第二話 銃
軍の募集係は、メアリーの手を見て頷いた。手のひらの皮が厚くなっていることに気づいたようだった。
「働けそうだな」
名を聞かれ、メアリーはいつもの男の名を名乗った。もう何度も名乗ってきた名前だった。自分の名のように口から出た。
*
訓練は容赦がなかった。
銃を持たされ、構え方を叩き込まれる。腕が上がらなくなるまで走らされる。夜になれば筋肉が痛みで震えた。
隣に並んだ男が、初めての夜、小さな声で言った。
「国のために戦うんだ」
メアリーは何も答えなかった。国のためという言葉が、自分の中でどこにも繋がらなかった。ただ、明日も飯が出るということだけが確かだった。
*
初めての戦場は、想像していたものと違った。
英雄的な瞬間はどこにもなかった。泥の中で伏せ、耳をつんざく音に体を縮め、隣にいた男が声もなく倒れるのを見た。名前も知らない男だった。
戦いが終わると、生き残った者たちは黙って隊列を組み直した。誰も勝利を口にしなかった。
その夜、メアリーは支給された飯を、いつもと同じように食べた。喉を通っていくことに、自分でも驚いた。
――怖くなかったわけではない。ただ、体が食べることをやめなかっただけだった。
食べ終えて、銃を膝の上に置いたまま、メアリーはしばらくそれを見ていた。重かった。最初に持たされた日より、ずっと重く感じた。
第二話 完




