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拘束奴隷と自由な傭兵  作者: 内山スク


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16/22

聖女の軌跡

 二日後。傷の痛みが引き、傷がふさがったのを確認すると、リーフと俺は再び旅を再開した。

 目指すはヒートリア。ヒートリアにいるモニカの元に行き首輪を外す鍵を作ってもらう。

 道を歩き続けていると教会が見えてきた。

 古い教会なのか屋根の石レンガが剥がれ今にも落ちてきそうだ。

 もう日も暮れるし、教会で一泊させてもらうのもいいかもしれない。

 俺も本調子ではないし、リーフ一人に負担をかけるのも申し訳ない。

 教会に辿り着くと、ドアをノックした。


「すいませーん。どなたかいらしゃいますかぁ?」


 ノックしてゆっくりドアを開けるとギィという軋んだ木の音共にドアが開いた。

 中には大量に並んだ長椅子と火がともった蝋燭ろうそくならんだ祭壇さいだんがあった。

 部屋の奥には女性的にも男性的にも見える天使の像が飾られていた。

 蝋燭ろうそくともっていることから人がいるのは間違いないようだが返事が返ってこない。


「留守なのかな?」


 俺とリーフは教会の中に入るとドアをそっと閉めた。部屋の奥の像が気になり、近づいて眺める。

 別に神への信仰だとかに興味はあるわけではない。

 ただ像がほこり一つ付いてないほど手入れされており、窓から入る日が像を神秘的に見せていた。

 像を眺めていると視界のはしに何が映った。

 祭壇さいだんの裏に黒いシスター服を着た女性が倒れていた。


「おい、あんた大丈夫か!?」


 女性の身体に外傷はなく、誰かと争った形跡けいせきもない。

 必死にシスターの身体を揺さぶるとシスターは眠そうに目をこすり始めた。


「ふわぁ〜あぁ、おはようございます。お客様ですか?」


 ただ寝てただけのようだ。

 シスターは腕を伸ばしストレッチをすると、眠そうな眼をこちらに向けた。


「私はこの教会を取り仕切るシスター。リエル・カルステアと申します」


 リエルは頭をペコリと下げてお辞儀したため、俺とリーフも頭を下げた。


「ザインガルと申します。こちらはリーフです」


 リーフがお辞儀をするとリエルも頭を下げてお辞儀した。


「で?どのようなご要件でしょうか」


「一晩この教会に泊めて頂けないでしょうか?」


 お願いを聴くとリエルは握り拳を作り親指を立ててこちらに向けた。


「いいですよ」


 こころよ承諾しょうだくしてくれたのはいいが、シスターに親指を立てて承諾されたのは始めてだ。


「ここにいるシスターはリエルさん一人なのですか?」


「えぇここは私一人で管理しています。元々ここは聖女様がいた教会なのですが・・・」


「聖女?」


「えぇ・・・ここは聖女キルーラ様がられた教会なのです」


「・・・キルーラ」


 その名前を思わず口にした後、ルインから聴いた話を思い出した。

 聖女キルーラの忘れ形見。それがわかるかもしれない。

 ふと後ろに違和感を感じた。振り向くとリーフが俺の服のすそを掴んでいた。

 不安なのか怯えているのかはわからないが服の裾を掴み顔を下に向けていた。

 どうしたのかはわからないがキルーラの名前を聴いてから怯えているように見えた。


「キルーラ様について何か知っているのですか?私が小さい頃に亡くなられたので、ぜひキルーラ様のお話をうかがいたいです」


 目の前を見るとリエルが目をキラキラと輝かせてこちらを見つめていた。


「残念ながら俺もその時は子供でね。知っていることは奇跡を起こしたことと、その最後だけだ」


 言葉を聴いてリエルはしょんぼりした顔をした。

 それと同時に服の裾にかかっていた重みが離れた。リーフが服の裾から手を離したのだ。


「そうですか・・・キルーラのお話を聴けると思ったのですが」


「気になっていたんだけど、キルーラの起こした奇跡って何を起こしたんだ?」


 リエルに質問すると再び目を輝かせてこちらを見つめると早口で話し始めた。


「聖女キルーラ様は争いの絶えない村に突如として舞い降りました。そして祈りを捧げ続けると村の争いは無くなったと聴きます」


「へぇー争いの原因はなんだったの?」


「原因は貴族による物資の搾取さくしゅによる食料難が原因だったそうです。キルーラ様はその村にどこから持ってきたかはわかりませんが食料を配り続けたとか」


 聖女の祈りが届いたのか、それとも聖女の献身的けんしんてきな行いが争いを止めたのかわからないが一つの争いを止め村を救ったのだろう。


「それだけではありません。キルーラ様が祈った戦地は必ず争いが止まるのです」


「争いが必ず止まる?」


「はい、そのことからキルーラ様は聖女として名をとどろかせたのです」


 はたして祈りを捧げただけで争いがおさまるのか。戦場にいた身からするととても信じられない。

 王国にいた時に聖女キルーラの名は何度か耳にしたことがあるが、争いが止まったという話しを聴いたことはない。


「それを怪しんだ者達がキルーラ様をねたみ、ひがみ、キルーラ様を捕えた後、火刑に処したのです」


 戦争でもうかる者や、戦いを望む者もいる。そいつらにとって聖女キルーラは邪魔な存在だったのだろう。


「燃やされた後からは骨の一本も見つからなかったそうです。教会者はまだキルーラ様は生きておられるという者や、神の元に送られたのだという者がいます」


「リエルさんはどちらだと考えているのですか?」


 質問を聴くとリエルはあごに手を当て考えるとゆっくりと口を開いた。


「私は大切な人の元へと向かったのだと思います。その身体を単に召され、魂だけとなって・・・」


 リエルはけがれない眼でこちらに答えを返した。


「離しすぎましたね。ささっ宿泊なされるならお部屋にご案内します」


 クレアはドアを開けると部屋に案内するために歩き始めた。


「ザインガル様。教会に泊まって大丈夫でしょうか?刺客しかくやモンスターに襲われるかもしれませんしクレア様が心配です」


「まぁそれはクレアも覚悟の上だろう」


 俺の言葉を聴いてリーフはキョトンとした表情を浮かべた。


「シスターは大体は聖典を持ってる。その聖典に書かれた内容に生物の殺生せっしょうも攻撃も行いませんって決まり書かれている。だからクレアもわかってるはずさ」


「ですがそれではクレア様は殺されてしまいますよ」


「大丈夫、聖典の決まりを守っていれば聖典を保持しているものは傷つけることはできない。神の加護ってやつかな」


 正直神とかは信じていないけど、こればかりは事実だから仕方ない。

 能力の詳細や仕組みはわからないが恐らく魔装具まそうぐか、モンスターの呪いを利用しているのだろう。


「それより、早く休もうぜリーフ」


 クレアの後をついていこうとするが後ろからリーフの足音が聞こえてこない。振り返ってみるとリーフは、何か難しいことを考えるような表情をして立ち尽くしていた。


「リーフ?」


「・・・ザインガル様はキルーラ様の話を聴いてどう思いましたか?」


「・・・会ったことないからよく知らないが、人のために尽くした人間だってことはわかったよ」


「・・・そうですか」


 リーフはそう一言言い残すと俺の横を通って、リエルの後を追っていた。

 その晩リーフとは一言も話すことはなかった。

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