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危機

「ルーカス、いい加減教えてください。わたしはそんなに弱い子ではありません。」


「…それは分かっているが、ハンナがショックを受けないか不安なんだ。」


今、わたしとルーカスは大事な話をしている。


その内容とは、わたしの父と姉についてだ。


そのうちルーカスの方から話してくれると思っていたのだけど、いつまで経ってもルーカスが話すことはなかったので、今わたしから聞いているということだ。


ルーカスはわたしがショックを受けると思って言わなかったようだけど、わたしがそこまで弱い心を持っている訳じゃないということはルーカスも重々承知しているはず。


なので、ルーカスが言っていることは、ただの言い訳にしかならない。


「わたしなら大丈夫です。それに、仮にわたしが落ち込んだとしても、その時はルーカスが慰めてくれるでしょ?違いますか?」


「…違わないに決まってる。だが、俺の言葉によって傷つけたくない。」


多分、こっちが本音。


嫌われるかもしれない、距離をおかれるかもしれない、そんな杞憂な不安がルーカスを襲っているのだと思う。


ならば、その不安を慰めるのは、妻の役目だろう。


「でしたら、わたしがルーカスにハグをしながら聞きます。もしわたしが傷付いたら、あなたから手を離します。そしたら、またわたしを抱きしめて慰めてください。」


「…はぁ、ハンナには勝てないな。」


「では、教えてください。父と姉はどうなったんですか?」


わたしがルーカスを抱きしめながら質問する。


ルーカスは少し躊躇った後に答えてくれた。


「まず、ハンナの姉は未遂だというのと侯爵の位だったということで刑を受けることは免れた。が、代わりに修道院に行くことが決まっている。」


決まっている…ということは、まだカンナはここにいる。大丈夫。まだ話せる時間はある。


そこは良いのだ。けど、1つ疑問がある。


「どうして、『侯爵の位だった』と過去形なのですか?」


「それは今から説明する父のことと関係してる。ハンナの父は、爵位を返して辺境に行った。」


「…!」


まさかの返答だった。


わたしが刺される前、父は全面的にガルシア公爵家を支持すると言っていた。


なのにどうしてだろう。


「それは、父が自ら決めたことなのですか?」


ルーカスを疑っている訳ではない。


ただ、あんなに姉のためにと頑張っていた仕事をそんなに簡単に手放すものなのかと疑問に思ったのだ。


「ああ、そして、この話はまだ終わっていない。」


それは、もちろん知っている。


父が侯爵の位を貰ったからには、領地もあるし仕事だってしていた。その引き継ぎは誰がするのか、侯爵の位は誰が代わりに貰うのか、今のままでは問題だらけだ。


「教えてください」


「まず、侯爵領については、俺が貰うことになった。」


…驚いた。ただでさえ広いガルシア公爵領が更にひろくなったとは。


この人はどれだけ凄くなれば気が済むのだろう。凄いのは良いことだと思う。でも


「では、更に仕事が増えるのでは…」


普段でも充分に忙しいのに、侯爵の仕事を受け継いだとなれば、忙しいどころでは済まされない。


「心配するな。侯爵領の領地は俺の下についている爵位持ちに経営を任せる。」


「なるほど、ですが経営を他の貴族に任せて大丈夫なのですか?」


あれほど人に…特に貴族には信頼を置かないルーカスが、爵位持ちに経営を任せるなんて、少し意外だった。


「いや、そいつは貴族ではない。というか、貴族ではなかった元平民だ。俺が公爵の権限で男爵を与えた。そいつに領地経営を任せて見ようと思う。もちろん時折り様子は見に行かなければならないし、報告書の量も増えるが直接経営するよりはマシだろう。」


「…すみません、わたしの父がご迷惑を…」


わたしの眠っている間に色んなことが起こりすぎていてとにかく申し訳なさを感じたわたしは平謝りするしかなかった。


「謝るな。全て俺のためにしたことだ。続きを話すぞ。侯爵がしていた事業は上手くいていたからこれに関しては国が受け継ぐことになった。これは皇帝と皇后が承認してくれた。せめてものハンナへの償いらしい。」


皇帝と皇后が償いだなんて、2人ともただわたしをお礼にとパーティーに誘ってくれただけなのに…。


今度謝りに行こう。


…待って。今わたしは重大なことに気が付いた。


父が爵位を返上したということは、わたしはもう貴族ではなく平民。


なのにルーカスと結婚?出来るわけがない。


今のわたしはこの身体のせいで足を引っ張っていると言うのに、更に迷惑をかけることになる?


「ルーカス、やはり離婚しましょう」


「…言うと思った。だから言いたくなかったんだ。ハンナは自分が平民になって迷惑をかけるからという理由で俺と離婚しようと言っているのだろう?」


「…はい。」


やっぱりルーカスは分かっていた。


愛してるからと言って、この世界ではまだ平民と貴族の結婚が許された訳ではない。


だからやっぱり


「その心配はいらない。」


え?


「何故です…?」

見てくださりありがとうございました!

次話も見てくれると嬉しいです!

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