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黒瀬部長は部下を溺愛したい  作者: 桐生桜


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8/15

CASE:8 何もなかった……はず

 翌日。


(……うーん、頭が痛い……)


 目覚めた瞬間、軽い二日酔いと共に、ふとよぎる昨晩の帰り道。


(そういえば、黒瀬部長が送ってくれたんだっけ……)


 ベンチに座っていたことまではなんとなく覚えている。でも……その後、どうなったっけ……?


(……いや、でもまぁ、特に何もなかった……はず)


 そんなモヤモヤした気持ちを引きずったまま、会社へ。昼休み、給湯室でばったり慧と遭遇。


「白石、体調どうだ?」

「えっ、あっ……えっと、はい! 元気です! あの、昨日は……すみませんでした……」

「謝らなくていい。いいもん見れたし」

「……え、いいもん?!」

「うん。初めて聞いた」

「……え? な、なにか言ってました……私?」

「ふっ……」


 その笑い方が、明らかに何かを知っている余裕のある男のそれで……莉央の心臓が、バクンッと跳ねる。


「『最初は怖かったけど』って」

「!!?」

「『すっごく優しくて、ちゃんと人を見てて……』って」

「わああああ!! ちょ、ちょっと待ってくださいそれ以上は!!」


 莉央は耳まで真っ赤。動揺しながらお茶を入れようとして、スプーンを落とす。


「危ない」


 さっと拾ってくれる慧。その指先が、莉央の手に軽く触れる。


「……なぁ、白石」

「は、はいっ……!」


 緊張の面持ちをした莉央に慧は……。


「………いや、なんでもない。次のプレゼン、頑張ろうな」

「はい! 頑張ります!」


To be continued


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