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拘束奴隷と自由な傭兵  作者: 内山スク


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6/22

心の中を満たすのは

 硬龍こうりゅうガンドランドを倒してから数時間が経った。

 日は沈み、明るかった草原は暗闇に包まれていた。

 ガンドランドを倒した後、俺達は野営地を立て直した。

 負傷したルインの部下に応急処置をほどこしたり、後片付けをしたり、ガンドランドから鱗を剥がしたり、正直疲れた。

 野営地に用意された椅子に腰掛けて、なんとなく空を眺めていた。

 リーフは俺の横に座りながら机に突っして寝ていた。今日一日色々あって疲れたのだろう。

 リーフに毛布をかけると後ろから誰かが歩いてくる足音が聞こえてきた。


「よぉザインガル。隣いいか?」


 ルインがこちらに手を振りゆっくりと歩いてきた。


「ああどうぞ」


 俺の言葉を聴くとルインは俺の隣に腰掛けた。リーフとルインに挟まれるが、一人分席が離れているせいかリーフは起きず、スヤスヤと寝息を立てていた。


「よく寝てるなその子」


「疲れたんだろう。しかしその剣すごいな! いつ手に入れたんだ」


 ルインの腰に下がった剣に目線を向けるとルインは剣をポンと叩いて見せた。


「王からの褒美ほうびでもらったんだ。まぁこの剣使い過ぎると、局所的きょくしょてきに雨が降るからそこが不満かな」


 王国にいた時に魔装具まそうぐは俺も持っていたが、正直ルインのアクアブレードはうらやましい。できる範囲が広そうだし、何よりカッコいい。


「ザインガル・・・王国には戻ってこないのか?」


 ルインの突然の言葉にすぐに返事が出なかった。それはこの前まで考えて悩んでいたことだったからだ。

 そしてもう一つ王国に戻りたくない理由がある。


「・・・戻らない」


「そか・・・それは残念」


「父う・・・親父はなんか言ってたか?」


「無理して反抗期演じなくていいだろう。バカ息子だって毎日聴かされてるよ」


「そうか・・・悪いな」


「謝んなよ」


 笑いながら返すルインに俺は謝ることしかできなかった。

 何かに縛られるのが嫌で、自分の人生を歩みたくて父上と喧嘩してここまできた。

 騎士の家系に生まれたばかりに、誇りやら信念やら、伝統やら、国への忠誠やら、顔も見たことない先祖が決めたことに縛られるのが嫌だった。

 始めて親と喧嘩になったがどちらも引かず、決着はつかなかった。だから俺は親に黙って国を飛び出した。

 

「でもな、アルス卿はお前の話をする時寂しそうな時もあれば、嬉しそうに話すときもあるぞ。一度会って話したらどうだ?」


「・・・今はやらなくちゃいけないことがあるから。いつかな」


 ルインは眠っているリーフを見ると、優しい笑みを俺に向けた。


「そうか・・・ならそれが終わるまで待ってるよ。それに俺はお前の生き方少し羨ましいよ」


「え?」


「俺みたいにただ流れに身を任せるだけじゃなくて、自分で流れに逆らうように泳ぐ生き方も」


 ルインは笑いかけるが明らかに気を遣わせていた。

 昔のことを思い出したからか話題が出てこない。頭の中には父上と母上のことが浮かんでくる。

 自分で決めたことなのに今更、親のことが頭に浮かぶとはなさけない。

 自由を望んだのは他ならぬ自分なのに。


「ところでお前はこれからどうするんだ?」


 ルインの質問に我に返った。喋らない俺に気を遣ってくれたのだろう。


「え?ああ・・・この後は南に行くよ」


「反対方向じゃないか。まぁ目的があるならいいけどさ」


「お前はどうするんだ。ルイン?」


 南に行く理由を深く追求されたくなかった俺は、ルインに質問を返す。

 ルインは机に腕を乗せると、何やら真剣な顔つきになった。


「・・・まぁお前になら話してもいいか。王からガンドランドの討伐ともう一つ命を受けててな」


「もう一つ?」


 王が依頼を出すなんて珍しい。しかもルインのような強い騎士に命を下すなんて中々あることじゃない。


「お前・・・聖女せいじょキルーラは知っているか?」


聖女せいじょキルーラ・・・ああ、確か俺達が子供のころに魔女狩まじょがりで殺されたっていう」


 聖女キルーラ・マリアス。聖女としてまつられ、数々の奇跡を起こしたとしてその名をとどろかせた女性。その最後は魔女狩りという名の人々の思い込みによって、火刑かけいしょされた。


「そのキルーラがどうしたんだよ?」


「俺はキルーラの忘れ形見がたみを探している」


「忘れ形見がたみ? なんなんだよそれ?」


「そこがわかんないんだよな〜。そこを調査するのも俺の役目ってわけ」


 なんとなくだが、ルインはその忘れ形見の正体がなにか知っているような気がした。

 大袈裟おおげさに手を広げてジェスチャーするその素振そぶりは、何かを隠しているように見えたからだ。

 まぁ俺には関係ないし、手伝えとか言われたら面倒だからそれ以上は関わらないでおこう。


「ふーん。まぁ頑張れよ」


「雑だな!」


「知らんがな」


「なんだよノリ悪いな。国の重要事項だぞ」


「なら教えんなよ」


「確かにな。アハハハ」


「アハハハハハハハ」


 俺とルインの笑い声が真夜中の草原に響き渡った。

 久しぶりに知っている人間と話せて、心の中の何かが満たされてるような気がした。


「あ、そういえばこの辺に腕のいい鍛治師がいる町ってないか?」


「腕のいい鍛治師? うーん、ここから南東に行ったところにあるヒートリアならいるかもな。あそこ魔装具まそうぐの生産がさかんだし」


「ありがとう。恩にきるよ」


「いいってことよ。今回手伝ってくれたしな。王国近くに来たら遊びにこいよ」


「ああ、王国に行ったついでにお前の剣の腕を確かめてやるよ」


「やめろよ。俺お前に一太刀ひとたちも当てたことないんだらさ」


「そうだっけか?アハハハ」


 その夜はルインと昔の話をして夜が明けていった。一夜の出来事だったのに何年分もの時間が過ぎたように感じた。

 そして日が昇るとガンドランドの鱗を少しわけてもらい、南東へと出発するのであった。

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