これからもあなたと
爵位が授与されてからまた数ヶ月が過ぎた。
わたしもルーカスも結構忙しい生活を送っている。
今日はその中でもらえた貴重な休みの日。
わたしが部屋でゆったりとしていると、ノックの音がした。
「ハンナ。俺だ。入ってもいいか?」
声の主はわたしの大好きな人だ。
「もちろんです。お入りくださいルーカス。」
「休みの日に悪い。」
「大丈夫です。久しぶりにルーカスとゆっくり出来るんです。何も悪いことなどありません。」
ルーカスはわたしを休ませようと部屋に来ないつもりだったらしいが、わたしとしては全くもって迷惑ではない。
むしろもっと話したいから何も問題はない。
「そう言ってもらえると助かる。…その、今日は久しぶりに一緒に街に出掛けないか?」
「良いですね。行きましょうか。」
「っ良いのか?」
「当たり前です。こういった休みの日でないとルーカスと出掛けることは出来ませんから。」
仕事の関係で一緒に領地や皇室に行くことはあってもそれは休みとは言えないしデートでもない。
しかも、ルーカスは公爵。私は侯爵。
必ず社交界には出なければならない。
今現在わたしたちは注目の的だ。
冷徹公爵と女神侯爵の熱愛だなんだと。そんな記事が出て広まってしまったから。
それからルーカスとわたしは皇宮に呼び出しを喰らってもっとパーティーに出てくれと頼まれたのだ。
パーティーも同様、手を繋いだり腕を組んだりはしても社交的なものが大きい。
だから今日は久しぶりのデートだ。
しかし今回は今までのデートとは違うようだった。いつもは平民に紛れてお忍びで行くことが多い。それは貴族だからと気を遣わせないようにするためだ。
しかし今回はルーカスの提案でドレスで行くことになった。
「どうしてですか?」と聞いても今回だけは内緒だと全く教えてくれる気配がない。
何かを企んでるのは明白だけどそれを知るのも野暮というもの。それ以上は聞かず「分かりました」と納得した。
他の領地へと行かないのは他の貴族に会わないようにするためだろう。そんな些細な気遣いが嬉しくて余計にまた好きになる。
デートの支度にはお互い時間がかかるためお昼からにしようと話した。
わたしも楽しみにしていたため、お昼はあっという間にやって来た。
「お嬢様、最近とても忙しそうにしていらっしゃいましたし、久しぶりのデート。楽しんで来てください。いってらっしゃいませ」
「ええ。ありがとう。リア。行ってきます」
リアに見送られ玄関ホールまで向かうと、ルーカスが身支度をして待っていた。
「お待たせしてすみませんルーカス。」
「全く待ってない。………」
「…?えっと、どうされましたか?」
「…すまない。本当に綺麗で見惚れていた。」
口元を抑えて言うルーカスがまた可愛くて少し笑ってしまう。
だけど、見惚れているのはルーカスだけではない。
「ルーカスもいつも素敵ですが、今日は一段とカッコいいです。」
「っ!ありがとうハンナ。ハンナに言ってもらえるのはやはり嬉しいな。では行こうか」
「はい!」
ルーカスが腕を差し出し、わたしはその腕の間に自分の腕を入れて一緒に歩く。
今日は貴族として街に行くのでこの繋ぎ方しか出来ないが、わたしは平民の間でする手を繋ぐという行為の方が好きだ。
お忍びで行く時はいつも手を繋いでる。
「今日はどこか行きたいところがあるのですか?」
馬車の中でそんな質問をする。
「そうだな。特に決めてはいないが、俺もハンナも社交界にたくさん出なければいけないからドレスを作ったり選んだりしに行こうかと。」
「なるほど。ではルーカスも一緒に選んで頂けるのですか?」
「もちろんだ。俺はハンナの色んなドレス姿が見たい。」
どれだけ忙しくてもわたしとの時間を忘れないでしっかり取ってくれて、本当に優しい人だ。
「でしたら、紳士服の方も一緒に選びたいです。」
「…!そうだな。ではオーダーメイドの方はペアルックにしよう。」
「今から楽しみです」
そんな興奮を抑えきれずに笑顔で言うと、ルーカスは顔を両手で覆って「可愛すぎるだろ…」と言っていたらしいがその言葉がわたしの耳に入ることはなかった。
ルーカスとの沈黙は気まずくはない。むしろ心地良い空間でわたしは結構好きだ。
ルーカスは悶え、わたしは心地良い空間を堪能していると、どうやら領地に着いたようだった。
「っよし、行こうか」
「はい」
ルーカスの手をとって馬車を降り、服屋へと向かった。
服屋まで行くと、事前に用意されていたかのようなドレスが揃えられていた。
「ハンナ。正直全部着てほしいところだが、この中で自分が着たいと思ったものを数着選んで着てみてくれ。全部似合うのは分かっているが、俺が見たい。」
欲望丸出しのルーカスの最後の言葉にクスッと笑う。
ルーカスとわたしが上手くいくのは、きっとルーカスが思っていることを全部口に出してくれるからなのだろう。
それに、ルーカスはわたしが本気でやめてほしいことは絶対にしない。
今日のドレス選びも、わたしは全部買われるのがあまり好きではないことをルーカスは知っている。
本当は全部買いたくて堪らないという顔をしているけど、それでも抑えて数着と言ってくれている。
「分かりました。全部買わないのを約束してくださるなら出来るだけたくさん着ます。」
「本当か!?ハンナは優しいな。」
こんなことで優しいと言われてもと思うが、ルーカスがあまりにも幸せそうなので良しとする。
1着、2着、3着、次々と着ては見せてを繰り返した。
ルーカスは着たドレスを見せるたびにわたしをこれでもかというほど褒めまくってくれた。
流石に恥ずかしくてわたしは良いなと思ったドレスを早々に選び次はルーカスの紳士服を選ぶことにした。
ルーカスは頑なに「俺はいらない」と言うのでわたしは「社交界に出るならなるべくルーカスと一緒に行きたいんです」と言うと意気揚々と選びに行った。
ルーカスも同じように紳士服を着たら見せてを繰り返した。ルーカスにされたことを仕返すべくわたしもルーカスのことを褒めまくった。
案の定照れてしまったのでルーカスも服を数着選んで買った後帰るのだと思っていたのだが、夕食も外で食べるらしくお店を予約していたそうだ。
今日はルーカスがエスコートする日なのだとその時はあまり気に留めていなかった。
「ルーカス。今日はとても楽しかったです。領地に連れて来てくれてありがとうございました。」
「いや、俺の方こそありがとう。いろんなハンナを見れて楽しかった。」
「それを言うならわたしもです。いろんなルーカスが見れて楽しかったですよ。」
「ハンナはいつも俺より上手だな。だが今回は、俺にカッコつけさせてくれないか?」
「へ?」
わたしは上手らしい。
というより、カッコつけるとはどういうことかと思考を巡らせていると、答えはすぐに返ってきた。
「これは…」
「ハンナ。結婚式を上げないか?俺はもう2度と過ちを犯さない。間違えそうになったらハンナが止めてくれ。もうハンナを傷つけたくない。幸せにしたい。その誓いを立てたいんだ。」
もう充分幸せだったのに、ルーカスはまだわたしに幸せをくれる。
傷つきはしたけれど、それ以上の幸せをルーカスがくれた。だからもう大丈夫だと何度も言ったのに。
結局また、わたしはルーカスに幸せにされる。
ならばわたしもルーカスを幸せにするべきだろう。
「では、わたしも誓います。一生をかけてルーカスを幸せにします。」
「俺だけが幸せじゃ意味がない。一緒に幸せになろうな」
「っ…!はい」
今わたしは、世界で一番幸せな時を噛み締めている。
これからもこうして幸せを与えられ、与える存在でありたい。
わたしの大好きな人のために
ここまで見てくださりありがとうございました!
長い期間が空いてしまい申し訳ないです!
明日からはまた新しい作品を投稿する予定ですのでそちらも見てくださると嬉しいです!




