも、もうすぐリーフとの旅が終わることを実感するのであった。



 村に着くと、宿に直行ちょつこうした。そして久々のベッドの柔らかさを身体いっぱいに感じた。


「あー地面の硬さを感じなくて済む。お前もそう思うだろリーフ」


「えぇ・・・そうですね」


 なぜかリーフがよそよそしい。ベッドに腰をかけ、指をいじっている。


「どうした?リーフ何か心配ごとでもあるのか」


「・・・ザインガル様はモンスターと仲良くなれると思いますか?」


 突拍子とっぴょうしのない質問に頭の中で答えを考えるのが遅れてしまった。

 この前会った研究者とか言ってたおっさんに影響を受けたのだろうか。


「うーん・・・まぁ言葉が通じるなら仲良くなれるんじゃないか。たぶん・・・」


 モンスターと人が暮らすなんて話は聞いたことがない。そして前例もない。

 モンスターは行動が読めない生き物というのが、世界の一般常識だ。

 申し訳ないがリーフの質問には曖昧あいまいな返答しか返せない。

 リーフに見えているモンスターは、俺が見ているモンスターとは違うのかも知れない。

 モンスターにはオークのようにつたない言葉を話す存在もいるし、これから討伐するラミアメイルもその一種だ。


「まぁ言葉がわかるなら・・・話し合えるならお互い分かり合えるかもな」


「・・・そうですね」


 リーフの顔は何故か寂しさに、包まれているように感じた。




 村を散策するついでにラミアメイルの生息地について聞き込みをしていた。

 南に行くにつれて感じていたが、この土地は暑い。

 マフラーも鎧も脱ぎたい、もっと軽装の装備を身に付けたい。

 特に首周りが蒸れるし、鏡戦士きょうせんし籠手こてが太陽光を反射して眩しい。

 モニカめ。恐らく性能だけを重視して、日常生活について考えていなかったに違いない。

 ここに向かう道中どうちゅうも、モンスターや野盗やとうに光が反射して気づかれていた。

 外しても、籠手こてはかさばるし収納にとても困った。

 籠手とかではなく、盾にしてもらうべきだったかも知れない。

 そんなことを考えながら、ラミアメイルの生息地を訊いていると酒場に辿り着いた。


「リーフ。ここで休憩ついでに聞き込みするか」


「承知いたしました」


 リーフは頷き同意したことを確認すると、酒場の扉を開けた。

 中は匂いだけで酔いそうなほどの酒の匂いで満ちていた。


「うわ、酒くせぇ!」


 鼻につくような匂いに思わず、鼻に手を当てた。

 リーフも少し顔をしかめていた。

 酒の匂いに耐えながら、酒場に座っていた無精髭ぶしょうひげの男に声をかけた。


「あの、ちょつと訊きたいことがあるんだが」


 無精髭の男は声をかけると真っ赤になった顔をこちらに向けてきた。不機嫌そうな表情をして、片手には酒が入ったジャッキを握っている。


「あぁん! なんだテメェ。人が酔ってる時に邪魔するなよ」


「いや訊きたいことがあるのだが。ラミアメイルの居場所を知らないか」


 その言葉を口にすると酒場が静まり返った。

 酒場にいる全員の目がこちらに向いていた。

 こちらを見る表情は、まるで禁句を口にしてしまった者を見るような顔をしていた。

 そして突然俺の頭に衝撃が走り、木製の破片が床に散らばった。

 無精髭の男がジャッキを俺の脳天に叩きつけたのだ。


「誰にラミアメイル様の話をしているんだ! あぁん!」


 無精髭の男は突然怒り出した。酒で真っ赤になっていた顔がもっと赤くなっていた。


「ラミアメイル様は俺たちの女神だ。貴様もラミアメイル様を殺しに来た異端者いたんしゃだな!」


 無精髭の男は拳を握ると、俺の顔面にその拳を叩きつけてきた。

 酔っているのか、頭がイカれているのか、モンスターに操られているのかはわからないがとりあえずこの男はここで倒したほうがいい。

 俺は拳を握り無精髭の男を殴ろうと、右手を振りかぶると鏡戦士きょうせんし籠手こてについた鏡が窓から入ってきた日差しを反射させた。


「眩しい!」


 反射した日差しが無精髭の男の目をくらませた。

 そして俺の右手は無精髭の男の顔面を殴り飛ばした。

 無精髭の男は吹き飛ばされ、机に衝突するとそのまま床に倒れて気絶した。

 鏡戦士きょうせんし籠手こて意外と役にたった。製作者が考えていた運用方法とは違うけど。


「おい、おっさんラミアメイルについて教えろよ。おい、おっさん!」


 無精髭の男の頬をペチペチ叩きながら、起こそうとするが完全に意識を失っていた。


「旅の人。ラミアメイルを探しているのかな」


 いつの間にか、酒場の店主のような男が近づいてきていた。


「あぁ、そうだけどラミアメイルの場所を知っているのか? それにラミアメイル様って?」


「この男はラミアメイルに魅入られたのだ。ラミアメイルは自信を討伐しようとする男を魅入られて手下にしている」


 なるほど、この無精髭の男はラミアメイルに惚れてしまったわけか。


「ラミアメイルはどこにいるんだ?」


「この村の南西にいったところにある森の奥に洞窟がある。その洞窟にラミアメイルが集団で生活しているそうだ」


「それだけわかれば十分だ。ありがとうな店主」


 気絶した無精髭の男から手を離すと、俺は酒場から出た。

 目的地はわかった。後は獲物を倒して素材を引っ剥がすだけだ。


「行くぞ。リーフ」


 後ろから足音がしないため、振り向くとリーフは顔を真っ赤にしていた。真っ直ぐに立っていられないのか、ゆらゆらと一定のリズムで揺れている。

 目もなぜかとろけている。まるで酒でも飲んだように。


「もしかして酔ってる? リーフ」


「ひえ、しょんなことはありません」


 リーフが酒を飲んでるところは見ていないし、まさか匂いで酔ったのか。


「匂いだけで酔うとか、酒弱すぎだろ。ほら背中に乗れ」


 背をリーフに向けると、リーフは体重を任せるように、背中にもたれかかってきた。

 リーフの体温が背中に伝わってくる。

 リーフの身体が前にお姫様抱っこした時よりも暑く感じた。

 酒に酔っているせいなのか、それとも俺の体温が高いからそう感じるのかはわからなかった。

 そのままリーフは、俺の背中で眠ってしまった。


「全く世話のかかる奴だな」


 まるで子供の世話をする親の気分だ。

 リーフがこんな状態じゃ戦えないし、ラミアメイルの討伐は明日にするしかないな。


「うーんお母様・・・ムニャムニャ」


 リーフの寝言に思わず笑ってしまった。

 普段のリーフからは想像つかないし、リーフも母親を恋しいと思っている以外な一面しれた。

 リーフも寂しさを感じているのかも知れないと考えながら宿に帰るのであった。

 背中で眠るリーフはまるで安心して身体をあずける子供のようだった。

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