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〈第12話〉大人が得意げに披露してくるうんちくの元ネタはだいたいマスターキートン

「おもろかった?」

 熊谷のおじさん(正確には親父さんのいとこのなんとか?)が聞いてくる。熊谷がそのまま大人になったら、こんな感じになるのかもしれない。僕はそんなことを考えながら、

「はい。とても勉強になりました。特に新喜劇はたくさん笑いました」

 と答えた。すると、おじさんはとてもうれしそうにほほえんだ。

 新喜劇が終わった後、「おれに任せとけ」と言う熊谷について僕たち四人は劇場の裏口あたりをあっちへ行ったり、こっちへ行ったりうろうろした。

「話は通ってるはずです」

 と言って警備員さんに裏口を通してもらったまではよかったものの、階段を上ったり降りたり、舞台袖に出てきてみたり。でもステージ横から観客席を見上げるようにしてながめたときには「こっちからは、こんなふうに見えるんだ」とちょっと興奮した。

「ジブンら何してんねん、そんなとこで」

 非常階段の踊り場で熊谷のおじさんに見つけてもらうまでにさんざん迷って疲れ果てていた僕たちは、熊谷の「おれの力で楽屋につれていったる。芸人たちも紹介したるからな」という約束も忘れ、おじさんに「ほんなら茶でもしばきにいこか」と誘われると全員すぐに「はい!」と返事していた。

 喫茶店でバナナジュースを飲みながら、おじさんが、

「どんなところが、おもろかった?」と重ねて聞いてくる。

「ぜ、ぜ、ぜ、全部おもしろかったです」

 緊張した様子のブロッコリー先輩が答えると、おじさんはまたすごくうれしそうに「ほんま?」と返事した。

「わたしたち、今度の陽月祭で寸劇やるんですう」

「ほんまか?ええなあ。懐かしいなあ」

 おじさんは何かを思い出すように天井を見つめ、少し古くなった茶色いソファ席の背もたれに体をゆっくり沈み込ませた。

 わいわいがやがやとした店の中で、清花のバナナジュースがズズズズッ!という音を立ててなくなっていく。

「なんで全員バナナジュース頼んだんだよ。おれもだけど」

 僕が言うと、おじさんは笑いながら「ひょっとしてみんな遠慮したんちゃう?」と少しバツが悪そうな表情を見せた。


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