お披露目
◇◇◇
「奥様、ルーカス様が来てますよ」
「へ?!」
なんとも間抜けな第一声で、わたしの目は完全に覚めた。
「こっちの方が目が冷めるだろ?」
そうです。そうですけど。
「寝起きのわたしなんて、可愛くないのに…」
「可愛いですけど」
「可愛いが?」
重たい目を擦りながら言うと、リアとルーカス様が口を揃えて言った。
流石にお世辞だとしか思えない。
リアはもう見慣れているだろうけど、ルーカス様に至っては2回目だ。
とにかく、もう起きてしまったことは仕方ないので、朝の用意を済ませてヘーゼルを出迎えた。
「奥様、お久しぶりです。さっそく着ていきましょう。」
ヘーゼルが準備を始めると、わたしは目隠しをされた。
ルーカス様に聞くと、着てから見てほしいとのこと。
2人とも声がいつもより明るいことから、デザイン通り、もしくは以上のドレスが出来たらしい。
ヘーゼルもルーカス様も、美しい、綺麗だな、想像以上だと言っていた。
もちろんドレスに対してだよね………。
「奥様、着付けが終わったので目隠しを取りますね。」
「はい。」
2人がデザインしてくれたドレスが見れる…!と思ったのに、少しデジャヴを感じる。
「もしかして、鏡ない?」
そしてルーカス様もいなくなっていた。
「はい。メイクとヘアセットが終わった後に見てもらおうと思いまして。ルーカス様も同様に、全て終わってから見てもらおうと思います。」
「奥様、ここからはわたし達侍女にお任せください。」
メイクセットとヘアセットのための道具を両手に持った侍女たちは、少し怖かった。
メイクとヘアセットに関しては、全てリアが指示を出し、他の侍女がしていくやり方だ。
リアも他の侍女もたくさん頑張ってくれたおかげで、なんとか完成した。
リア以外の侍女は、また女の子らしい悲鳴を上げて褒めまくってくれた。
鏡を持ってくる前に、ルーカス様に見てもらうとのことで、リアがルーカス様を呼びに行った。
「ヘーゼルさん、ありがとうございます。」
「いえ、お礼はドレスを見てからにしてください。」
どうやら、まだドレスを破られた記憶は完全には消えていないようだ。
だからこんなことを言うんだろう。
ヘーゼルと会話をしていると、リアがルーカス様を連れてきたのが分かった。
足音が2人分近づいてきた。だけど、その足音は扉の前で止まった。
「ハンナ、入ってもいいか…?」
見るためには入らないといけないのに、拒むはずもない。
「はい」
しっかりと肯定の意思を伝えると、ルーカス様はゆっくり扉を開けた。
「どうでしょうか。わたしはまだ見ていないので分かりませんが」
分からない。
でも、ルーカス様の反応を見れば分かる。
ドレスとメイク、ヘアセットは大成功らしい。
「これは、他の貴族どもに見せたくないな…。」
自分の目を覆って言ってるけど、何気にとんでもない発言をされた気がする。
このドレスは皇宮に行くためのドレスなのだから当然人に見られるのに、見せたくないとなればそれはヘーゼルの頑張りをあ裏切ることになってしまう。
それは絶対に嫌なのでもちろんこのドレスを着て行く。
「奥様、ドレッサーを取りますよ。」
バサっという気持ちのいい音と共に見えた鏡の中のわたしは、とても綺麗だった。
これが本当にわたしなのかと疑いたくなるくらい。
「ヘーゼルさん、ありがとうございます…!こんなに綺麗なドレスを作っていただいて、本当に嬉しいです。」
「あ……」
「これはヘーゼルさんの努力の結晶です。大切にしますね。」
わたしが興奮して思ったことを並べまくると、ヘーゼルが涙を浮かべた。
「すみません、大切にすると言ってくれたのが嬉しくて…」
「…ヘーゼルさんにとって、良い記憶に塗り替えられたのなら、良かったです。」
わたしが慰めると、余計にヘーゼルは泣いてしまった。
余程嬉しかったのだろう。
ただ思ったことを言っただけで喜んでくれるのなら、いつでも言える。
泣き止んだ後は、いつものヘーゼルに戻っていた。
「すみません、後は公爵様とお2人の時間をお過ごしください。」
そう言ってヘーゼルは部屋を出た。
「ハンナ、とても綺麗だ。本当は抱きしめたいが、せっかく着飾ったから触れられないな。」
「ありがとうございます。このドレス、本当に素敵です…!」
ルーカス様が選んでくれたからというのももちろん理由の1つだけど、やっぱりヘーゼルは有名なだけある。
綺麗な白緑と白がドレスに使われていて、裾にある宝石は銀と緑で色のメリハリが出ている。
ドレスに合うようなナチュラルなメイクに、髪は下ろしていてウェーブがかかっている。
髪を巻くだけでこんなにも違いが出るなんてびっくりだ。
いつも下ろしていたため下ろしたままでは変わり映えしないのではないかと心配していたが、その心配は杞憂に終わった。
ウェーブをすると、ストレートとは大分違う印象になる。
それを分かっていてやったんだろうなと、改めて侍女の凄さが分かった。
「気に入ってくれたなら安心だ。次この姿を見るのは夜か…。そろそろ行かないといけない。」
「…はい、ドレスありがとうございました。お仕事頑張ってくださいね。」
わたしが応援すると、ルーカス様は嬉しそうな笑顔で行ってくると言い部屋を出た。
ルーカス様はこれから馬に乗って1度仕事場に向かい、それから皇宮にくるそうだ。
「さて、わたしたちも行き始めましょうか」
見て下さりありがとうございました!
次話も見てくれると嬉しいです!




