演劇
◇◇◇
次の日
「…グッ…」
「どうだ。痛いだろう?お前のお母様は、これよりもっと苦しそうに亡くなったんだ…!」
「俺は側にいることしか出来なかった…。妻を治せる技術も、方法も何も知らなかったんだ…!」
"ん?昨日と様子が違う…。まさか、お酒?"
「俺が妻を救えたら、そしたらまた幸せな日が待っていたのに…!だから俺は、妻によく似たカンナを可愛がってやった!」
この人は、自分の娘に手を挙げたうえ、愚痴まで聞いてもらってるのか。
なんとも惨めで可哀想な人だ。
「なのにあいつは、男を誘惑して遊びまくりやがった!だがそれも、お前がしたことなんだ!何故かわかるか?俺の妻は、そんなことしないからだ…」
何その理由。だったら、公爵がわたしを無視して、わたしに悪い噂を押し付けた理由は、お姉様をお母様に見立てたからってことだろうか。
意味が…分からない。結局のところ、わたしもお姉様も、あなたの茶番に付き合わされただけじゃない。
そんなことで、姉様はお母様に見立てられて愛されて、わたしはいないように扱われたの?
本当、ふざけてる。
いや、焦っちゃダメだ。ムカつくけど、上手くいけば、もう殴られずに済むかもしれない。
だけどそれは、わたしの演技力にかかっている。
「おとうさまぁ…」
どれだけ自分の気持ちを偽って、意識を失わずにいられるかの勝負だ。
「あ?だからお父様と呼ぶなと…、お前、泣いてるのか…?」
もちろん、本当に悲しくて泣いている訳ではない。
それでも、わたしのことを見てこなかった父は、この涙を本物だと思うだろう。
「わたしも…お母様といっぱいお話ししたかった…。お母様に生んでくれてありがとうって伝えたかった…!でも…、でも…!わたしがお母様を殺したんだ…わたしが…わたしが殺した…」
「お前…。」
「ごめんなさいおとうさまぁ…ごめんなさいおねえさま…!わたしが、大切なおかあ様を奪ったから…!わたしも、おかあさまに会いたいよぉ……!」
泣きじゃくる。
仮面を被る。
母を亡くし、父にも見放された可哀想な子。
そんな役を演じるのだ。
どれだけ恨んでいても、それを顔に出してはいけない。
「ああ…お前も、お前も会いたかったんだな。
すまない、すまない…俺が不甲斐ないばかりに」
お父様がわたしを抱きしめるなんて…
"とんでもなく不快だわ"
今までしてきた仕打ちをハグで終わらせようとしてるの…?
わたしたちは血が繋がっているから許されるとでも思ってるの?
"イライラする。でも抑えないと…。クッソ…胃がキリキリする…"
それでもやりきる。これがわたしなりの復讐だ。
「おかあさまに会いたい…大好きって伝えたいのに…!」
「ごめんな…俺が悪いんだ。お前のせいなんか
じゃない…!今までお前に当たって悪かった…許されるとも思っていない…もう1度…もう1度やり直そう…」
「そうです…ね。」
"まずい、視界が霞む…"
でも、まだ終わりじゃな………!
「…!ゴフッ…オェ…」
血?
どうして口から…
「ハンナ…?!大丈夫か…!」
…大丈夫?どの口が言ってるんだろうか。
あなたがわたしにしてきた仕打ちは、この先忘れることは2度とない。
「こうしゃく、さま。わた、しは。だいじょうぶ…ですから」
「何が大丈夫なんだ…!それに、どうしてお父様と呼ばない…!」
「だって…わたしが、こうしゃくさまの、ことを。おとうさまだなんて、ずうずうしい、でしょう?」
「何言って…。っ-!」
「いままで、おと…さま、だな、ていって…ごめ…。さい」
喋りにくい。でも、最後まで話してやる。
これが、復讐だから。
「やめろ…お父様で良い…お父様と、読んでくれ…!」
「わたし、には。でき、せん……。こう、しゃく…さま…」
最後まで言えた。
伝わったかどうかは分からないが、取り敢えず良しとしようじゃないか。
「ハンナ…?ハンナ…!死ぬな…ハンナ。私が悪かった…悪かったから…!おい…誰かいるか!ハンナの手当てをしろ…!」
何を言ってるのか聞こえない。耳鳴りがする…
目は、開いてるのだろうか…?微かだけど、侯爵が見えるから。
「侯爵様…!ガルシア公爵家の者が大勢来ています…!どうなされます…」
ードカンー
え?今何か蹴飛ばしたような音が…
「ハンナ嬢!」
"あ…来てくれたんだ。思ってたより、ずっと早かったな…"
見てくださりありがとうございました!
次話も見てくれると嬉しいです!




