CASE:16 今夜は送るだけにする
恋人になって初めての休日。待ち合わせ場所に現れた慧は、いつものスーツじゃなくて、ゆるめのシャツで落ち着いた私服姿。その雰囲気はやっぱりかっこいいが満載。
「……待たせたか?」
「いえ……慧さん、なんか……かっこよすぎます」
「お前がそう言うのなら、今日の服、正解だな」
自然と手を差し出されて、莉央はそっと指を絡める。ドキドキが止まらないのは、今日が初めてのデートだから。そして、「彼氏」としての慧に、初めて触れるから。
「行きたいとこ、いくつか考えたんだけど……今日はお前が主役な。どこでも連れてく」
「え、そんな……」
「彼女には甘いんだよ、俺は」
そのまま人気のカフェに行ったり、路地裏の雑貨屋を一緒に覗いたり、ときどき人目を気にして手を握ったり離したり……。でも慧は、手を離すたびに不満げな顔をして……。
「正直な話、早くどこかふたりきりになりたくてたまらないんだけど」
「えっ……」
「お前がかわいすぎて、理性も休みたがってる」
「っ……!」
(心臓もたない……)
そのまま夜をむかえ夜景の見えるレストランで。ディナーの後……莉央の頬にそっとキスを落として、慧が囁く。
「……こういうとこ来ると、将来のこと考えたくなるな」
「将来……?」
「ずっと、お前と並んで歩いてたい。次は、家で一緒にごはん作って、ソファで映画見て、ベッドでお前を抱いて寝たい」
「……慧さん……」
「今夜は送るだけにする。だけど……」
キス。今度は唇に、深く。初めてじゃないのに、また心が溶けそうになる。
「帰ったらちゃんと眠れよ。俺に会って、疲れたって思わせたくない」
「……はい」
「じゃ、帰ろうか」
その声も、ぬくもりも、莉央の胸にじんわり広がって……恋人としての初デートは、とろけるほど、やさしい時間だった。
To be continued




