初めてのデート
◇◇◇
ーガチャー
「お嬢様、おはようございます。」
「おあよ…」
"寝起きで呂律が回らない…"
今日は公爵と街に出掛ける日。
「お嬢様、用意を始めようと思いますが大丈夫ですか?」
わたしのウトウト具合を見て心配になったのか、リアが気を遣ってくれたようだ。
だけど、本当に朝が弱いだけなので「大丈夫」と伝え、支度を始めた。
支度と言っても今回は簡単なもので、服を着てから少しメイクをし、髪を結ってもらうだけ。
髪型はすっきりとしたポニーテールにしたそうだ。普段しない髪型だからかスースーする。
最後に魔法で髪色と目の色を変えれば完成だ。
希望の髪色と目の色に変えれるそうなので、父に似たホワイトブロンドの髪は茶髪に、目の色も同じく青色から茶色にした。
「お嬢様…」
「ん?」
「世界一可愛いです」
「…?!」
神妙な趣きで言うので何かと思えば…
でも、ハンナ様の顔が可愛いのはその通りだ。
とはいえ、当たり前のようにそんなことを言われるのは初めてで気恥ずかしい。
「…ありがと……」
つい目を逸らしてしまった。だが、またそれがリアからすると可愛く見えたようで「う"っ…」と、うめき声を発していた。
「はぁ、どうしてお嬢様はこんなにも可愛いのでしょうか。このままでは男性が集まってきてしまいますよ」
「そんなことないわ。でも、ここまで綺麗になれたのはリアのおかげよ。ありがとう…。じゃあ、いきましょうか。」
わたしの後ろでリアが熱い視線を送っている気がするが、気のせいだと思うことにしよう。
部屋を出て玄関ホールに向かう途中色んな人がこちらを見た気がするが、見なかったことに。
後ろにいるリアからの視線は相変わらずだ。
そんなよく分からない視線に晒されながらも、玄関ホールに辿り着くと、そこには先に公爵が来てわたしを待っているようだった。
これ以上待たせるのは申し訳ないので、わたしはすぐに声をかけた。
公爵も髪色と目を変えていた。髪は銀髪からわたしと同じ茶髪に、瞳の色は赤から緑にしたようだ。
「公爵様、お待たせしてすみません」
「ん、ああ。大丈、夫…だ。」
振り返ると同時にわたしを見るやいなや、公爵が固まってしまった。そんなに似合っていなかったのか。
少し不安になった
「えっと…公爵様。似合っていなかったで
しょうか…。」
でも、そんな不安は杞憂だったようで
「あ…!いや、そうじゃない!とても良く似合っている…。」
「なら良かったです。公爵様も、お似合いですよ。」
「〜〜〜///………ふぅ。では、行こうか。」
「はい」
公爵が手を差し出してくれたので、その手を取ると、エスコートしてくれた。
わたしの歩幅に合わせて歩いてくれているようで、そのことが少し微笑ましく思えた。
あの冷徹公爵と言われている人がわたしの歩幅に合わせて歩いているのだ。面白いと思ってしまうのも仕方がない。
馬車に乗ると、邸宅から公爵領までは少し距離があるようだったが、景色が綺麗であっという間に着いた。
「どうぞ、ハンナ嬢。」
「エスコートありがとうございます。ですが、ここでエスコートしては、わたしたちが貴族だとバレてしまうのでは?」
「確かに…そうだな。じゃあ、ハンナ嬢と呼ぶ訳にもいかないな。」
少し悪戯げに言った公爵は、どこか楽しそうだった。
そんな公爵とは対照的に、わたしは困っていた。公爵のことを何と呼べばいいのだろうか。
「…………………!では、名前を少しいじって呼びませんか?」
「?、名前をイジる?」
「はい。わたしなら、ハンナなので、ハナとお呼びください。公爵様は、何かご希望がありますか?」
わたしが何気なく聞くと、公爵の耳が少し赤くなっていたような気がした。
どうして耳が赤くなったのだろうと疑問を持っていると、公爵も呼んで欲しい名前が決まったようだった。
「では、ルカと呼んでくれ。様付けもなくさないとだな。」
「…分かりました。出来るだけ努力します」
「ククッ…。ああ、努力してくれ」
会話がひと段落すると、街を回り始めた。まずはどこに行くのだろうかと思っていると、割と早く目的の場所に着いたようだった。
「ここは…?」
わたしが質問すると、公爵は丁寧に説明してくれた。
「コットンキャンディーというものが売ってる場所だ。俺の見立てだと、ハナは甘いものが好きだと思うのだが、合っているか?」
これまたニヤニヤとしている。
何がそんなに楽しいかはさて置き、わたしが甘いものが好きというのは合っていた。
顔には出ていないはずなのに、どうして分かったんだろうか。とにかく、コットンキャンディーには興味があるので頷いておこうと思う。
「はい。どうして分かったんですか?」
「目だよ。ハナの方が感情に敏感だから忘れられているかもしれないが、俺も感情を読むのは得意なんだ。」
そういえばそうだった。
公爵が無表情だったのも、信頼するに値するのかと、ずっと疑わしかったから。
それは、貴族の人は欲にまみれていて、その欲に子供の頃からたくさん触れてきたからだ。
「なるほど、流石です公爵様。」
「フッフ、そうだろうそうだろう。それで、買っていくか?」
「はい、お願いします」
今日は休みで浮かれているのか、どんどんわたしの公爵へのイメージが変わっていく。
こんなにノリの良い人では無かっただろうに。その姿を無表情でずっと隠してきたことを考えると、とてもすごいと素直に尊敬した。
尊敬していたのに…
見てくださりありがとうございました!
次話も見てくれると嬉しいです!




