孤独に寄り添う影
友を殺した。
その事実が心に重くのしかかる。
人が通り過ぎていく街の中、ベンチに座り自身の手を見つめていた。
体温が抜けていく身体とは対照的に、血の温かさを手の平で感じた。
その感覚がもう二日も経っているのに離れない。
心に残った深い傷は癒えることを知らず、どんどん心に亀裂となって広がっていく。
目の前で友を失ったのに今度は友の命を奪う立場になってしまった。
世界で自分が孤独になってしまったような孤独感と、人生で当たり前にあった物がなくなった喪失感が残り続ける。
「・・・そうだ。リーフを探さなければ」
ルインがせっかく作ってくれた時間だ。リーフを探しにいかなければ。
そうなんど思っただろうか。
リーフのことを考えるとルインの顔が浮かんでくる。
ルインを手にかけた事実が俺の足を引き止める。
リーフを探しにいくほどの心の余裕は、今の俺にはなかった。
そんな時だった。
「おい! 貴様ザインガルだな」
屈強な男が話しかけていた。腰には剣を下げており、ただのチンピラには見えない。
「・・・なんだ? 俺は今体調が悪いんだ」
「お前を殺せば報酬が入るんだ。調子が悪いなら今死んでくれや」
心の整理ができないしちょうどいいか。
そう思いながら屈強な男は路地裏に俺を引っ張るように連れていくと、剣を抜き斬りかかってきた。
「死ねやぁぁ!」
振りかざされた剣を拳で砕くと、そのまま屈強な男の顔を殴り飛ばした。
「ぐぼぉ」
屈強な男は身体を捻るように飛んでいくと建物の壁に衝突した。
やり場のない気持ちを暴力で晴らそうとしてもうまくいかない。
気持ちの変化は感じない。
「久しぶりに刺客が襲ってきたな・・・」
自分の発言に違和感を覚えた。
久しぶりに刺客に襲われた。リーフといる時や、リーフと別れてから全く刺客や暗殺者に狙われなかった。
そしてリーフは俺が動けなかった時、外を警戒していた。
「そうか・・・そういうことか」
心に希望の光が差し込んだような気がした。
俺の考えが正しければ、俺の思っていることが妄想ではなければ、リーフはずっと。
「リーフいるんだろ?」
路地に俺の声が木霊した。返事は返ってこなかった。
静寂に応えるように路地に風が吹いた。
風が吹き終わると、後ろに気配を感じた。
まるで風に乗って現れたように、彼女はそこにいた。
黒い髪を揺らし、赤い目を光らせた少女が立っていた。
「リーフ・・・ずっと俺を守っていたのか?」
「はい・・・私はやるべきことを見つけました。それはザインガル様。あなたを守ることです」
リーフはずっと俺の近くにいたのだ。俺に気づかれないように影に潜み、俺を狙ってくる刺客を始末していたのだろう。
気がついたらリーフを抱き寄せていた。
「・・・ザインガル様?」
動揺した顔をしたリーフの顔は火照ったように赤くなっていた。
それでもリーフを抱きしめたかった。
誰かと離れたことをこんなにも後悔したことはなかった。
誰かに会えてこんなに嬉しいことはなかった。
誰かと会えてこんなにも孤独であることを自覚したことはなかった。
そうか俺は孤独を感じていたのか。俺が本当に求めたい物は自由ではなく、人との繋がりだったんだ。
「リーフ・・・俺と一緒にいてくれないか?」
自然と口が動き、言葉が出ていた。
「・・・ザインガル様、私は半分魔物なのです。貴方と一緒にいれば迷惑をかけてしまいます」
「それでも俺はリーフといたいんだ」
リーフは静かに頷くと、顔を俺の胸に埋めた。
言葉はないがリーフの答えは行動に表れていた。
リーフを力強く抱きしめながら、心の中で覚悟を決める。
心の傷を埋めるために、自身の決めたことを貫き通すために、そしてリーフの運命の鎖を断ち切るために。
「リーフ・・・一つ付き合ってほしいことがあるんだ」
「なんでしょうか?」
リーフは赤い目を向けて、俺を見つめた。
赤い目をしたリーフの顔を見て俺は今度こそ自分が決めたことにに後悔を残さないことを誓い、言葉をリーフに告げた。
「俺と一緒にグランド王国へ来てほしい」




