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黒瀬部長は部下を溺愛したい  作者: 桐生桜


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CASE:7 お前……酔ってるな

 その日は、部署の飲み会。慧はいつものように、静かにグラスを傾けていただけなのに……。女性社員たちがこぞって席を替わりながら話しかけてくる。


「部長って彼女いないんですか?」

「え、じゃあ今フリー? すっごい意外!」

「休日は何してるんですか? 今度よかったら……」


(……またかぁ……)


 莉央は、笑顔で対応する慧を横目に、黙々とビールを煽っていた。


(わかってる。部長は悪くない。この状況はいつものことだけど……でも、やだ……)


 グラスを置く音が、少しだけ強くなった。気づけば、顔がぽーっと熱くて、思考もふわふわ。そんな莉央を見て、慧が声をかける。


「白石、飲み過ぎだ」

「んー……やだ。まだ飲む」

「もう十分飲んだだろ。ふらふらしてる」

「してないもん……っ」

「いいから帰るぞ」


 なんとか連れ出された帰り道。酔った莉央は千鳥足で、明らかに様子がおかしい。


「少しここで休もう」


 近くの公園のベンチに、そっと座らせてくれる。


「黒瀬部長って……ほんと優しいですよね……」

「そうか? 普通だろ」

「いえ……優しいですよ……」

「お前はお酒弱いくせに、無理するな」

「だって……部長がモテるからぁ……」

「……は?」

「いっつもモテてて……顔もかっこいいし、仕事もできるし、みんな好きになっちゃうの当たり前じゃないですかぁ……」

「お前……酔ってるな」


 もう自分が何を言いたいのか分からなくなってきた。


「最初……怖かったんです。部長のこと。目つきとか、無口だし厳しいし……でも」


 少し潤んだ瞳で、慧を見上げる。


「でも……ちゃんと知ったら……すっごく優しくて、ちゃんと人を見てて……すごいなって思ったんです。自分にも他人にも厳しいのに、嫌われないの、凄いです」

「………」

「言ったことは必ずやり遂げるし……その、なんか……」

「…………」


 次の言葉を待つ慧が息を飲んだその瞬間……。


「……すごく……だから………私………」


 コテン。


「……おい」


 莉央の頭が、慧の肩にトンと預けられている。すやすや寝息を立てる莉央の顔は、赤く染まっていて……。


「……ここで寝るなよ」


 小さく笑って、慧はそっと莉央の髪を撫でた。


To be continued


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