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推しの悪役令嬢なので全力で守ろうと思います!  作者: 小鳥遊
推しのために生きていました
12/89

大っ嫌い

「失礼致します。お嬢様、公爵様のお仕事の書類を持って来ましたが、どうするのですか?」


いいタイミングで、執事が書類を持ってきてくれた。


何もせずにいると考え事をしてしまう。それなら仕事をしている方が余程マシだ。


わたしの思考回路なんて、わたしでさえ見たくない。感じたくない。


「ありがとうございます。もしわたしが出来る資料の内容があるのなら、やっておこうと思ったんです。少しでも公爵様の負担を減らしたいですし。」


「……かしこまりました。それでは、失礼

致します。」


ちょっと怪しまれたかな。


でも流石に公爵をずっと見るのは暇だ。


わたしとしては、公爵の介抱の片手間に資料を片付けている方が、余計なことを考えなくて良いのでありがたい。


そう言えば、ハンナ様は何を幸せと感じるのだろうか。


そもそもの話、ハンナ様の魂が既に成仏していたとしたら?


わたしはどうして頑張ってるんだろう…


ダメだ。こんなこと考えるから仕事をしようと思ったのに…。


集中しよう。


◇◇◇


"朝…"


書類を片付けていると、いつのまにか朝になっていた。


幸いにも、まだ朝の早い時間だ。


お皿片付けるの忘れてたし、朝食も作りに行かないといけないのでちょうどいい時間だろう。


今は公爵の容態も安定しているし、少し離れていても大丈夫なはず。


「少しだけ離れますね。すぐに戻ります」


この時間帯はまだ誰も起きていない。


何せ朝の4時半だ。


おかゆのレシピを書いてつくってもらうのもありだと思ったが、朝はどうしてもわたしが作らないといけない。


おかゆは、ご飯を炊く時間が必要なため、最低1時間はかかってしまう。


朝早くから1時間も付き合わせるなんて申し訳ない。


それに、眠っている料理人達を起こすことになってしまう。


「早く作っておこう…」


また気を遣われてしまったらたまったもんじゃない。


レシピも書いておこう。


昼食と夕食は料理人さんたちにお願いしないと、掃除と資料の片付けが間に合わなくなる。


こんな時、前世の記憶を持っていて良かったと、つくづく思う。


何をしたら迷惑になるのか、何をしたら喜ばれるのか、どうやって信頼を得れば良いのか。


そういった知識は、会社で働いてる時に散々得てきた。


それもこれも厄介上司がいたからだ。


手を動かしながらそんなことを考える。


我ながら、ながら作業は得意のようだ。


考えながら、掃除をしながら、介抱をしながら、そういった類のものは以前から得意だった。


ながら作業をしないと間に合わないことが何かと多かったから。


前世では、お父さんのお酒を切らさないように冷蔵庫のお酒をチェックして、無くなりそうであれば、仕事の昼休みに買いに行く。


そうじゃないとお酒が無くなるから。


それでも、仕事が忙しくスーパーに向かう時間がない時は、どうしても冷蔵庫のお酒が切れてしまう。


すると、お父さんは決まって激怒し、『もっと働け』『金を稼げ』『いつ酒が無くなるのか分からなかったのか』『出来損ないが』『お前さえいなければ』『死ね』『消えろ』


八つ当たりにも程がある暴言とともに、暴力がわたしの身体に降り注いできた。


基本は服で隠れて見えないところを殴られるが、たまに顔や腕といった見えるところに痣が出来てしまう。


そんな時、傷自体は、絆創膏などで隠せたため、引っ掻かれて出来た傷だと言い訳をした。


周りに助けを求められる人なんておらず、

わたしはひたすら傷を隠して会社に出勤、

ひたすら笑顔で人と接する。


そんな偽りばかりの人間関係の中に、助けてと言える人などいなかった。


そして今世でも、それは変わらない。


周りに笑顔で接して、誰の機嫌も損ねないように、傷を全て隠して。


こうしてみんなの知るわたしが出来上がる。


辛い

苦しい

寂しい

憎い

悔しい

生きたくない

消えたい


そんな負の感情が、わたしの心にはないとみんなに思わせる。


明るく、何も知らない令嬢は、みんなを元気にさせるだろう。


同時に、純粋な人は信頼を得られやすい。


打算的すぎるわたしの行動が、どうしようもなく嫌になる。


わたしは、わたしが大っ嫌い。


「出来た…」


いつの間にか、朝日は上りかけだった。もう

こんな時間なのか。


急いで公爵部屋に向かおう。


もしかすると、起きているかもしれない。


料理人さんたちが来る前に急がないと。



見てくださってありがとうございました!次話も見てくれると嬉しいです!

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