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誰があんたを好きだって?  作者: 伽藍


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2/7

2nd

 交流が復活した日から、わたしはたまに亮とメッセージのやりとりをするようになった。

 というか、けっこう頻繁にやりとりをしている。週に三日とか、四日。よっぽど仲の良い友達とも週に一回連絡を取れば良いほうのわたしにしてみれば、ずいぶんな頻度だった。


 わたしは家から電車で数駅先の書店で働いている。お昼の休憩時間にスマホを確認すれば、案の定、亮からのメッセージが入っている。


『○○っていつ入荷するっけ』

『あーっと、明後日だね。予約したの?』

『おー、俺の地元の本屋でな』


 何気ない調子で返された言葉に、わたしはそっと息を吐き出した。彼のいう『地元』は、わたしとは縁のない場所だ。


 中学の同級生なのだから当然のことだけれど、子どもの頃、わたしと亮は同じ街に住んでいた。


 生活圏も同じだったし、ちょっと大きな街に出ようと思ったら絶対に同じ駅を使わなきゃいけなかった。普段使いの本屋なんて一件しかなかったし、友人たちと集まるファミレスも数件の候補しかなかった。

 『いつもの場所』も、友人たちと計画して繰り出す『ちょっと遠くへお出かけ』も、だいたい行き先は一緒だ。お店の名前を出せばお互いに判るし、話すときに困ることなんてなかった。


 けれど、今となってはそれでは話が通じない。亮の言っている『地元の本屋』がどこにあるお店なのかをわたしは知らないし、どんなジャンルの本を扱っているのか、どんなレイアウトをしているのかもぱっと思い描くことはできない。


 亮は就職を機に、都内にある職場の近くに引っ越した。電車で一時間かかる街は、地元に残ったわたしからすればとんでもなく遠い。

 それは当たり前の話で、当たり前の話なのに、なぜか不思議な気がした。だって中学の頃、『近所の公園』といえば大型ショッピングセンター裏手の公園しかなかったのに。


 わたしもそんなに連絡を返す方ではないけれど相手はそれ以上に気紛れだから、簡単にやりとりが途切れてしまうこともある。どう返そうかと、わたしは首を捻った。


『なんだよー、わたしのお店に買いに来てくれないの?』

『いやなんでだよ! 本一冊買いにそっちまで行けってか』

『里帰りついでに』

『明後日水曜じゃねえか。なら土日に行くわ。いや行かねーけど』

『従業員割って、知ってる……?』

『なにそれ魅力的』


 亮とのやりとりはいつもこんな感じだ。くだらなくて、何の意味もない。けれど中学の頃に戻ったようなやりとりがどうにも楽しくて、続けてしまう。

 相手が何を考えているのかは、いまいち判らないけれど。延々と料理のレシピが送りつけられてきたときは『作れと?』ってなりましたよね。


『あー、判った。よし判った。お前んとこで○○先生のサイン会開いてくれよ。そしたら行くわー行きますわー絶対行きますわー』

『無茶をおっしゃる!』


 しがない地方の一書店員に何を求めているのか。

 思わず画面を見て笑っていると、休憩室の扉が開く音がした。振り返ると、バイト仲間が休憩室に入ってくるところだった。


「ゆきちゃん、交代ー。よろしく」

「はいはい、行きますよー」


 休憩室に置きっ放しの鞄にスマホを放り込む直前に、思いついてこう打ち込んだ。


『そのうちご飯行こうよ。わたしが東京で遊ぶついでにでも』

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