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軍歌で鼓舞する未来の遊園地

ようやく続きです·····すみません。不定期ですが、ぼちぼち頑張ります。

スピーカーから大音量で聞こえてくるのは、軍歌。


なめこ川が大学の裏にある洲原池(すはらいけ)の畔を散歩していると、そこの駐車場に右翼の宣伝カーが停車していた。


いつもそこに停まっているから、定期的にそこで休憩を取っているのかもしれない。

そして、うちの大学は教育大学なので、将来は教師になる生徒が断然多い。その教師の卵が将来日教組となり敵対すると思い狙っているのかも、しれない。

なんて考え出すともう邪推が止まらない。


『大日本国民党』

真っ黒に塗ったワゴン車に白と赤の文字が踊ってる。


「一応和風デザイン······だよね!」


なめこ川はスマホで宣伝カーの写真を4方向から撮った。造形コースのデザインの授業の課題で『和風デザインとは何か』のテーマに沿うかもしれない。

造形コースとは教育大学の中でも美術系のコースで、日本の伝統工芸について実技も理論からも学ぶ。和風については誰よりも知り尽くしているべきコースだと思う。


「うん、黒と赤!これってめちゃめちゃ、『和』カラー!」


もう課題ができてしまった。

ありがとう、さすが大日本。

なめこ川は手を合わせて拝んだ。


なめこ川は大学の裏地にある洲原池(すはらいけ)のアヒルボートが出払っていないかチェックする。

このボート乗り場は土日のみの運行で、大学はお休みの日だが、周辺のアパートに住んでいる大学生や、周辺の子連れのファミリーを中心に集客していた。

だけど、最近はカップルで乗ると別れてしまうという誠に悪しき噂が広まってから急激に利用者が減ってしまったらしい。

運行会社の人に聞いたらもうすぐ店をたたむかもと言っていた。

経営を心配したなめこ川はなるべくボートに乗るようにしている。

なめこ川はアヒルボートが大好きだから。

一人で乗っても寂しくもないし人目も気にならない。


「やあ今日も来たね、『じたばたアヒルちゃん』」


ここには手漕ぎボートが3つとアヒルボートが1つしかない。いつもアヒルボートを選択している奇妙な美少女のなめこ川はあっという間に従業員に顔を覚えられてしまった。

身体の小さななめこ川が一生懸命漕ぐ姿からだろうか、おかしなあだ名までつけられていた。


「アヒルちゃん残ってるよ。はい、どうぞ」


まだそれこそ大学生のように若い従業員は、ついと池の奥に停まっていたアヒルボートを引き寄せ、なめこ川の手を取ってアヒルボートに乗せてくれた。


「今日は暴走、しないでね」


好青年はニコッと笑った。

なめこ川はこくんと頷いた。


そしていざ、漕ぎ出した。


おりゃりゃりゃりゃりゃ·······


勢いある掛け声のトーンより、実際のスピードは数段落ちて進んでいく様子を、従業員は今日も温かく見守った。


それ以外にもなめこ川の運転には問題があった。

とにかく、コントロールが悪い。

何処へ漕ぎ出したのか、それはなめこ川にも分からなかった。


しばらくあてども無く洲原池(すはらいけ)を彷徨っていると一つの手漕ぎボートが見えた。ぶつかるといけないので、そっち方面は避けようとするが、そう思った途端にまるで引き寄せられるようにぐんっと近づいていく。


一直線にその手漕ぎボートへ向かったなめこ川のアヒルボートは、あまりに近づき過ぎて、なめこ川はいよいよ目を瞑った。


カツン······

スピードはないので、衝撃は少ない。

しかし、おかしいのだ。手漕ぎボートには人影がない。

なめこ川はボートを覗き込む。


舟底には背の高い男性が、倒れていた。

「あわわわ」


なめこ川は急いでエイヤッと手漕ぎボートへ乗り移った。


男は苦しそうに唸っているように見える。

ほっぺをペチペチ叩いても無駄だった。


「お〜い」

なめこ川のか細い呼びかけにも応じない。

応じないのに意識確認をするなめこ川。

「ここはどこですか?」

「··········」

「あなたの名前は?」

「··········」


もちろん応えられない。

これは、事件だろうか?

男がこのまま苦しそうなら事件。

男の顔が今から楽そうになればただの昼寝。


男はやっぱり苦しそうに唸っている。

なめこ川は人命救助を優先する。

アヒルボートをこのまま乗り捨てて、手漕ぎボートを自分で漕いで船着き場へ行こうと、両手にオールを握り締めた。


やってみたけれど、全く進まない。


程なくして、異変に気づいただろう従業員の男がこちらへ手漕ぎボートで向かっているのが確認できた。

めちゃくちゃ早い。


なめこ川は何もしてあげられなかったと思い、男の顔をもう一回触って頬をつねって尋ねた。


洲原(すはら)洲原(すはら)。ここは何処?あなたは誰?」


「··············ここは、近い未来、遊園地になる。

それをやるのは、俺、貧田光輝だ」


男は、

そう苦しそうに唸って、身体を起こした。

彼は寝ぼけているだけのただの大学生だった。


読んでいただきありがとうございます!


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