次の家
祖母との別居を決め
両親が選んだ家は
借家だけど庭付きの
広い一軒家
同じ作りの家が6件ほど固まった集落
玄関が吹き抜けで
広くて
寒くて
しずか
ここで過ごした小6、中1の2年間は
自由で楽しかったけど
最悪な気持ちで終わりを迎える場所
近くに集荷場があって
そこでひとりで仮面ライダーごっこをしたり
男子何人かと
裏の千曲川で魚を釣って
木の枝に刺して塩焼きにして食べたり
ここでの時間ほど
田舎ならではだったことはありません
たくさんの緑と自然に囲まれて
たくさん体と心を動かして
私のこの健康な体は
学童期に環境に恵まれたからこそだと思います
放置されているようで
守られているような
便利ではないのにとても豊か
初潮も来たり
身長もぐんと伸びたり
心身ともに成長しました
頭は良くなかったけど
運動神経は抜群だったし
感性が豊かでしなやかな子供だったと
自負しています
しかし
きっかけは何だったのか分からないけれど
両親のすれ違いが
大きな溝となり
気がつけば母は
父ではない男性と交際していたようで
それが父に知られることになり
夜
言い争いをすることが増えたと思ったら
ガタガタと喧嘩をしていたりして
小さい弟たちは震え
穏やかな日々が
少しずつ壊れ始めていることに気づきました
そして起こった事件
思い出そうとしても
心がざわざわするだけで
それが1日の出来事だったのか
何日間かのことだったのか
考えても全ては思い出せず
小間切れの記憶しかありません
必死で書いていますが
断片的です
壊れた掃除機
バキバキのギター
興奮が収まらない父と
痛みに堪えながら泣く母
ギターを振り上げる父を止めることができなかった私は
体の震えが止まりませんでした
診療所で全身打撲と診断され
手当てされボロボロで帰ってきた母
父が言ったのは確か
『お父さんは別れたくないと言ったけど
お母さんは別れてくださいと言った』
と言うことだったか…
遠い記憶で
もう正しいかどうか分かりません
大人になってその時の話を
母と振り返ることもありましたが
今も昔も
何が真実かなんてことは
子供である私達にとっては
まったく重要ではないのです
目の前で起こったことの衝撃と
未来への不安
中1の私は
その日からその家を出るまでに
何度も2階の窓から下を見下ろしました
『ここから落ちても死ねないよね…』
死ぬなんて勇気は
当時の自分にはありませんでした
それなのにまた私は
数日後に母から言われた一言に
また衝撃を受けるのです
衝撃すぎて
切なすぎて
それだけは今でもはっきりと
覚えています




