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推しの悪役令嬢なので全力で守ろうと思います!  作者: 小鳥遊
推しのために生きていました
54/89

人生で1番幸せな誕生日(公爵視点)

◇◇◇


俺は何故か、ハンナに部屋に呼ばれている。


もしや俺が何かしでかしてしまったのかとハラハラしていると、俺の気持ちを察したのか、座ってくださいと言われた。


取り乱しすぎて間違えて隣に座ってしまったことは内緒にしておこうと思う。


「ルーカス様」

「はい。」


俺は取り乱しすぎではないだろうか。普段敬語を使うことなんてないのに。


とにかく落ち着こうと、ハンナに気づかれないよう俺が深呼吸をしていると、ハンナは少し表情を柔らかくした。


「まず改めて、お誕生日おめでとうございます。ルーカス様のお誕生日を一緒に迎えることが出来て、嬉しく思います。」


"…俺は、こんなに幸せでいいのか?"


招待した貴族の誰に言われても媚び売りの1つとしか思えなかったのに、ハンナに言われると、心臓の音がうるさくなる。


「…っ!まさか祝ってくれるとは…。ありがとうハンナ。」


めんどくさいとしか思えなかった誕生日が、ここまで嬉しいものになるとは思っていなかった。


しかしハンナは俺に嬉しさを噛み締める時間は与えてくれないらしい。


更に爆弾を投げてきた。俺にとっての感情を爆発させてくる爆弾。


「いえ、祝うのは当然のことです。それで、プレゼントを用意したのですが、受け取ってくれますか?」


そう言って、引き出しの中に入れていた箱を取り出す。


ハンナが、俺にプレゼントを?とても信じがたい光景に、目を見張ってしまった。


「……開けても、いいか?」

「どうぞ」


ハンナが了承すると、恐る恐る箱を開けた。これで何も入っていなかったら泣いてやる。


そう思っていたのに、中にはしっかりプレゼントがあった。


「これは…ペンダント?」


分かっているのに、聞いてしまった。ペンダントだということは一目見れば分かるのに。


それでも、ハンナは丁寧に説明してくれる。


「はい。このペンダントは、治癒魔法が発動するようになっています。ルーカス様は時々怪我をして帰ってくるので、少しでも怪我が減るようにと思って贈らせて頂きました。」


正直、何が起こってるのか分からない。ハンナが、俺の身を案じてくれてる。気にかけてくれてる。


俺からすれば、この事実が何にも代え難い誕生日プレゼントだ。


……ちょっと待て。治癒魔法が付与されたペンダントは、ほいほいと買えるものではない。


そもそも、売られていること自体がほとんどない代物だ。それを見つけて買った?


だが、それは偶然にも程がある。結果、俺の思考の中で1つの答えが見いだされた。


「これはもしかして、ハンナが魔法をかけてくれたのか…?」


もし違ったら、という俺の変な緊張は杞憂だったようで、はい。という声が返ってきた。


「ルーカス様の誕生日までに付与魔法を使えるようになるかは賭けだったんですけど、どうにかうまく行って良かったです。先生によると、瀕死でも1度回復させることが出来るそうなので、仕事に行かれる時に身につけてくださいね。」


…ハンナが、プレゼントのために必死に頑張ってくれた。


魔法を習い始めてまだ少ししか経っていないのに付与魔法を使えるのは、相当な時間を魔法に費やしたに違いない。


確かに最近は自室にいることが多かった。俺が頼んだ仕事と、侍女と一緒にやる掃除の時間をなるべく早く終わらせていた。


"執務室で一緒にいる時間が減って寂しかったが、まさかこのためだったとは…。"


俺の膝に座ってくれる時間が短くなって悲しかったあの時間を耐えただけのことはあったようだ。


「ありがとう。本当に、幸せだ。」

「…!!」


俺の表情筋に力が入らないことから、相当変な顔になっているだろうと想像が付いてしまう。


ハンナもびっくりしている。


だが本当に嬉しいのだ。人生で1番幸せな誕生日になった。


可愛くて仕方のない俺の愛する人と、その愛する人が作った誕生日プレゼント。


もう我慢の限界だった。これ以上どうやって俺の気持ちを伝えずに過ごせばいい?


"そうだ。もう我慢などしたくない…"


ハンナがどれだけ愛しいか。それを分かってもらいたい。分かってもらうには、態度で示すしかないな。


だが、勝手に触れるのも避けたい。泣いていた時に抱きしめる以外には、ちゃんと許可は取ってきた…はずだ。


それは俺が、散々勝手に触れられて、女性に嫌悪感を抱かずにはいられなかったから。


もしかしたら、ハンナも同じように、俺が勝手に触れてしまったら嫌悪感を抱いてしまうのではないかと思ってしまう。


「ハンナ、抱きしめてもいいか…」


ちなみに俺は大歓迎だ。まさか好きな人にはむしろ触れてほしいと感じるなんて知らなかった。


だがそれは俺の場合であって、ハンナの場合ではない。何故ならハンナが俺を好きだと思っているか分からないから。


それでも俺は、確証がないからと永遠に逃げ続ける根性なしではない。


俺が決意を固めていると、令嬢はその間に少し恥ずかしがりながら「はい……」と言った。


その瞬間に、俺は彼女を抱きしめていた。


俺は、好きな人のことになると心臓がおかしくなるようだ。


早く脈打つ心臓は、静かにしろという言うことを聞かず、ずっとうるさい音を立てている。


その音は多分、ハンナにも聞こえているだろう。それでも何も言わずにいてくれるのは、彼女の優しさだ。


だから、俺はその優しい彼女を逃さないよう、人生で初めて言葉にする単語を噛み締めるように。

見てくださりありがとうございました!

次話も見てくれると嬉しいです!

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