公爵復活
あれから公爵の熱は少し低くなり、今は呼吸も苦しくなさそうだ。
この様子なら、明日までには治っているだろう。
ちなみに、今は朝方で、わたしは書類整理をしていた。
公爵の介抱など執事に任せれば良いと言う貴族がいるだろうが、公爵の側近であるセバスさんはもうかなり高齢だ。
そんな状態で流行り病にかかれば、命が危ない。そして、他の執事たちも公爵との交流があるかと聞かれれば、答えはNO。
理由は、公爵が誰とも関わろうとしなかったため。かろうじて関わっているのが、侍女長、執事長、料理長なのだから当たり前と言えば当たり前なのだが
「ん……令嬢…?」
「あ、起きましたか?おはようございます。もう少し寝ていても大丈夫ですが、起きますか?」
「起きる。それより、令嬢は何してる」
それより?
『公爵が病にかかっていることよりわたしが何してるかの方が大切なんですか?』
危ない、口に出してしまいそうだった。
「暇だったので書類の整理を。怪しいと思うなら風邪を治してから見てくださいね。今はダメです。病を治すことに専念してください」
「…分かった」
素直だ。もっと疑われるかと思ってた。
わたしとしてはこっちの方がありがたいけど。
「では朝食を置いておきますね。わたしは昨日と同じように廊下を掃除しておりますから。何かあればお呼びください」
「…ああ」
さて……
"非常にまずい"
公爵の風邪が移ったかもしれない。
"…良いわよ…やってやろうじゃない"
公爵が元気になるまでわたしの気力が持てばそれで良い。
後のことはもう誰かに任せるしかない。
でも移ったかもしれないこの状況で誰かに会うのはまずい…。
ここ周辺から動かないようにしよう。
ここにはあまり人を来させないように言ってあるから、出ても大丈夫なはずだ。
なんて、考えをしていたわたしがバカだったのだと掃除を始めてわずか30分も経たずに気づいた。
「お嬢様…」
"なんで来るのよ…"
大丈夫、ちゃんと笑顔を保ててる。
「リア。どうしたの?」
「先日の喧嘩で、お嬢様に対して失礼なことを言ってしまったことをお詫びしたいと言っているのですが、どういたしましょうか?」
なんだ、そんなことか。
"別にいらないな"
というか興味がない。そう言った形だけのお詫びというものに。
それに、あそこに行っては人が集まっているため、病気を移してしまう可能性がある。
だから、あそこに行くわけにはいかない。
「なに?、まだ気にしてたの?別になんとも思ってないわ。だからあなたたちも気にしないでってあの子たちに伝えておいてくれる?」
「分かりました。」
「じゃあ、わたしは公爵様のお部屋にいるわね」
ーパタンー
"えーーーー、いやいやいや、30分も経たずに戻ってきちゃった。"
でも仕方ない。リアに風邪を移す訳にはいかないから。
大人しく書類を見て、出来るものはやっておこう。
「ん?今日はもう終わったのか」
「あ、はい。今日は汚れている箇所が少なかったので。」
「そうか。」
"?公爵は何を聞きたかったの?"
もういいや、考えると頭が痛くなる。
その点でいえば、書類整理は頭を使わずとも
出来るから、とても楽だ。
会社員の頃に比べれば、こんな資料もう手が勝手に動いてくれる。
◇◇◇
それから、書類整理と公爵の様子を見ていると、すぐに寝る時間になっていた。
もちろん、わたしは今日も寝ません。
けど、多分明日は寝れる。公爵の顔色が良いし、熱も完全に下がっていた。
頭痛も引いている様子だったし、これなら明日にはもう大丈夫だろう。
「公爵様、そろそろ就寝しましょう」
「……眠れん…」
公爵、ちょっと子供っぽくなった?もしかして、弱みを見せてもいいというのは公爵からすると余計なことだっただろうか。
「では、何か話されますか?」
「令嬢の話をしてくれ。」
「……」
そんなリクエストは予想していなかった。というか出来なかった。
わたしの話など、何の面白味もない。わたしのお母様は亡くなり、お父様はお母様によく似た姉を大事にする。
これを話せば良いの?
いや、そんな訳がない。
でも、生きてきて楽しいと感じたことが、今まであっただろうか…?
いや、あった。
この話なら、多少は関心を持ってくれるかもしれない。
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