捨てました。燃えるゴミの日だったので
淡い日差しと鳥の鳴き声で目が覚めた。リーフは布団にくるまり、まだ寝ていた。
部屋が入り口の隣にあるため、教会の場所までは五十メートル以内にある。外に出たりしなければ首輪が起動することもないだろう。
せっかく首輪をはずすための素材を手に入れたのに、しくじって首が飛びましたは笑えない。
ドアを開けて、リエルを探しに祭壇があった入り口の前まで向かうと。
「そんなものは知りません!」
リエルが叫ぶように否定する声が聞こえてきた。
急いで入り口まで向かうとリエルが入り口で誰かと話していた。
銀の鎧に身を包んだ二人組だった。一人は背中に矢筒を背負った、銀髪の長い髪の女性。そしてもう一人は性格が顔にでたような鋭い目つきの男。
胸部の鎧には見知ったエンブレムが付いていた。
盾の後ろに交差した剣があり、盾に獣が引っ掻き傷をつけたようなエンブレム。
「あ! エブサレムとカレンじゃないか」
二人の顔を見て思わず名前を呼んでしまった。名前を呼ばれた二人の視線が俺に映ると女性は嬉しそうな表情浮かべ、男性の方は嫌そうな表情を浮かべた。
「先輩お久しぶりです!」
「げぇ!? ザインガルさんじゃないですか。なんでここにいるんですかぁ?」
嬉しそうに反応した女性はカレン・スペード。王国にいた時によく指導した女騎士だ。剣の太刀筋もよく弓も扱える。周りの人間関係もよく慕われている。
嫌そうな反応を示したのはエブサレム・クローバー。 武器はなんでも使いこなせるが周りと関係を持とうとせず、プライドが高いせいか周りを見下している節がある。実際に王国にいた頃からこういうふうに嫌そうな顔を俺に向けてくる。
「なんでって旅の道中にここに泊まっただけだよ。お前らこそなんでここにいるんだ?」
入り口前まで行き、リエルの前に出るように立つとエブサレムはより一層眉間に皺を寄せた。
「私たちこの辺で起きた事件の調査をしてるんです」
「おい、カレン!」
「いいじゃない、エブサレム。ザインガル先輩にも手伝ってもらったほうが早く終わるわよ」
「事件ってなんの?」
「この近くの街で宝石が盗まれたんです。野盗の仕業で犯人の一人を捕まえたんですが、盗んだ宝石をアヒルに飲ませたそうなんです」
「アヒル?」
「それでそのアヒルを探してたらこの教会のシスターがそのアヒルを買っていたという情報を入手したんです」
カレンの話を聴いてリエルを見ると、リエルは頬に手を当てていた。
「・・・だってアヒル肉が食べたくなっちゃつて」
「アヒル肉が食べたくなった? ん? あれ聖典は?」
聖典を持ってる者は生き物の殺生や攻撃はできないはず、ましてや生き物を殺して食べることなんてできないはず。
「聖典ならこの前燃えるゴミと一緒に捨てました。新鮮なアヒルのお肉が食べたくて」
「えぇ・・・」
昨日の態度からして少しおかしいと思っていたが、シスターが聖典を捨てるって、それもう神への冒涜なのでは。
思ったことを吐き出さないように心に押し込めた。
「で、そのアヒルはどこに?」
「外の家畜小屋にいます」
「じゃあそれ持ってかせて、カレン達には帰ってもらおう」
「えぇー! せっかく買ったのにぃー!」
「シスターが聖典捨ててまで生き物の肉食べちゃダメでしょ!!」
思わず飲み込んだ言葉が出てしまった。
「アヒルは回収します。それよりザインガルさん」
エブサレムは親指で後ろを指差した。後ろには特に何もない教会の庭が広がっている。
「久しぶりに手合わせしませんか?」
エブサレムは腰につけた剣を撫でながら外に出ろとハンドサインしてきた。
手合わせするのはいいが、今はまずい。リーフも寝てるし外に出た瞬間首が飛んで血が噴き出す噴水が爆誕してしまう。
「いや・・・今はちょっと」
「逃げるんですか?」
エブサレムは断られたことに腹を立てたのか眉間にさらに皺を寄せ睨みつけてきた。
王国にいた時から暇さえあれば勝負を吹っかけてくるし、血の気が多い奴だなとは思っていたが久しぶりにあっても変わらないとは。
「エブサレム! 先輩だって暇じゃないんだから無理言わないの」
「いやいいんだ、カレン。ちょつと連れを起こして準備してからにさせてくれ」
「すいません先輩。エブサレムったら王国から先輩がいなくなってから目標がなくなってひたすら鍛錬してたので先輩に見てもらいたいんだと思います」
「お、おい! カレン!」
エブサレムは顔を赤くしてカレンに突っかかった。
その様子を見て、俺の口角は自然と釣り上がった。
ニヤニヤしている俺を見て、エブサレムは犬のように俺にも突っかかってくる。
「なんですか! 悪いですか! 周りが弱すぎてザインガルさんぐらいしか相手にならないんですよ」
「いや〜別に〜」
「本当にムカつく人だな! あんたって人は!」
エブサレムを揶揄っていると教会に庭に数十人の男達がやってきた。
「誰だ? お前ら」
エブサレムが不機嫌そうに振り返ると男達は剣やメイスなど武器を持っていた。
「野盗のようですね。どうやら私たちと同じで情報を掴んでここに来たようです」
カレンは腰下げた二本の剣を抜刀し構えると、エブサレムも剣を抜いた。
「手合わせはもういいです、ザインガルさん。そこで見ててください。僕の実力を」
「私も見ててくださいね」
二人は突進するように野盗達に向かっていくと野盗達と戦い始めた。
カレンは二本の剣を振り回しながら野盗達を薙ぎ倒す。まるで踊るように敵を斬り倒す姿は美しくもあり、返り血を浴びても笑顔を崩さない彼女を不気味にも見える。
エブサレムは確実に剣を振り下ろし、的確に敵を倒していく。基本の型を崩さずに正確に敵を捌いていく。まるで剣の達人を見ているような気分になる。
「ザインガル先輩に私の武器を見せてあげますよ」
カレンはそう言うと二本の剣の柄頭を合わせた。すると二本の剣は一つにつながり、弓のような形態になった。
カレンが矢をその弓につがえると、細い光のような弦が生成された。
「ジャック・ハンドレー作、牙弓の威力とくとご覧あれ」
カレンが矢を放つと、野盗の身体を矢が貫通していく。まるで針が糸を通していくように野党の身体を何人貫いても、その威力は落ちることを知らない。
「カレン・・・武器っていうのは見せつけるものじゃない」
「ならエブサレムも使えばいいじゃん」
「はぁ・・・わかったよ」
エブサレムの剣は赤い刀身に霧のような黒い斑点のような物がついていた。エブサレムは剣の刀身をなぞるとように触るとキィーンという甲高い音が響いた。
「このガキが調子のんな!」
野盗の一人がエブサレムの脳天目掛けてメイスを叩きつけた。
野盗の放った一撃は確実にエブサレムを捉えていた。
しかし、メイスはエブサレムの身体をすり抜け、地面に叩きつけられた。
攻撃を受けたはずのエブサレムも蜃気楼のように歪み、メイスが身体からすり抜けると元の形に戻った。
エブサレムは機嫌が悪そうに、眉間に皺を寄せ野盗を睨みつけると先ほどメイスをすり抜けた身体で野盗を斬りつけた。
「ぐはっ!」
野盗何が起こったかもわからず、地面に倒れ伏した。
「モニカ・シャリオン作、イリュージョンソード。正直僕はこの能力が嫌いだ」
そうこうしているうちに野盗は全て倒されていた。ものの数分しかかからなかった。
王国にいた時よりも確実に二人は強くなっている。
「終わりましたね」
「意外と簡単だったね」
カレンとエブサレムが教会の入り口前まで戻ると、リエルはいつのまにかアヒルを持ってきていた。
「どうぞ」
リエルがアヒルをカレンに渡すとカレンは返り血が大量についた顔で笑顔を返した。
「ありがとう。まぁこれに懲りたら聖典捨てないでね」
「・・・はい」
反省したのか、カレンとエブサレムの強さに恐れ慄いたのかリエルはしょんぼりしていた。
「じゃあ私たちはこれで」
「待ってカレン。ザインガルさん勝負は預けます。また会った時に」
「あぁ楽しみにしてるよ」
「ところでルインさんには会いましたか」
「あぁ会ったよ。一月前ぐらいかな?」
「そうですか。ガンドランドの討伐してしばらくしてから毎日暗い顔をしていたので何かあったのかと」
特にガンドランドを倒した後、ルインが落ち込んでいる様子はなかったはずだが。
王国に戻らないと言ったことが相当ショックだったのだろうか。
「では私達はこれで。さぁいくよエブサレム」
「引っ張るな。カレン!」
カレンはエブサレムの首根っこを掴み、引っ張るように連れて行った。
俺とリエルはその姿を見送った。
そして教会の庭には野盗の屍が転がったままだった。
あいつら片付け押し付けて帰りやがった。
リエルは悩んだように腕を組んで、唸っている。
神に仕える身として、目の前の屍達をどう処理するか困っているのか。
「聖典・・・まだ回収できるでしょうか?」
「聖典よりまず、目の前のことをどうにかしようか?」
その後リーフを起こし、庭の屍達を丁重に葬った後、ゴミを漁り聖典を発見するのであった。




