〈第13話〉人のDARK HISTORYを無闇に暴くのはだいぶ危険
熊谷もちょっと居心地が悪そうだ。
「ジブンら、好きなもん頼んだらよかったのに。おじさんは生活は楽ではないけど、貧乏ではないねんで。ま、おれも気使ってバナナジュースにしたんやけど」
僕らはおとといから、おじさんの家に泊めてもらっている。部屋が二つあって、そのうちの一つにおじさんと男子三人が雑魚寝。もう一つの部屋の、普段はおじさんが使っているベッドで清花が寝ている。一人暮らしをするには広すぎるんじゃないかなと思うけど、おじさんは「芸人は無理して、ええ家に住まなあかんねん。高い家賃払うために自分を追い込んで仕事頑張んねん」と言っていた。
熊谷によると、おじさんはもともと芸人だったんだけど、テレビ番組の企画を考えたりする放送作家という仕事が忙しくなってきて、今は主にそちらでお金を稼いでいるらしい。だけど芸人として売れることもまだあきらめていないそうだ。熊谷が前に、大勢の人をいっぺんに笑わすのは簡単やないねんで、と言っていたのは、おじさんの苦労を知っていたからなのかも。
「実は今日の新喜劇な、おじさんが台本書いてんで」
「え?そうなん?」
「すごいですう」
「お、お、おじさんは才能がありますね」
次々と飛び出る賛辞の言葉を聞いて、おじさんはとても満足そうだ。
「おじさんはどうしてこの仕事をしようと思ったんですか」
僕は思いきって質問してみた。
「そうやなあ。なんでやろ。人を笑わせてるときって、ものごっつう最高の気分やからかな。ずっとそんな気分でいたいと思ったんかな」
照れくさそうに笑った後、おじさんは、
「実はおっちゃんも昔、陽月祭で寸劇やってんで。演劇部やったんや。部室のどっかにまだ八ミリビデオのテープ残ってんちゃうかな」
それからおじさんは、あわてて「ビデオ見ろっていう意味ちゃうからな。いや、ほんまに。見んでええから。フリちゃうで」とつけ加えた。
僕らはみんなでバナナジュースをズズズズッと飲み干して「年希帰ったら、絶対ビデオ見てみよう」と言って、おじさんをさらにあわてさせた。




