プレゼント
◇◇◇
やはり夕食はこうしてダイニングで食べるのが良いなとしみじみと感じる。
「そうだ。ハンナ。あなたに少し確認しておきたいことがある。」
「はい。なんでしょうか?」
「2週間後、皇宮に行く予定なのだが、皇帝が是非ハンナにも会ってみたいと言っていてな。」
皇帝がわたしに…?嫌な予感しかしないことは確かだ。
わたしが少し警戒していることを察したのか、追加で説明してくれた。
「皇帝は俺の友人と言えるべき人だ。ハンナが思っているようなことにはならないと思うから安心していい。皇帝はあなたに興味津々なだけのようだ。」
ルーカス様はもう表情を読むとかそう言うレベルではないほどにわたしの心を読んでくる。
毎度のことながら驚いてしまう。
だけど、それと同時に、信頼出来るなとも思う。
「ルーカス様がそう仰るのであれば、大丈夫ですね。」
興味津々というところは、大丈夫かは分からないが。何故興味を持つのかという理由については心当たりがある。
恐らく、無情公爵だとか、悪魔だとか言われている友人の婚約者がどういう人なのかというのを、この目で確かめておきたいのだろう。
もちろん、皇帝だってわたしの噂は知っているはず。それでも会いたいということは、ルーカス様を思ってのことだと想像がつく。
ならば、ルーカス様の友人である皇帝にも、好かれずとも、とりあえず噂は嘘だと言うことだけは知っておいて欲しい。
そして、わたし自身が使える人間だと言うのも示せるようにしておこう。
「承諾してくれてありがとう。皇帝陛下も皇后も喜ぶだろう。」
「わたしが来て喜んでくれるでしょうか…」
わたしとしては単なる疑問だった。
だって、色んなところで悪い意味で有名な令嬢が訪れて、誰が喜ぶだろうか。そんな普通の疑問。
なのに、ルーカス様は少し不機嫌になった。
「当たり前だ。ハンナは俺の…………ぃゃ、
もういい。ひとまず2週間後だ。」
「?、分かりました。」
何故機嫌が悪くなっているのかは分からないが、触れない方が良いだろうと思い何も言わないことにする。
夕食を終え、一通りの寝る準備を済ませたわたしは、皇宮に訪れる間に何をしようかと考えることにした。
まず、カーター先生の話で魔法の授業に関しては、火曜、木曜、土曜に行う。
もちろん光魔法の授業。
そして、わたしがもう1つ心配していることは、皇宮に向かう前々日に、ルーカス様が誕生日を迎えるということ。
ルーカス様の誕生日は何故か少し前、執事に知らされた。しかも内密に。
これは、ルーカス様の誕生日をわたしに祝えと言うことだろうかと思ったのだが、どうやら合っているようだった。
何故分かるのかというと、夕食後に自室に戻ろうと廊下を歩いている時、執事に『誕生日プレゼントはお決めになられましたか?』と聞かれたからだ。
それまでは確信を持てなかったため、まだ何もしていない。
こればかりは申し訳ないなと思う。のでとりあえず、「任せてください」と得意げに言った。
…言ったものの、誕生日プレゼントはまだ選んでいなかったため、後日に先生に相談するとこにした。
それにしても、当の本人は誕生日について何も言わなかったな。
ちなみに、公爵家の誕生日には、毎年パーティーが行われる。招待されるのはほんの一部の貴族だけ。
それが公爵家の誕生日パーティーなんだとか。ルーカス様は面倒くさいと思っていそうだ。
最近、ルーカス様とずっと行動していたからなのか、わたしもルーカス様の気持ちが少し分かるようになっていた。
不思議なものだ。普通の貴族ならば、初めから大体分かるというのに。
とりあえず、プレゼントに関しては、先生に相談することにして、今日はもう眠ろうと思う。
◇◇◇
「カーター先生、どうしたら良いですかね。」
「いやいやいや、あなたのプレゼントなら何だって喜ぶと思いますよ。」
現在わたしは、授業の休憩時間に例の件について先生に相談している。
カーター先生なら、ルーカス様の友人であり、1番欲しいものを分かっているかと思ったのだが、先生に相談したのが間違いだったのかもしれない。
あり得ないだろう。わたしのプレゼントが1番嬉しいなど。
なのにそんなことを言うなんて、またわたしを試しているのかと疑ったが、そうでもないらしい。
彼の目から、本気らしさが伺えるから。
「何故ですか?」
わたしのその質問に、カーター先生は心底驚いたらしい。目を真ん丸にしている。
「まさか、ルーカスはまだ伝えてないのか…?」
「はい…?」
声が小さくてよく聞こえなかった。
「あ〜、いや、こっちの話です。ただ、本当に夫人のプレゼントなら何でも喜ばれます。」
「そうですか…。何か日常的に使えるものがあれば良いんですけど」
どうせ渡すなら、ルーカス様に心から喜んでもらえるものがいい。
ルーカス様が喜ぶもの……
そういえば、ルーカス様は公爵の仕事もやっているけど、騎士の仕事もしているため、疲れたように見えることがある。
そして、騎士の仕事終えて帰って来た時、たまに包帯をつけて帰ってくることも知っている。
その包帯を見るたびに、いたたまれない気持ちになった。
ルーカス様には、いつだって元気でいて欲しい。わたしだけがのうのうと元気にしているなんて嫌だ。
一緒に笑って、一緒に泣いて、苦しいのなら、互いの苦しみを分け合って、慰め合いたい。
どうしてこんな気持ちになるのかは分からない。だけど
「カーター先生、こういうのはどうでしょうか」
この気持ちを、ルーカス様に伝えたら、喜んでくれる気がする。
「なるほど。とても嬉しがると思います。というか、溺愛が加速する気が…」
?、今この人、溺愛だとか言わなかっただろうか。いや、気のせいだ。そんな訳がない。
それより、わたしが提案したものだ。
わたしがルーカス様にプレゼントしたいと思ったもの、それはペンダントだ。もちろん、ただのペンダントではない。
ペンダントについている宝石に光魔法を込めたものを渡すつもりだ。
そうすることで、ルーカス様が身につけていれば、怪我をしていても回復する。
ペンダントなら、服の下につけておけば邪魔にならないので良いのではと提案したところ、先程のようなリアクションを頂いた。
「ですが、1つ問題があります。夫人の成長速度は、とてもお速いです。ですが、ルーカスの誕生日に間に合うかは別です。」
カーター先生の言う通りだ。わたしが魔法を習い始めてまだ2回目。
ものに魔法を付与するのは、習い初めのわたしでは難しいらしい。
それでも、ルーカス様なら、自分で魔法をかけたものの方が喜ぶのだろうと謎の確信を持っている。
わたしも随分自己肯定感が上がったものだ。
今回だって、出来ると思ってしまう。
「大丈夫です。必ず、覚えて見せますから。」
「…!分かりました。私も出来る限り協力致します。」
「ありがとうございます。先生。」
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