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拘束奴隷と自由な傭兵  作者: 内山スク


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15/23

理解したくない痛み

 ラミアメイルを倒してから二日後。

 俺は宿やどのベッドで横になっていた。腹に何重にも包帯を巻かれて。

 ラミアメイルを倒した後、村の医者に傷を見せたら手術しゅじゅつが必要だとか言われて腹をこじけられた。

 臓器ぞうきに刺さった骨を抜き、臓器ぞうき縫合ほうごうした後、傷をわれた。その後医者から三日間の安静を言い渡された。

 正直ラミアメイルの一撃を喰らった時よりも、医者にやられた手術のほうが痛かった。

 医者が手術中「あ、やべ」と言葉をらした時には冷や汗が止まらなかった。

 手術が終わってからは特に問題はなかった。傷口から漏れていた血も止まったし体調も変わらない。

 動くと腹の傷は痛いが昨日よりはおさまっている。

 リーフは宿に帰った後、ソファで眠った後窓の外を警戒するように見つめていた。


「なぁリーフ少しは休んだらどうだ? 誰も襲ってきたりしないと思うけど」


「いえ・・・警戒に越したことはないので」


 何故かリーフはピリピリしていた。何者かに狙われているような様子を見せている。

 最近暗殺者や刺客も来ないし、俺が負傷したタイミングで襲ってこない時点で近くにはいないと思うが。

 窓の外を見るリーフの横顔は真剣な表情をしているが、ルビーのようなひとみらいでいるように見えた。

 まるで水面すいめんに映ったように瞳の奥には悲しみを隠しているように見えた。

 一昨日のことを聴いてみたい気持ちはあった。

 だけどリーフの悲しい顔を見るのが嫌だった。もし彼女の悲しい顔を見ることになるのなら・・・


「しかし、ラミアメイルの素材が取れてよかったな」


 気持ちを振り払うように、話題をリーフに振る。

 リーフは視線を離し、こちらを向くと優しく笑みを見せた。


「はい・・・モニカ様も喜ぶますね」


「そうだな。やっとこの首輪も外れるしな」


 首元についた首輪を触れる。

 この首輪にもずいぶんと苦しめられたものだ。

 冷たい鉄のような感触と硬さが手に伝わってくると同時に胸にとげが刺さったような痛みがあった。

 自身の胸元に手を当てると、痛みは治っていた。


「ザインガル様?」


 リーフがキョトンとした顔をこちらに向けてきている。

 恐らく腹の傷の痛みが胸にまで走ってきたのだろう。


「いや・・・なんでもない。それよりこの首輪が外れたらリーフは何がしたい」


「・・・まだ決めておりません」


 リーフは窓の外を再び眺め始めた。

 この旅が始まってリーフも変わり、口数も増えたがまだ目的は決まっていないようだった。


「まぁ、まだ時間はあるしゆっくり探そう」


 言葉を聴くとリーフは目を閉じた。そして目を開けると美しい赤い瞳と共に眩しい笑みをこちらに向けてくる。


「・・・はい」


 その顔が記憶に焼き付いて忘れられなかった。

 再び胸の痛みが襲ってくるが、それがなんなのかはわからない。

 いやわかりたくないのかもしれない。それを認めてしまったら、考えてしまったら彼女を縛ってしまう。

 その怪しくも美しい瞳に――

 その太陽のような笑顔に――

 その人を想う健気な心に――

 彼女に惹かれてしまっているこの想いを理解したくなかった。


「明後日にはこの村を出るのですか?」


 リーフの言葉に我に変えると、誤魔化すように作り笑いを浮かべた。


「え?あ、あぁまたヒートリアに戻るよ」


 リーフは首を傾げているが焦っていることを不思議に思っているのだろうか。


「あぁそれより早く動きたいなぁ〜」


「大丈夫ですよ。明後日には動けるようになりますので」


 身体を伸ばして、話題を逸らす俺にリーフはクスクスと笑いながら返事を返した。

 後は首輪を外す鍵を作ってもらうだけだ。

 しかし、首輪を外した後のことをこの時考えていなかった。

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