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拘束奴隷と自由な傭兵  作者: 内山スク


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19/22

再会と決別

 一人で旅をするようになって一週間が過ぎた。一人で目的もなく放浪ほうろうし、町を周り、魔物を倒す。

 なんら変わらない日々を過ごす。

 リーフと出会う前の生活に戻っただけだ。

 変わったことがあるとすれば、刺客や暗殺者が全く来なくなったこと。そして心の中に残った寂しさがまだ抜けないことだった。

 つくづく惨めだと思う。リーフと別れたことをこんなにも後悔しているとは。

 王国にいた時のほうがスッパリ諦められていたかもしれない。

 そんな心の穴を埋めるように酒場で酒を飲んでいた。

 日が落ち外は暗闇に包まれても、客は数人しかいない静かな酒場だ。

 酒で酔うことはないが、吹き抜けのように空いた心の穴を埋めるにはちょうどいいかもしれない。

 そう思いながら酒を胃に流し込んだ。

 隣の席の椅子が動く音がすると誰かが隣に座った。


「ルイン!?」


「よっ」


 ルインが突然現れ声をかけてきたのだ。初めは酒による幻覚かと思ったがどうやら本物らしい。


「どうしてここにいるんだ? ルイン」


「そんなことより、一緒にいた女の子は一緒じゃないのか?」


「リーフのことか? 別れたよ。それよりそんなことってなんだよ。久しぶりに会ったのに寂しいなぁ」


 久しぶりにルインに会えたことが嬉しくなり、ルインの肩を勢いよく叩くがルインの表情はどこか重そうだった。


「ザインガル・・・そのリーフって女の子の居場所知ってるか?」


「・・・知らないが、なぜそんなことを訊く?」


 ルインの表情は一緒にいる時に話す時の明るい表情はなく、ただ重く真剣な表情をしていた。


「ザインガル・・・単刀直入たんとうちょくにゅうにいう。俺はリーフを殺さなければならない」


「はぁ!?」


 ルインの言葉に俺は思わず立ち上がり、驚きの声が出た。

 ルインは表情を変えることなく話を淡々と進める。


「前に聖女キルーラの忘形見わすれがたみを探しているって話はしたよな?」


「あぁしたな。だけどそれとリーフになんの関係があるんだ!」


「調査をすすめていくにつれて、聖女キルーラには裏の顔があることが判明した」


「裏の顔?」


「キルーラは暗殺者だったんだ・・・彼女が起こす奇跡というのは戦争を起こした首謀者を暗殺し、戦争を止めていた。食料なども貴族から強奪ごうだつしたものだったんだ」


 頭の中でリーフの顔と言葉が浮かんでくる。暗殺者の娘という単語が頭を埋め尽くした。


「だけどそれは母親の・・・キルーラの起こしたことだろ! リーフは関係ないし殺す必要はないだろ!」


「話はここからなんだザインガル」


 ルインは焦る俺を静止せいしするように言葉を挟むと、話を続けた。


「キルーラはそれだけでなくある特殊とくしゅ体質たいしつだったんだ」


特殊とくしゅ体質たいしつ?」


「魔物との子供を作れる身体だった」


 その言葉を聴いて嫌な想像が脳裏をよぎった。リーフが皮膚を宝石のように硬質化したこと、瞳の色が変化したこと、これも魔物の力だったのか。


「キルーラの仲間にもゲスな奴がいてな。キルーラに何体もの魔物の細胞を与えて魔物の力をとどめた人間を作ろうとしたんだ」


 頭の中で想像していることが段々と繋がってくる。そして想像したくない答えが頭の中に浮かんできた。


証拠隠滅しょうこいんめつにキルーラを火刑に処したわけだ。産まれた子供の存在をこの世から消すために」


「・・・やめろ」


 それ以上の言葉は聴きたくない。そんな思いが気がついたら言葉に出ていた。

 そしてそのことを理解しながらもルインは言葉を口に出した。

 ルインが次に発する言葉を俺はすでに頭の中でわかっていた。

 だけどその言葉を俺は聴きたくなかった。


「リーフは聖女キルーラの娘だ。彼女の本当の名前メリア・マリアス。魔物の力を宿したキメラだ」


 ルインの言葉を聴いても頭が現実を受け入れるのを拒んでいる。

 理解したくない、夢であってほしい。

 酒に酔った悪い夢なら今すぐ覚めてほしいと心の中で願う。

 だがこれは現実なのだとこちらを見つめるルインの目が物語ものがたっていた。


「ザインガル・・・王もキメラの存在はあってはならないとおっしゃっている。リーフは王国が全力を持って駆除くじょする」


 動揺した俺を見てルインは淡々と冷酷れいこくに言い放った。

 今の俺はリーフとは全く関係ない。

 自由に生きてほしいと願い、奴隷から解放された少女の運命がこれか。

 こんな悲しいことがあっていいわけがない。


「リーフは殺させない!」


 頭で考える前に本心の言葉が出ていた。友を敵にまわしてでもリーフを守りたい。

 そう魂が訴えていた。

 その言葉を聴いて、ルインは悲しそうな表情を見せると目をつぶった。


「次に会った時は敵同士か?」


 ルインからの最終通告さいしゅうつうこくだった。

 肯定すれば次に会う時には敵同士ということになる。

 どちらかが死ぬかもしれない。

 恐らくルインは俺を引き止めたいと思っての言葉だろう。

 だが俺の決心は固かった。

 例え友を敵にまわしたとしても、俺はリーフを守りたかった。


「あぁ・・・そうだ」


「そうか・・・わかった」


 ルインは辛そうに言葉を吐き出すと酒場から出て行った。

 夜の闇にルインが消えていくのを見届けると、俺は酒場を後にした。

 一刻も早くリーフを探すために。

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