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いつまでも

わたしの日常に必要な身体の機能が完全に回復すると、日常が忙しくなった。


わたしが爵位を贈呈するためには色んな手続きが必要なのだ。


そのため約1ヶ月、家と皇宮を行き来するという目まぐるしい生活を送っていた。


「ハンナ」


「はい」


「大丈夫か?疲れが溜まって見える。本当は後半年は休んでいて欲しかったんだが…」


後半年の休暇は流石に長い。


わたしが歩けるようになるまで、そして体力が戻るまでに、実に半年の時間を要した。


なのでルーカスが言っているのは合わせて1年間も休暇をくれようとしている。


だけどもう半年休むのはルーカス以外の人にも迷惑でしかない。


ちなみに、わたしがやっと歩けるようになった時、ルーカスは喜んでくれた反面少し寂しそうだった。


理由を聞いてみると、『もうリハビリを理由にハンナとくっつけないじゃないか』と少し駄々をこねられた。


その言葉に対してわたしが『早くルーカスの隣を歩きたいのです』と言うと、無事ルーカスの機嫌は直った。


「後半年は休めませんそれに、これ以上休んでいれば今よりも仕事が増えたかもしれませんし、結果的に良かったです。」


「相変わらずよく働く妻だよハンナは」


少し拗ねてしまっただろうか。


確かに最近は忙しいのを理由にルーカスに構っていなかったような気がする。


決めた。わたしも一旦ルーカスで充電しよう。


「ルーカス様」


「ん?」


「充電です。」


「充電?」


わたしは、何をだ?と言いたそうなしっくり来ていないルーカスの手を引っ張ってソファに座らせた。


なんだか前にもこんなことあったような気がする。懐かしい。


確か、わたしが喉を痛めて話せなくなった時。あの時も行動で何をしたいか示していたなと懐かしくなった。


「ルーカス様、お膝の上に座っても良いですか?」


「?、もちろんだが」


わたしが何をしたいか分かっていないはずなのに、ルーカスは優しい笑みを浮かべる。


その姿が、声には出していないけど『おいで』と言われているようで、わたしは「失礼します」と言ってルーカスの顔が見える座り方。横向きに靴を脱いで座った。


そしてルーカスを抱きしめた。


「…!!!ハンナ…?」


戸惑いを隠せず驚いているルーカスに対して、わたしは構わず抱きしめ、顔ですりすりした。


「____っ…///…ハンナ、俺の理性を試しているのか?」


「充電です。明日も頑張る元気を今ルーカスから貰っているんです。」


わたしが説明すると、ルーカスもわたしの背中に腕を回して優しく抱きしめた。


ルーカスがする抱擁は酷く安心して落ち着くからとても好きだ。


「ならば俺にもくれ。ハンナで癒されたい。明日からまた頑張るから、今だけ…」


「もちろんですよ、ルーカス。」


それからしばらく、わたしたちはお互いにまた明日から頑張るための元気をもらって、いつものように一緒に寝た。


◇◇◇


あれからもう2ヶ月経った。


ついに、地獄のような忙しさだった3ヶ月を終えることができた。


そして今日は、爵位の授与式だ。


既存のドレスで良かったものを、ルーカスがせっかくの晴れ舞台だからと新調してくれた。


今は爵位授与で呼ばれるまで待機中だ。


「緊張しているか…?」


「分かりません…。分かりませんが、ルーカスがいるので大丈夫です。」


「…はぁ、そんなこと言われたら抱きしめてキスしたくなるけど、そんなことしたらハンナを仕立てたやつらに怒られるからな。やめておく。代わりに、戻ってきたらいっぱい抱きしめさせてくれよ?」


「わたしも、早くルーカス様に抱きしめてもらいたいです。」


すっかりルーカスには本心を言うことに慣れてしまった。こんなにスラスラと言えるのも、ルーカスが幸せな環境を作ってくれるからだ。


本当に彼にはどう恩を返せば良いのか分からない。


「失礼します。公爵夫人。お時間です。」


皇宮の使用人の1人が私に時間を知らせた。


「さあ、受け取ってこい。」


「はい。行ってきます。」


わたしは笑顔で言って壇上へと上がった。


上には皇帝もいて、私はその一歩後ろにいる。


貴族たちの歓声が上がった。


やっぱりまだ慣れない。罵声や貶す声が聞こえることはあっても歓声なんて経験したことなかったから。


それでも怖気付くことなく今日ここに来れたのは、ルーカスが隣にいたからだ。


壇上から貴族を一通り見ていると、ついに授与式が始まろうとしていた。


顔見知りであるからか、やっぱり然程緊張はない。


「これより、ハンナ・ガルシア公爵夫人の爵位授与式を始める。ハンナ・ガルシアは前へ。」


言われた通り前へ出て、皇帝の隣になった後、私と皇帝はお互いに向き合った。


「ハンナ・ガルシア。其方は今までの境遇をものともせず、曲がることなく生を送ってきた。そして、冷遇してきた家族を守るため自身を犠牲にするその勇敢さを讃えて、ハンナ・ガルシア公爵夫人に侯爵の位を譲渡する。」


「この上なき光栄。私、ハンナ・ガルシアはここで皇帝陛下に忠誠を誓います。」


忠誠を誓うということは、爵位の授与を受け入れるということだ。


ここでカーテシーをする。


そして貴族全員に対して一言。


ここまでが爵位授与に必要なこと。そこからは食べるなら話すなり、他の貴族たちでゆっくりしてもらう。


「みなさま、皇帝陛下の言う通り、私は今まであまり良い人生とは言えない人生を歩んで参りました。ですが今、こうして爵位を授与出来たこと、心から嬉しく思います。私は、貴族としての誇り…いつも頑張っている使用人たち、領地にいる民の人々への感謝を忘れずに、侯爵という位に責任を持っていきたいと思いますので、どうか皆様、よろしくお願い致します。」


「「「ウオォぉぉ〜〜〜!!!!!」」」


この反応を見る限り、わたしの言葉は何となく響いたようだ。多分意味は分かっていないだろうけど。


それで良い。この人たちは何も知らなくて良い。


そうやって今後も生きていくんだから。


けどいつか、自分がした行いは全て自分に帰ってくるものだ。


その日を、わたしは悪女だったので待つことにしようと思う。


「さて、侯爵の退場だ。皆拍手で送るように。この後は新しい侯爵閣下の誕生を祝して宴がある。皆楽しんでくれ。」


拍手がある程度鳴り止んだ時、皇帝陛下はそう言って早めにわたしを退出させてくれた。


わたしが退出するまで、拍手がなり止むことはことはなく、最後まで貴族たちの拍手がわたしの耳に届いた。


退出して、待機場に戻ると、そこにはルーカスがいた。


「…!、おかえりハンナ。聞いてたよ。…よく頑張ったな。」


「…っ!!」


やっぱりルーカスは分かっていた。


「ルーカス、…抱きしめてください。」


「もちろんだ。」


眉を下げながら、ルーカスはわたしを優しく抱きしめてくれた。


わたしは、貴族を許すことは出来ないと思う。そう実感した。


「頑張った。頑張ったよ。」


「…はい。…愛しています、ルーカス。これで貴方と、一緒に結婚生活を送れます。」


「…っ__!…不意打ちは良くないな。だが、俺も愛してる。一生幸せにしてやるから覚悟しておけ。」


爵位を貰うことを選んで、本当に良かったと思う。


これからも、ルーカスと暮らす幸せな日々を過ごすために必要なことだったから。



読んでくださりありがとうございました!

何話で完結させようか悩み中ですが、最後まで読んで頂けると幸いです!

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