人生
◇◇◇
身体中が痛い…
わたし…どうなったんだろう?死んだのかな?
"疲れたよ…"
「お疲れ様、今のハンナ」
「え?」
今のハンナ?
"てことは、今話かけてくれたのは…"
後ろを振り返ると、正真正銘、本物のハンナ・アディノールがいた。
「ハンナ様…、?どうして…」
「本当にお疲れ様、ハンナ…いや、未来ちゃん。」
「…!」
その名前で呼ばれたのはいつぶりだろうか
恐らく、20数年前に呼ばれた名だ。
でもどうしてハンナ様がわたしの名前を知ってるんだろう?
「ごめんなさい…ハンナ様のお身体を沢山傷つけてしまって…。」
「フフッ、あなたは優しいのね。でも気にしないで」
優しい声色だ。
わたしと同じ声のはずなのに、ハンナ様はその言葉の1つ1つに気持ちが籠っている。
わたしとは大違い。
「今日はあなたにありがとうとごめんなさいを言いに来たの」
「え?どうして…」
「まずは私を幸せにしようとしてくれてありがとう。上から見ていたあなたの行動に、私はとても救われたわ。でも、ごめんなさい。私はもうあの身体に戻るつもりはないの。だから、あなたにはあなたの人生を歩んでほしい」
わたしの、人生?
"分からない、分からないよ。わたしがわたしのために生きたことなんてなかった"
「ハンナ様と一緒に行ってはダメなのですか?」
「ダメ」
少しびっくりした。だって、こんなにはっきり言われるとは思ってなかった。
もう少し、悩んでくれると思ってた。
"わたしはハンナ様にも嫌われるの?"
「もうっ…!何か変な誤解をしているわ。だからそんなに悲しい顔しないで。私はあなたに幸せになってほしいの。あなたが私の幸せを願ってくれたように、私もあなたの幸せを願ってる」
「わたしの…幸せ…?」
「そう、あなたの幸せ。幸せになって。
もう我慢しないで。」
我慢…わたしは、我慢をしているのだろうか。
分からない…
「フフッ、なんだか私と似てるね。じゃあ、
ごめんね。中途半端になっちゃうけど、
さよなら。また会えると良いね。あなたはもう目覚める時間だよ。みんなが心配してる」
心配…誰が、するって言うの…?
◇◇◇
「………」
"痛い…みぞおち…なんで、こんな…"
……、何故公爵はわたしの手を握ってるんだろうか。
嫌いな癖に。
取り敢えず起き上がらないと話にならないと思い、身体を起こそうとする。
「………クッ…」
ヤバい…痛すぎて声が出てしまった。頭痛も酷いし身体の節々が痛い。
「ハンナ嬢…?目が覚めたのだな…!良かった…。あなたは1週間も…」
「公爵っケホッ…ッ…」
「っ!まずは水を飲んでからだ。」
優しい手付き。
倒れないよう背中を支えてくれて、カップを持ってくれている。
「…ありがとう、ございます」
この優しい姿に、騙されてしまいそうになる。心配するような目、割れ物を扱うかのように優しい力の加減。
少しだけ、この優しさに浸っていたいと感じた。
でも、この時間が長く続くわけもなく。
「ハンナ嬢、それで、どうして窓から飛び降りたんだ???」
"そんな眼光ギラギラの目でわたしを見ないでください"
と叫びそうになった。が、堪えた。
「怖かったんです。」
「こわい…?」
そう、怖いのだ。
それを言ったらどんな反応をされるのか。
弱みを見せた時にどんな表情でこちらを見てくるのか。
全て怖くて仕方がない。
「はい。以前わたしの家庭環境をお聞きになりましたよね。もうこれ以上は聞かれたくなくて、窓から逃げようとしました。公爵様なら、死んだことにでもしてくれるだろうと思ってましたから」
わたしがそう言うと、公爵はわたしの知らない表情をしていた。
…何なのだろう、この表情は…。なんとも言えないような歪な表情をしている。
「俺が、あなたを探しにいくとは思わなかったのか…」
謎の質問に対して、わたしは即答できた。
「はい。だって、公爵様はわたしのことがお嫌いですから。嫌いなら、わざわざわたしのことを探したりはしないでしょう?」
当たり前だ。それ以上に何の理由があると言うのか。
「ッ…。あなたは、、どうしてそう自分を卑下するんだ…」
"なんでそんなに、悔しそうなの?"
公爵が声を絞りだして言った。
自分の言った発言を振り返ってみれば良い。
あの言葉も態度も、嫌いだからこそ取る言動
だろう。
「あなたが話したくないことは分かっている。だが、教えてほしい。あなたのことをもっと知りたい。だから、初めから詳しく、教えてくれ。」
わたしのことなんて嫌いなくせに、どうして聞きたがるの?
でも、こんなこと言ってくれたのは、公爵が初めてだ。
嬉しいような、むず痒いような、でも話したくない。一生仮面を被ったままでいたい。
"そうすれば、傷つかずに済むから…"
いろんな感情が渦巻く中、わたしは話始めることにした。
少しずつ、ゆっくりと……
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