初めてのデート2
「コットンキャンディを1つ、俺の彼女に渡してください」
「…?!」
「あいよぉ」
"ど…どうして…。"
これはわたしでも驚きが表情に出た。確かに籍は入れた。でも、夫婦という間柄でもなければ、恋人という関係でもなかったはずだ。
人の感情を読むのは容易い。ずっとそう思っていたのに、最近は公爵の感情が分からなすぎて振り回されてばかりだ。
自分の感情より公爵の感情の方に興味が出てきてしまうほどだった。いつのまにか、尊敬の念は無くなっていた。
これは良いことなのだろうか?
公爵の言動がわたしの頭の中でぐるぐる回っている間に、わたあめが出来たようだ。
「どうぞ、お嬢さん。素敵な彼氏さんだねぇ。」
「…!はい。とても素敵な彼氏です。コットンキャンディ、ありがとうございます。」
満面の笑みでわたしは言った。
これは良い返しだったのではないかと思い公爵の方を向くと、今度は公爵の耳と頬まで赤くなっていた。
公爵が顔を真っ赤にしてフリーズしているところ悪いが、次のお客さんが並んでいるため、早々にお店を出ないといけない。
「お金おいて置きますね。ありがとうございました!」
わたしは、公爵に介抱された時期から何故か毎日のように渡されていたお金を払って、公爵の手を掴み店を出た。
公爵を起こすためには少し大きめな声で名前を呼ばないといけないため、名前で呼ぶしかない。
「ルカ…大丈夫ですか?」
反応はない
いつもとあまりにも違うため、また体調を崩したのかと心配になる。公爵が体調を崩せば、また仕事が溜まってしまう。
"そうなったら、セバスが可哀想ね"
「体調が悪いなら、今日はもう帰りますか?」
帰るという言葉を聞いて、公爵は我に返ったようだった。
「っ!!帰らない…!すまない、少し動揺したんだ。ハナが、俺のことを彼氏だと言っていたから…」
何を言う。全てこちらのセリフだ。と思ったので、そのまま言ってみる。
「動揺したのはこちらのセリフです。いきなり彼女だなんて言うから驚いたんですよ」
「あー、すまない。言われた側はこんな気持ちになるんだな。」
「分かってくださって良かったです。」
「それで、わたあめは美味しいか?」
この話題は嫌だったのか、別の話題を提示してきた。
わたしは、公爵を見せから連れ出すことで頭がいっぱいだったため、右手に持ったわたあめはまだ食べていなかった。
"食べてみよう"
ーはむっー
"………っっ!!"
こんな食感の食べ物は前世でも今世でも初めて食べるので衝撃が強かった。ふわふわしていて、口に入れた瞬間に溶けてしまうのだ。
極めつけには甘さがちょうど良く、わたしの好みドストライクだった。
「ルカ、これ美味しいです…!」
「良かった。気に入ったのなら、邸宅でも食べられるようにするが」
迷ってしまう。確かに、公爵邸でもこの食べ物が食べられたならどれだけ幸せなことだろうか。
でもこの味は、公爵領のこの街だからこそ食べられる味だ。この場所、このお店、この環境だからこその味なのだ。
「…お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です。コットンキャンディは、またこの街に出かけた時に食べようと思います」
「……そうだな、また来よう。いつでも言え、連れてきてやるから。」
先の公爵とは打って変わって、とても頼もしい姿を見せた。
「はい、お願いします。ルカ」
「ぅ"……よし、色々見て回るか。気になるものがあったら遠慮なく言えよ。」
「分かりました。」
それから公爵は、わたしを色々なところに連れて行ってくれた。
平民の服が必要になるかもしれないからと見に行ったり、小物店で何か必要なものはないかと探してみたり、公爵がよく行く武器屋にも来たりした。
とても充実した時間を過ごしていると、いつのまにか昼食を食べる時間になっていた。
「昼食は予約しているから、そこで食べよう。」
そうして連れられて来たお店は、賑やかで皆楽しそうに食べているところだった。
貴族の礼儀正しく食べなければいけない食事とは違う。みんなが食べることを心から楽しんでいるのだ。
「とても良い雰囲気ですね。」
「喜んでくれて良かった。」
やっぱり公爵はすごい。わたしが良い雰囲気だと言っただけでわたしの気持ちが分かるのだ。
この人は魔法か何か使っているのかと疑問を持ちたくなるほどにわたしの感情を読み解いてくる。
「おいで、こっちだ。」
席に案内されたわたしは、メニューにある美味しそうなものをいくつか頼み、昼食を摂った。
公爵邸とはまた違う味。だけど、温かみのある優しい味だった。
これを作った料理人は、優しさに溢れているのだろう。
わたあめを作ってくれた人と同じだなと思いつつ、全て食べた後お店を出た。
お金は公爵が払ってくれた。公爵曰く、『今日は俺が全部買ってやるから買いたいものがあったら俺に言え』とのこと。
わたしもお金はあるけどなと思ったが、そのお金も公爵から貰ったものだったので、わたしは何も言えず頷いた。
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